30代後半で「働くお母さん」の仲間入り。何もかも「初めて」の息子と一緒にいろいろな発見をさせてもらっています。20年以上住んでいるシアトルも、親子になるとまだまだおもしろいことがたくさん隠れているものですね。シアトルのお気に入りを息子に紹介しながら、「ここに自分の子供と来ることになるとは!」と、しみじみする日々です。
前回のエッセイから、あっという間に約半年。5月のシアトルはあちらこちらに色とりどりの花が咲き、緑があふれ、最高の季節ですね。シアトルでは春になると住宅街でも野うさぎを見かけるようになりますが、先日、我が家の裏庭にうさぎの巣穴を見つけてしまいました。
母うさぎ、必死の嘆願!?
シアトルの抜けるような青空の下、野菜畑に野菜の苗を植えようと重い腰を上げた先週末のこと。家族で雑草を抜き、土を掘り返していると、なにやら「キューキュー」というような鳴き声がするではありませんか。
「掘り返した土の中に何かいた?」と思いましたが、どうやら鳴き声はお隣との塀の向こう側から聞こえてきます。塀の板の間から見えたのは大きなうさぎ。今から考えてみると、それは母うさぎで、自分の赤ちゃんが入っている巣穴のそばを掘り返している私たちを見て気が気じゃなかったのでしょうね。鳴き声は「やめて!」という必死の嘆願だったのかも。
そして翌朝。苗を植えたばかりの野菜畑をふと見ると、大きなうさぎがすわっています。苗を食べに来たのかと思いましたが、どうもそうではなく、じーっとすわっているだけ。私が庭に出ると、こちらを見て、それからサッと走っていなくなりますが、私が家に入ると、またそーっと野菜畑に戻ってきました。
もしや!?
草木を使ったカモフラージュは効果絶大
うさぎがすわっていた野菜畑の角に行ってみましたが、何も目を引くものはありません。そもそもうさぎの巣穴を見たことがないので、何をどう見ればいいのかさっぱりわかりません?
でもその次の瞬間、さーっと吹いてきた風で、角の土の上にあった、どこかから飛んできたような草木と綿毛のかたまりがペラーッとめくれあがりました。するとその下に、小さな穴のようなものが!
顔を近づけてみると、それはやはり穴。中で何かが少し動きました。もそもそと動いているのは、やわらかそうな茶色い毛に覆われた胴体や頭や足。目をしっかりつむった、耳もまだ短い、子うさぎです。それもどうやら2匹。
雑草が伸び放題になっていた畑を見た母うさぎはこれ幸いと思って子育ての場にしたのでしょうが、実にうまくカムフラージュしてあるものです。でも、こんなにうまくカバーされていたら、巣穴と知らずふんづけてしまいますよ。
もっと見つかりにくいところに作ればいいのにと思いながら、うさぎについて検索してみると、ペットや動物の情報サイト Vetstreet.com に「ウサギはさえぎるものがあまりないオープンスペースに巣穴を作るもの。自分たちの天敵にとって危険度が高いオープンスペースは、ウサギにとっては逆に安全」とありました。
また、「こうした小動物を巣穴で見つけたら、動物がケガをしているとか、親がまったく餌をあげていないといった問題が確認できなければ、そっとしておいてあげること。もしケガをしているようなら、州の野生動物管理局を通じてリハビリテーターを紹介してもらいましょう」とも。ワシントン州の情報はこちら。
息子に「子うさぎ発見!」と教えたら、「えぇー!見たい見たい見た~い!」と大興奮。そーっと見るだけと約束して野菜畑に一緒に行き、枯れ草のカバーの間から小さな子うさぎを見た息子は一瞬でメロメロになりました。
「子うさぎさん、かわい~い。ちいさ~い。見て~、動いてるよ~」
とヒソヒソ声で言い、
「お外に出てきたら遊びたいかな。この棒で遊ぶかな。おもちゃを置いててあげたい~」
と、いそいそと棒や石を巣のまわりに並べ始めました。
子うさぎが巣穴にいるのは3週間未満だそう。母子が庭で遊ぶのを見られるのはもうすぐかもしれません。
翌朝、また巣穴のそばにやってきてじーっとすわっている母うさぎをベッドルームの窓から見た息子は、またベッドに入って掛け布団にくるまりました。
「僕は子うさぎで、マミーはお母さんうさぎだよ。だからそばに来てすわって~」
最近はいろいろな場面で「もうベビーじゃない」と宣言する姿に頼もしさを感じますが、やっぱりまだまだ5歳。こうして甘えてくれる時を大事にしたいです。
掲載:2016年5月