30代後半で「働くお母さん」の仲間入り。何もかも「初めて」の息子と一緒にいろいろな発見をさせてもらっています。20年以上住んでいるシアトルも、親子になるとまだまだおもしろいことがたくさん隠れているものですね。シアトルのお気に入りを息子に紹介しながら、「ここに自分の子供と来ることになるとは!」と、しみじみする日々です。
「グランマが5月に日本から来る」
と決まったのが、数ヶ月前。
と言っても、4歳半では日々の時間の感覚がかなりアバウトなので、「今日5月?」「もう5月?」と、何度も聞いてきます。「まだまだ。今日は○月○日だよ」「来月だね」「あと○回寝たらだね」と辛抱強く答えても、やっぱりまだそんな先の時間を理解するのは難しいですよね。しまいには、
「どうしてまだ5月にならないのっ!」
と怒り出す始末。
「そうだよねえ、早く5月になってほしいよねえ。マミーも早く5月になって、グランマに来てほしいよ」
と言うと、
「あ、マミーも同じこと考えてるんだね」
と、なんだか安心したようでした。
海外旅行にもう積極的ではない母は昨年8月に来た時に「もうこれが最後かも」と言っていましたが、やはり孫にせがまれ、さらに私たちが「今年は日本に行かない」と決めたので、それならと、わざわざ来てくれることになりました。それからは、「グランマが来たら」という前提で、「何を見せてあげたいか」「何を食べさせてあげたいか」「どうしたらグランマがハッピーになるか」を息子と考えてみたり、「グランマが喜ぶように、キレイにお片づけしようよ」と、片付けモードに持っていったり・・・。これだといそいそと片づけるので笑えます。
そして、5月。母が到着する日となりました。
母の滞在中はプリスクールを休むことにしましたが、到着する日にちょうど「母の日の昼食会」があるので、「空港からプリスクールに寄ってお昼ご飯を食べる会に参加するよ」と息子に説明すると、「グランマを空港でお迎えしたら、そのまま家に帰って、グランマと遊びたいの。学校に行かないよ」。でも、「クラスには行かないけど、グランマも学校を見てみたいっていうから、母の日のお昼ご飯を食べる会に連れて行ってあげようね。それで一緒に食べた後、家に帰ろうね」と言うと、納得したようでした。
朝ごはんを食べた後、「早く行かないと、グランマが来ちゃう!」と、勝手に焦る息子の叫びをスルーしながら、空港に余裕で到着。そして、待つこと15分。母がエスカレーターを上がってきたのが見えた瞬間、息子は「グランマ!」と叫んでタタタッと駆け寄り、そっとハグしました。母はその瞬間は疲れも吹き飛んだかのように、この上なく幸せそうでした。
グランマと手をつないで「車に連れて行ってあげるよ」「今から○○ちゃんの学校に行くんだよ」と、しゃべりっぱなしの息子でしたが、プリスクールに到着すると、なぜか無言でお遊戯をせず、私の横にぴったり張りつき、最後に「お母さんをハグ」というところだけ参加。昼食会が終わり、「○○ちゃんの歌とか踊りも見たかったなあ」と3人で車に乗り込みながら言うと、「僕ね、置いていかれるかと思って、ちょっと心配したよ~。だからマミーから離れたくなかったの。でも、一緒に家に帰れるね」と、満ち足りた笑顔を見せてくれました。小さな胸の中で「置いていかれる自分」を想像していたなんて、なんとまあ。
それから約2週間、お友達と遊びたいとも言わず、グランマにべったり。ある時は、グランマと2人でソファにすわって、「グランマが来てくれて、うれしいよ。うれしくて涙が出てきた」と言って、本当に涙を流していました。
でも、楽しい時はあっという間に過ぎてしまうのが常。いよいよお別れの日がやってきました。
空港が近づくにつれ無口になっていった息子は、航空会社のカウンターでグランマがチェックインを済ませるとさらに実感がわいてきたらしく、「おなかすいた」と困らせる作戦に。そして、セキュリティのチェックポイントでお別れする瞬間、ぽろぽろと涙を流し始め、「グランマにもっといてほしい~!」「グランマに帰ってほしくない~!」と言いながら、泣き始めました。3歳半だった昨年から成長して、グランマにはそう簡単に会えないというのがわかっているのですね。こうなるともう、私も母も涙なしにはお別れできませんでした。
グランマの姿が見えなくなるまで手を振った後、息子は空港のベンチにすわって泣き、駐車場では声を張り上げて泣き、車の中に入ってもぐすんぐすんと泣き続けました。「じゃあ楽しいことを考えようか。グランマとして一番楽しかったことは何?」と聞いてみたら、大失敗。余計に悲しくなったらしく、「今、悲しすぎて、そんなこと考えられない」と、きっぱり言って、はらはらと涙を流しました。仕方がないので泣くにまかせて運転していると泣きつかれて寝てしまいましたが、帰宅して目が覚めるとまたさめざめと泣き、わざわざ新幹線の本を読んで「こんなの見たら日本に行きたくなっちゃう」。そうそう、留学生だった時にホームシックなのにわざわざもっとホームシックになるようなことをするとか、私も覚えがあります・・・。
でも、「グランマがいないから悲しいの。だからテレビ見たい」と言い出したのには、「おっ」と思いましたね。3歳の時はなかった知恵です。「今回は特別」と、お気に入りの『Cat in the Hat』のアニメ版をつけると、しばらくして、「おもしろいから、だんだん気分が明るくなってきた」。
・・・それは良かった。
その後数日は「グランマがいないから悲しいの。だから~」と、無謀な要求を突きつけてきましたが、それが今は「日本に行きたい。温泉に入りたいの」と、変な方向に進化中。
温泉、いいよね~。
さて、どうなることやら。
掲載:2015年5月