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第1回 育児日記

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30代後半で「働くお母さん」の仲間入り。何もかも「初めて」の息子と一緒にいろいろな発見をさせてもらっています。20年以上住んでいるシアトルも、親子になるとまだまだおもしろいことがたくさん隠れているものですね。シアトルのお気に入りを息子に紹介しながら、「ここに自分の子供と来ることになるとは!」と、しみじみする日々です。

シアトル子育て日和

誕生から数分後の息子。8ポンド3オンス(3,726グラム)だった。

予定日を14日過ぎた朝の7時に病院に到着。「ウギャーッ!」という産声を聞いたのは、約16時間半後の午後11時35分でした。

いわゆる「オギャーッ」なんてもんじゃない。太くて立派な手足をピンと伸ばし、「ウギャーッ!ウギャーッ!ウギャーッ!」と、必死の形相で、あらん限りの力を振り絞って泣いていました。

ようやく出たか!

スタンバイしていた看護師さんたちに計測・検査され、病院支給の帽子とスワドルに包まれた息子が私と夫にそうっと渡されるまではものの数分だったでしょうか。自分の指で触るにはあまりにも清らかすぎる感じがして、なぜか手の甲でおそるおそる頬に触れてみました。空気に触れてからまだ数分しかたっていない肌を触るなんて、これが初めて。こんな手触りのものが、他にあるかな。おっかなびっくり抱っこ。小さい。軽い。ふにゃふにゃ。温かい。そして、いい匂い。

こうして、ちゃんと人間になって出てくるんだなあ。

いつの間にか赤ちゃんは泣き止み、もぞもぞと頭を動かして、まだほとんど開いていない目を私の方に向けています。まだ目は見えてないはずなのに、こちらの視線を感じるのでしょうか。意外にふさふさした髪などを触ったり、顔をじっと見ているうちに、これが自分がおなかの中で育ててきた人間なんだという実感が少しずつわいてきました。そして、自分が「親」という立場になり、今この瞬間にもう「3人家族」なのだという現実と、人の命を預かる責任の重みも。

30代後半で親になった私たち。11年間の結婚生活もあっという間でしたが、妊娠・出産は、いろいろあったにも関わらず、今から考えると本当にあっという間。写真と文章で細かく記録するのがもともと好きな人なら、妊娠・出産はありとあらゆることを記録する絶好のチャンスだと思いますが、私もその一人。胎児の成長と自分の体の変化に始まり、不安も期待も何もかもひっくるめて細かく記録し続けました。検査の様子や数値、出産準備教室、マタニティ・ウェアや子供服などの買い物、クリブやスイングなどの組み立て、マタニティ・フォト撮影、いただいたギフトなど、これからもしまた子供ができたとしても、今この瞬間は「この子にとっては、もう二度とないもの。」 妊娠7ヶ月で大腸菌感染が原因の高熱などで緊急入院したり、謎の激しい陣痛で病院に飛んで行ったりと、二度と体験したくないこともありましたが、すべて子供の命につながる、大事な記録です。

シアトル子育て日和

異常気象で大雪の時に出産となったので、路上は雪。

そして、出産。「この病院では予定日から14日目が妊娠の最終日。自然にお産が始まらなければ、陣痛促進剤で陣痛を起こして出産に入りますよ」というエバーグリーン病院の条件にまさか自分が当てはまることになろうとは思ってもいませんでしたが、わが息子はまさに予定日から14日目に、「陣痛促進剤→陣痛スタート→約5時間で子宮口7センチ→人工破水→エピドゥラル(脊髄注射による麻酔)→頭が骨盤に入らず、心拍数が増加→陣痛促進剤の点滴開始から16時間半後に帝王切開」という、まったくもって私が想像していたものと違うルートをたどってやって来ました。そんなわけで、病院に行くところから陣痛促進剤を打たれるまでの写真は私、そして陣痛が始まってからはさすがに自分では撮影できなかったので夫が担当し、そして退院までは交代で担当。退院した後、写真を見ながら覚えている限りの情報をタイプしました。

シアトル子育て日和

点滴で入れている陣痛促進剤などの分量や、陣痛の大きさを見ることができる機械。これがついたキャスターを持って、陣痛がひどくなるまで廊下を散歩しました。モニターがついているので、看護師さんは自分のステーションで様子をチェックしてくれます。

まだコンピュータが一般家庭に普及していなかった頃、両親は私と弟の成長を分厚いノートに手書きの文章と母のイラストという、とても昭和なスタイルで記録してくれていました。あらゆるものの写真と説明文が貼られたアルバムもあります。私も弟も幼い頃からその育児日記とアルバムをたびたび見ていましたが、自分に深い愛情と強い興味を持って細かく観察している人の記録は、子供心にも面白いもの。きっと私も息子に対してそういうふうになるだろうなと妊娠中から考えていましたが、その予想は的中したようです。

点滴で入れている陣痛促進剤などの分量や、陣痛の大きさを見ることができる機械。これがついたキャスターを持って、陣痛がひどくなるまで廊下を散歩しました。モニターがついているので、看護師さんは自分のステーションで様子をチェックしてくれます。

とにかく出産時から見事に物忘れが激しくなり、「昨日は何したっけ?」という状態が続いているので、私の育児日記は備忘録とも言えます。今はまだそれを日々更新するだけですが、息子が読んでくれたり、自分で読んで懐かしく思ったりする日が来るのが今から楽しみです。

(2011年8月)

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