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スピーチ・セラピー 第5回「言語発達を促す3つのヒント」

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前回のコラムでは、バイリンガル児の言語発達についてお話ししました。今回から2回にわたり、言語発達を促す方法についてご紹介していきたいと思います。今回は、言語発達を促すためのヒントをいくつかご紹介したいと思います。

もくじ

1. 発達の最近接領域(ZPD:zone of proximal development)

発達の最近接領域(ZPD:zone of proximal development)」とは、ロシアの心理学者ヴィゴツキーが提案した概念で、子どもが自分ひとりでできることと、大人に少し手助けしてもらえればできることとの差の領域を意味しています。子どもの言葉の発達を促す上で、この概念はとても大切です。子どもの発達段階より簡単すぎると発達を促すことにつながりにくいですし、反対に難しすぎると子どもはイヤになりチャレンジしなくなってしまいます。そのため、この「発達の最近接領域」、すなわち、子どもの発達段階よりもほんの少しだけ上の課題を目指すことが、子どもの発達を促すことにつながります。

具体的に考えてみましょう。たとえば、お子さんが何かの食べ物を欲しがっている場面を想像してみてください。お子さんは自分の要求をどのように伝えているでしょうか。指差しをしているでしょうか。指差しをしながら「あっあっ」と声をだしているでしょうか。あるいは、「バナナ」「ジュース」など単語で表現しているでしょうか。上記の概念をもとに考えると、指差しがまだできないお子さんには「どれが欲しいの?バナナ?」と言葉をかけてあげながら、指差しを促してあげるとよいでしょう。指差しはできるが身振りや言葉で伝えることはまだできていないお子さんには「どれが欲しいの?バナナ?りんご?」と身振りや言葉の表現を促してあげるとよいでしょう。もし、言葉は出ているものの2語文や3語文の表現はできないお子さんには「バナナが欲しいの?『バナナちょうだい』」と言葉の見本を見せてあげることで、文表現を促してあげるとよいということになります。この考え方は、生活のあらゆる場面に適用できると思います。

2. セルフトーク(Self Talk)とパラレルトーク(Parallel Talk)

初めてお会いする親御さんに「2人分、お話してください」とアドバイスすることがよくあります。「2人分話す」とは、「ママ、今、おちゃわんを洗ってるからね」「このお花、きれいね、ママ、このお花、だいすき」などご自身の行動や気持ちを言葉で表現する 『セルフトーク(Self Talk)』 に加え、「(お子さんがブロックを積み重ねようとしている場面で)ブロック積めるかなぁ。あ、できた!」「(大きな犬が歩いているのを見たら)大きな犬だね。ちょっと怖いね」など、お子さんがその場でしていることやその時のお子さんの気持ちを代弁してあげる 『パラレルトーク(Parallel Talk)』 を意味しています。そうすることで、その場にふさわしい正しい言語表現の見本を示してあげることができます。

3.”I do, We do, You do.”

アメリカでインターンシップをしていた際、スーパーバイザーが教えてくれたフレーズのひとつが上記の “I do, We do, You do.” です。まず、見本を見せ(”I do”)、次に手助けをしてあげながら一緒に行い(”We do”)、最後に子どもが自分でしてみる(”You do”)、というアプローチです。自分でできるようになるには、まず、大人が正しい見本を示してあげ、子どもに寄り添って一緒に練習していくことが大切だということですね。

今回ご紹介した3つのヒントは、生活の様々な場面で適用できると思います。次回は、これらのヒントを使いながら家庭でできる言語発達を促すアクティビティについて具体的にいくつかご紹介したいと思います。

情報提供:言語聴覚士 鈴木 美佐子さん

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