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スピーチ・セラピー 第9回「読書と言語発達」

私達は、読書を通して新しい知識を得たり、物事について思考を巡らすことができます。今回はこの読書の入り口にある絵本について考えてみたいと思います。

多くの子どもがまだおしゃべりを始める前、歩き始める前の0歳時の頃に出会う絵本。絵本には言葉の発達を促す要素があふれています。ここでは 『おおきなかぶ』 を例に考えていきましょう。

語彙

絵本の中にはさまざまな単語が登場します。多くの絵本には繰り返し出てくる単語があります。『おおきなかぶ』 では、「かぶ」「おじいさん」「おばあさん」「まご」「いぬ」「ねこ」「ねずみ」「おおきい」「ひっぱる」「ぬける」などの単語が繰り返し出てきます。絵本に描かれている絵を見ながら、これらの語彙をお話の文脈の中で学ぶことができます。

構文

語彙同様、多くの絵本では、繰り返し使われる文型があります。『おおきなかぶ』 の中では、「A が B をひっぱる」という表現が繰り返し登場します。子どもたちは、絵本を繰り返し読む中で、登場人物たちが「ひっぱっている」絵を見ながら、繰り返し出てくる文型を自然に学んでいくのです。

物語の理解

登場人物の様子や、場面設定、物語の中の出来事、結末といった物語を構成している要素を把握することで、物語をより深く理解することができます。また、登場人物の気持ちや行動について考えることで、日常生活で他者の気持ちを理解する力を育ててあげる事ができます。絵本を読みながら「どうして XX をよんできたのかなぁ」「かぶがなかなかぬけないとき、どんな気持ちだったかなぁ?」「かぶがやっとぬけたとき、どんな気持ちだったかなぁ?」など声をかけてあげることで、子どもたちの理解を助けてあげることができます。

他者・アイデンティティの理解

絵本は、子どもたちが登場人物と自分の相違点に気づくきっかけを与えてくれます。『おおきなかぶ』 の場合、登場人物たちが着ている服や住んでいる場所が自分のそれとは異なることに気づくでしょう。また、犬を飼っているお子さんだったら、「ぼくの家にも犬がいるね」と共通点を見出したり、家庭菜園をしている家庭のお子さんだったら、「うちのお庭にもかぶができているね。でも、うちのはこんなに大きくないね」という発見をするかもしれません。そうした相違に気づく過程で、生活様式などの文化の多様性、アイデンティティを理解していくことにつながっていきます。

このように、言語発達とは切り離せない存在である絵本ですが、冒頭でも書いたように、絵本は、それから長く続く “読書” という知的活動の入り口にあるものです。だからこそ、子どもたちにとって絵本は、大人から押し付けられるものではなく、子ども本人が心から楽しめるものであるべきだと思います。

次回は、絵本を使ったさまざまなアクティビティについて具体的にご紹介したいと思います。

情報提供:言語聴覚士 鈴木 美佐子さん

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