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スピーチ・セラピー 第1回「スピーチ・セラピーとは」

「スピーチセラピー」と聞くと、みなさんはどのような場面を想像するでしょうか?絵カードを見ながらその名称を言ったり発音の練習をしたりといった話し言葉や発音の訓練場面をイメージされる方が多いのではないでしょうか。もちろん、スピーチセラピーにはそういった話し言葉や発音の訓練も含まれますが、実際はもっと幅広い分野を対象にしてさまざまな年齢層に有効な内容となっています。第1回の今回は、スピーチセラピーについておおまかにお話したいと思います。

スピーチセラピーの分野

スピーチセラピーの分野を大きく分けると、音声(speech)、言語(language)、摂食嚥下(swallowing)の3分野になります。それぞれの分野をもう少し細かく見ていきましょう。

音声の分野(speech)

まず、音声(speech)に関する分野には、構音、吃音、声、発語失行などの症状が含まれます。構音とは、「バナナ」を「ナナ」といったり、「さかな」を「たかな」と言うなどといった音の誤りを指します。日本人が苦手な「R」と「L」の使い分けの練習などもこれに含まれます。吃音とは、発話の中で音や単語を繰り返してしまう状態を言います。声の障害は、声帯にポリープや傷などができてうまく機能しないためにガラガラ声になる状態などを言いますが、大きな声を出しすぎたり風邪を引いたときにも一時的にこういった症状が出ることがあります。発語失行とは、口腔器官の麻痺などがないにも関わらず発語のプログラミングがうまくいかないために正確に発語できない状態を言います。

言語の分野(language)

次に、言語(language)の分野ですが、言葉の理解や表現に発達の遅れがある場合や、脳卒中の後遺症として起こる失語症などの症状がこの分野に含まれます。また、家族と話す時と学校で先生と話をする時では話し方を変えるなど、場面に応じて言語表現を適切に使い分けるといったようなソーシャルコミュニケーション能力もこの分野に含まれます。

摂食嚥下(swallowing)

最後になりますが、摂食嚥下(swallowing)とは、食べ物を口に入れ、噛み、飲み込むという一連の動作を意味します。赤ちゃんが母乳やミルクに始まり固形物を食べられるようになる過程はもちろん、脳卒中や加齢によって食べ物を噛み砕いたり飲み込むことが難しくなる症状もこの分野に含まれます。安全に楽しく「食べる」ことをお手伝いするのも、私達、スピーチ・ランゲージ・パソロジスト(Speech-Language Pathologist)の仕事のひとつなのです。

このように見ていくと、スピーチセラピーが単に話し言葉(speech)だけではなく、人間のコミュニケーション・生活全般に関わっていることがおわかりいただけると思います。アメリカでは、学校でスピーチセラピーを受けることができるからか、あるいはしっかりと自分を表現することが求められる文化的背景からか、スピーチセラピーはとても身近な存在です。

「私の娘も小学生の頃、R がうまく言えなくてスピーチセラピーを受けていたのよ。おかげで上手に発音できるようになったわ」「若い頃、吃音があってスピーチセラピーを受けていたんだよ」などといったことを日常会話の中でもよく耳にします。問題を先送りにしたり隠そうとするよりも、問題解決に向けて積極的に動こうとするそうした姿勢は、ぜひ見習いたいものですね。

次回は、今回簡単にご説明させていただいた3分野のうちの一つである音声について詳しくお話したいと思います。

情報提供:言語聴覚士 鈴木美佐子さん

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