みなさんは、二つの言語を使ってさまざまな教科を学ぶ「イマージョン教育」について、耳にしたことはありますか?
イマージョン教育の魅力は、異なる言語を使って学ぶことで、生きた言語を身につけられる上、日本語であれば日本の行事や風習なども日常の学校生活にも組み込まれていることなどが挙げられます。
このシリーズでは、そんなイマージョン教育を提供しているシアトルのマクドナルド小学校の保護者の方々に、どのようにイマージョン教育を受け入れ、子どもたちがどのような変化を感じているのか、その一端をご紹介していただきます。
【回答してくださった保護者の方々】
Mさん:妻が日本人、夫がアメリカ人で日本語は話さない。家庭言語は英語。
Yさん:妻が日本人、夫がアメリカ人で日本語は話さない。家庭言語は英語。
Rさん:妻が日本人、夫がアメリカと日本のハーフ。家庭言語は基本的に日本語。
Tさん:夫婦とも日本人。家庭言語は日本語。
Q:イマージョン教育とはどういうものですか?
マクドナルド小学校では、理科・数学は日本語で、読み書きとソーシャルスタディは英語で、というように、一日の50%を英語、残りの50%日本語で学んでいます。
学校の目標の一つである “Global Perspective & Cultural Competency” を軸に、言語だけでなく、あらゆる面において異文化交流ができるようにカリキュラムが作成されています。
Q:イマージョン教育を選んだ理由や目的を教えてください。
Rさん:自分の学区以外の公立小学校を考えた時に、マクドナルドはヘリテージ枠があり、自分の子供(家庭言語が日本語)が確率的に入りやすいと考えたからです。
Yさん:日本語と英語のイマージョン教育なら、一日の半分は日本語に触れることができます。日本人だから日本語をやらせるというより、人種や親とは関係なく日本語を学びたい生徒と一緒に日本語に触れる環境がいいと思いました。日系だからとか、親が日本人だから日本語をやらなくてはいけないという感覚で子供が日本語を学ぶのとは違うということですね。
Mさん:アメリカにいる以上、英語は絶対に身につけられると思いました。なので、日本語や日本文化(風習や休日やお弁当など)が日常的な教育の一環として加えられているのはうれしいです。お正月、お盆、ソーラン節など、日本のイベントも一緒に祝えるのがいいです。
Tさん:住所をベースに割り当てられた小学校に通った長男は英語の方が強かったので、次男は住所をベースに割り当てられたキンダーガーテンを終えた後で、マクドナルドに入学させました。一日の半分を日本語で過ごせるのがいいと思いました。
Q:小学校卒業時点で、生徒にはどんなことが期待されていますか。
マクドナルド小学校の場合、日本を日常に持ち込む(おにぎりなどの日本のお弁当など)、日本的なものが日常にあることが普通である、当たり前になっている感覚を身に着けていることです。
また、自宅では日本語を話さない家庭でも、5年生の時点で簡単な会話ができるくらいの日本語力が身につきます。
Q :マクドナルド小学校の先生には、どのような方がいらっしゃいますか。
日本で生まれ育ち、日本で基礎教育を受け、アメリカの大学で教育課程を修了した方、大学院の修士号を取得している方、特別教育の勉強をされた方などがいらっしゃいます。教員歴は最低でも13年、最高で20年の経験を持っているベテランンの先生方がいますね。また、日本人の先生は、Instructional AssistantやELLのサポートに入ってる先生を含め、7人います。
Q:生徒の言語力は、どのような感じですか。
母国語を日本語とする生徒をヘリテージとして20%入れることが決まっています。その他にも通学圏内から通学している日本語を母国語とする生徒、ヘリテージではなく、兄姉がすでに通学していることで入学する生徒もいます。そのため、クラスとしておおよそ30%くらいが日本語を理解できる、もしくは家庭言語として使っている生徒です。残りは、両親とも日本語を話さないものの、日本語に触れるためにイマージョンを選んで通っている生徒です。
Q:日本の文化をどのように体験していますか。
一年を通して、正月、節分、どもの日、お盆などを、学校のイベントとして開催し、学校全体で体験する機会があります。
また、PTA主催のイベントとして、盆踊りを企画し、また、フィールド・デーでは玉入れや二人三脚など日本の運動会の競技を取り入れています。
学年によって、お月見イベントを開催してお団子を食べたり、食育の一環としておにぎりを作ったり、子どもの日の兜作りをしたり、発表会にソーラン節を披露したりしています。
Q:両親が日本語ネイティブの場合(または日本語が流暢な場合)、片方のみが日本語ネイティブの場合など、それぞれイマージョンを選んだ理由と実際体験してみてどうでしょうか。
Mさん:子どもだけでなく、親のつながりができるのがよいと思います。学校として日本語に対する理解や共感で横のつながりができやすいです。
Yさん:学校全体で子どもの教育に関心の高い家庭が多い気がします。自分の子どもの学年を超えた親同士のつながりができやすく、コミュニティ感が強いです。
Rさん:英語の先生たちも、異文化や英語ネイティブでない家庭に対する理解があり、英語がうまく話せない親とのコミュニケーションにも積極的に歩み寄ってくれるのがうれしいです。
Rさん「自分の子供が、自分と似た文化的背景を持つ子どもが多いことで、安心感や居心地の良さを感じていると思います。また、周りの異文化に対する理解力が高いので、「日本的な考えや意識を持っていてもいいんだ」と、潜在的に感じているとも思います。