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第1回 複雑怪奇!アメリカの医療保険

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米国で安心して生活するために、なくてはならない医療保険。公的保険により誰もが平等に医療を受けられる日本から来ると、米国はまさに異次元。複数の公的および多様な民間の医療保険で、それぞれが特定の被保険者グループをカバーする米国の仕組みは、とても複雑です。

もくじ

米国の公的医療保険:メディケアとメディケイド

例えば、米国の公的医療保険の代表には、高齢者用のメディケア(Medicare)、低所得者向けのメディケイド(Medicaid)があります。メディケアは連邦政府による保険で、主に65歳以上の米国市民と合法的に5年以上の在住歴がある永住権保持者が加入できます。

一方、メディケイドは各州の運営なので、州ごとに対象者や内容が異なります。例えば、ワシントン州やオレゴン州では、移民ステータスに関係なくメディケイドに加入申請ができますが、テキサス州などいくつかの州では、合法移民でもメディケイドへの加入は不可で、加入条件の所得制限も他州より厳しいです。

現役世代:民間の医療保険

さて、大多数の現役世代は、雇用主が提供する民間の団体医療保険に加入するか、個人で民間の医療保険に加入することになります。

まず、日本の健康保険との大きな違いは、いつでも、どの医療機関でも利用できるわけではないことです。

主な保険の種類に、HMOとPPOがあります。一般的にHMOは保険料や自己負担が低く設定されているかわりに、プライマリケア(かかりつけ)医を決め、専門医療が必要な場合はプライマリケア医の紹介を受けて、規定のネットワーク内(In Network)の専門医や医療機関にかかる仕組みです。

PPOではプライマリケア医を決める必要はなく、加入者がネットワーク内の専門医や医療機関を自由に選んでかかることができます。HMOよりネットワークが広く、PPOの保険しか受け付けていない医師や医療機関もあります。雇用主から保険が提供される場合も大抵はHMOかPPOを選べるので、違いを理解しておきましょう。

桁違いの自己負担

米国の医療費は非常に高額で、医療保険に加入していないと診療を受けてもらえないことも。ただし、保険に加入していても、いざ医療を使うと、日本とは桁違いの自己負担になることが多いです。HMOでもPPOでも、さまざまな自己負担が発生するのです。

ディダクティブル(Deductible)

まずは免責額であるディダクティブル(Deductible)。保険プランごとに設定額は違いますが、例えば免責が1500ドルの場合は、自費で1500ドルを払った時点から保険適用が始まるのです。保険のカバー割合も、80%、50%など保険プランにより異なり、残る割合はコインシュランス(Coinsurance)と呼ばれる自己負担(保険が80%なら自己負担は20%)です。

コーペイ(Copay)

さらに受診の都度、医療機関に支払うコーペイ(Copay)があり、プライマリケア医は30ドル、専門医は60ドルなど、保険プランごとに決まっています。延々と自己負担が続き心配になりますが、各保険には年間自己負担額限度額(Out of pocket max)が設定されています。自己負担がこの額に達したら、その後は保険が100%カバーする仕組みです。

なぜこのように複雑なのか

さて、米国の医療保険がなぜこのように複雑かといえば、日本と違い、全員が公的保険に入る皆保険制度を採用していないことがあります。民間企業は利益なしには運営できません。医療費の上昇を背景に、かつて保険会社は利益確保のため、保険料の値上げや適用範囲の制限、既往歴のある人の加入を拒否したことも。

2014年から本格実施された医療保険改革法(ACA:Affordable Care Act)で、より多くの人が一定基準を満たす医療保険に加入できるよう環境整備が図られました。今では個人でも、州や連邦の「マーケットプレイス」でACA適合の保険を申し込むと、所得に応じて保険料に補助金が適用されます。

保険プランは本当にさまざまです。健康で突発的なこと以外は医療が不要という人なら、免責額が高くても保険料の安いプランがお得かもしれませんし、逆に高額医療の利用を想定している人は、自己負担額限度額に注目すべきかもしれません。米国では自分の医療ニーズや経済状況に応じて、主体的に医療保険を選ぶ必要があるのです。

なお、ここでの説明はごく一般的なものですので、ご自分の医療保険に関しては、雇用先の保険担当者、保険会社、医療保険ブローカーなどの専門家にご相談下さい。

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