日本で医療機関といえば、まずは病院を思い浮かべますよね。米国にも都市部を中心に総合病院はありますが、分業が徹底しているので、日常的には専門や機能に応じたさまざまな医療機関を組み合わせて利用することも多いです。今回は医療機関のいろいろを紹介します。
プライマリケアのクリニック
米国でよくお世話になるのは、予防を含む日々の健康管理を担当するプライマリケア(かかりつけ医)です。全世代に対応するファミリー・ドクター(家庭医)をはじめ、小児科医(pediatrician)、18歳以上を対象とする内科医(internist)に加え、女性の場合は産婦人科医(OB/GYN:obstetrician-gynecologist 「オービージーワイエヌ」)もプライマリケアの役割を果たす場合があります。
一般的な病気や怪我を診てもらうだけでなく、健康な時から年に一度はプライマリケアで健康診断を受けましょう。適切にワクチン接種や検査を受けているか、体重、血糖、血圧、コレステロールなどを継続的にチェックしてくれます。さらに詳しい検査や専門医の診察が必要な場合には、プライマリケア医が紹介(referral)受診の手配をします。
前回の医療保険の説明でも触れましたが、特にHMO(health maintenance organization)プランではプライマリケア医が紹介した検査、専門医受診でないと、保険適用外となるので要注意です。もちろんプライマリケア医を選ぶ際にも、自分の医療保険が使えるかどうか事前の確認が大切です。プライマリケア医は病院に限らず、個人あるいは数人の医師グループでクリニックを運営していることも多いようです。
専門医(Specialist)のクリニック
プライマリケアと同じく、さまざまな専門医が病院内や自分のクリニックで診療しています。PPO(preferred provider organization)の医療保険なら、プライマリケア医の紹介なしに、患者が直接、保険ネットワーク内の専門医にかかることもできます。
とはいえ、専門治療は費用が高い傾向にあり、専門も細かく分かれているので、まずはプライマリケア医に専門医の治療が必要か、どの専門医が適しているかを相談する方が無難です。
検査施設もいろいろ
米国には自治体による集団検診がないので、女性のマンモグラフィー(乳房X線検査)や骨密度の検査、CTスキャンやMRIなどの画像検査、大腸内視鏡検査などが必要な場合も、医師から紹介を受けて、それぞれの検査施設に行きます。大きな病院内の施設かもしれませんし、単独の検査施設の場合もあります。ここでも自分の保険が使える施設か要確認です。
結果はその検査を指示した医師に伝えられ、診断に使われますが、同時に検査結果は検査を受けた本人の所有物として、本人にも伝えられます。この点は日本との大きな違いです。
守備範囲の広い薬局
米国では、ほとんどの予防接種に医療保険が適用され、自己負担なしで受けられます。
また、日本と違い、米国では薬剤師が子供に必要な定期接種、HPV、インフルエンザ、COVID-19、帯状疱疹、肺炎球菌などさまざまな予防接種をすることができます。薬局は街中やスーパーマーケット内にもあり、週末も空いているので便利です。
アージェント・ケアとエマージェンシー・ルーム
夜間や休日などプライマリケア休診時に急病や怪我が起きたらどうするか。そんな時にお役立ちなのがアージェント・ケア(Urgent Care)やエマージェンシー・ルーム(ER)です。子供の急な発熱、インフルエンザ、捻挫など、アージェント・ケアでは予約なしで、夜間や週末も医師に診てもらえます。
日本では通常の診療時間以外に行く施設を救急医療施設(ER)と呼ぶようですが、米国のERは心筋梗塞や脳梗塞の疑いなど、命にかかわりかねない症状や大きな怪我、救急車が必要なほど深刻な場合に利用します。
ERの多くは総合病院にありますが、街中に救急車を受け入れる単独のER施設がある場合も。なお、ERでは緊急度の高い患者から診察するので、待ち時間が非常に長くなることもあります。
一般的に、プライマリケアよりアージェント・ケア、それ以上にERの方が医療費は高くなります。米国では救急車も有料なので、普段からの健康管理はもちろん、適切な医療サービスを利用することが大切ですね。
なお、どの医療機関、医療サービスの利用が保険適用になるかは、加入している医療保険プランによります。詳しくは加入している医療保険会社にご確認下さい。
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