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アメリカのお葬式の特徴とマナー

アメリカに長く住んでいると、お葬式に呼ばれることもあるでしょう。多様な宗教、習慣、文化を持つ人々が共存する国では、お葬式もそれぞれの信念や信仰、文化に則った形で行われますが、ここでは伝統的なアメリカのお葬式のルールやマナー、最近の特徴などをご紹介します。

1. wake/visitation/viewing: 通夜

wake(ウェイク)も、visitation(ビジテーション)も、viewing(ビューイング)も、日本の通夜(つや)と似ています。

wake(ウェイク)は、通常、葬儀の数日前から前日、または当日に行われる儀式で、故人の遺族や親族、親しかった友人など、ゆかりの深い人たちが集まり、故人を偲び、冥福を祈ります。伝統的にカトリックの習慣であり、宗教行事として神父が祈りの言葉(ロザリオ)を述べる場合がありますが、現代では「遺族と弔問客が故人との思い出を語り合い、喪に服す」という意味で、他の宗教でも採り入れられています。遺族や親しい友人が明かりを消さず、ご遺体を見守ることもあります。

visitation(ビジテーション)も、viewing(ビューイング)も、故人の遺族や親族、親しかった友人など、ゆかりの深い人たちが集まり、故人を偲び、冥福を祈る儀式です。wake との大きな違いは、カトリックの伝統に基づいたものではなく、神父による祈りもないという点です。

多くの場合、棺に入った故人の遺体が会場に安置されますが、必ずしもそうとは限りません。また、棺が開いていてご遺体を見ることができる場合もありますが、そうでない場合もあります。厳かな雰囲気の場合もあれば、故人の好きだった音楽をかけて明るい雰囲気の場合もあります。会場には故人の記念品や思い出の写真を展示し、弔問客にお別れをしてもらいます。参列者の出入りは自由で、何時間も滞在する人もいれば、短時間だけ立ち寄る人もいます。

一般的に、葬儀には黒や落ち着いた色の服を着ます。これらの色は喪に服す姿勢を象徴しています。もちろん、故人や参列者の宗教や個人的な好みで変わります。

2. funeral: 葬儀

葬儀(funeral)は、故人の人生を祝福し、冥福を祈る正式な儀式です。

通常、教会や寺院、葬儀場(funeral home)などで行われ、通常、遺族や親族、友人などが参列します。参列する場合は、開始時刻の15分前には到着し、着席しておきましょう。最前列と二番目の列は、基本的に遺族がすわるところなので、それ以外の場所に座ります。葬儀の後、遺族に自己紹介し、お悔みの言葉を述べます。中には、葬儀に到着した時に遺族と対面し、お悔みの言葉を述べる流れができている場合もあります。

一般的に、葬儀場で故人の遺族が式を執り行いますが、故人の宗教、教会、寺院などの代表者が執り行ったり、祈りや読経をしたりする場合もあります。

また、参列者が故人を偲ぶ弔辞(ちょうじ: eulogy)を述べたり、祈りを捧げたりします。この時に故人が好きだった音楽をかけたり、故人が写っているビデオを流したり、故人を偲ぶさまざまな工夫がされます。

場所によっては、葬儀は “celebration of life” (セレブレーションズ・オブ・ライフ: 人生の祝福・祝い)とも呼ばれます。伝統的な葬儀ではなく、よりパーソナルな儀式で、死を悼むよりも、故人の人生を祝うことに重点が置かれ、屋外会場や個人宅など、さまざまな場所で行われます。

葬儀の最後に、ご遺体の埋葬または火葬を行います。

一般的に、葬儀には黒や落ち着いた色のスーツやドレス(ワンピース)を着て出席します。これらの色は喪に服す姿勢を象徴しています。もちろん、故人や参列者の宗教や個人的な好みで変わります。故人や遺族が、葬儀の参列者にジーンズや特定の色を着ることを求めたり、あまりフォーマルでない服装を求めることもあります。なお、教会で行われる葬儀では、よりフォーマルな服装をする傾向があるようです。

故人の遺族と親しい間柄であれば、一般的に通夜と葬儀の両方に行くことが多いでしょう。でも、どちらかにしか参加できない場合は、葬儀に出席することが重要です。親しい間柄でない場合や、亡くなったのが最近でない場合は、葬儀にのみ出席することになります。どうしても出席できない場合は、sympathy card(お悔やみ状)を郵送したり、お花(funeral flowers)を送ったり、故人の遺言にある団体に寄付したりします。

3. committal/cremation: 埋葬/火葬など

葬儀の最後に、ご遺体を埋葬する儀式が行われます。

埋葬(burial)の場合、ご遺体を墓地に移動します。墓地でもう一度故人のために礼拝(graveside service)を行い、墓の中に棺をおろして埋葬します。

火葬(Cremation)の場合、遺族と参列者が火葬場で最後の別れと祈りを行い、火葬にします。遺灰を受け取ることができる日は火葬場と相談した上で決まりますが、たいていは翌日となります。なお、骨はグラインダーにかけられて形がなくなるため、日本のように「遺骨を拾う」という習慣はありません。

Recompose 社<br>Image by Olson Kundig

ワシントン州では、棺を使わずに遺体を埋葬できる green burial を行う墓地(green cemetery)があります。また、ワシントン州は2019年5月、世界で初めて遺体を堆肥化する natural organic reduction(自然有機還元)の処理を合法化しました。この処理ができるのは許可を得た施設のみで、施設内では個別の容器に遺体を藁や木片などと一緒に入れ、微生物活動の効果で、3週間から7週間で土に変質することができるとされています。詳しくは「世界初!人間の遺体を堆肥化する堆肥葬 シアトルの 『Recompose』 が2020年11月に受付開始」をご一読ください。

4. funeral reception/repast: レセプション

埋葬や火葬が終わってすぐ、教会や寺院、葬儀場、レストラン、コミュニティ・センターなどで、軽食を食べながら、遺族や親族、その他の参列者が、故人の人生を祝福し、思い出を語り合うカジュアルな会が行われます。”funeral reception”、または “repast” とも呼ばれます。スナックや飲み物のみが用意されている場合もあれば、宗教や文化的に重要な食べ物や飲み物、故人が好きだった食べ物や飲み物が用意されている場合もあります。

葬儀に関係するその他の事柄

葬儀にかかる一般的な費用

アドボケシーによる葬儀情報サイト Funeralocity.com によると、シアトル地域のお葬式の平均費用は次のとおりです。Funeralocity では、特定の地域の葬儀場や葬儀サービス、火葬サービスを検索して見つけることができ、価格比較もできるので便利です。

贈り物

一般的に、花を持参し、Sympathy Card を添えます。日本のように現金を渡す香典の習慣はありません。その他、Mass Card(教会や葬儀屋で取得できる)を送ったり、個人や遺族の選んだ慈善団体に寄付したりすることもできます。死亡記事(obituary)が出ている場合は、どの団体にどのように寄付をしたらよいのかが記載されていることがあるので確認しましょう。

死亡記事(obituary)

アメリカでは、著名人でなくとも地域の新聞などに死亡記事(obituary)を出すのが一般的です。その記事には、故人の姓名・出身地や住んでいた場所・遺族の姓名・死亡日時・葬儀の日時・埋葬場所・その家族で既に亡くなっている人などが掲載されます。遺族が献花を受け付けていない場合は、その旨も記載されています。葬儀は遺族のみで執り行う場合もありますが、死亡広告に葬儀の場所や時間も記載されていれば、遺族や親族以外の参列者も受け付けていることを意味しています。

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