「その人らしく生きるのを助けるのが医療」をモットーに、日米の医療のさまざまな違いをわかりやすく解説します。
ER とは
夜中に子供が急に熱を出し、あわてて ER(Emergency Room)へ行ったものの、長時間待った挙句に解熱剤を飲まされただけ。それなのに、一か月後、驚くほど高額の請求が・・・。このような経験をされたことはありませんか?
日本の夜間休日時間外の救急医療と、アメリカの ER は同じではありません。しかし、日本では救急医療施設を ER と呼ぶこともあることから、アメリカに来た日本人の間で混乱が起きるようです。
アメリカの ER とは「救急救命室」と訳されるように、重篤な症状や怪我、例えば多量の出血、骨折、大やけど、心筋梗塞や脳梗塞の疑い、急性中毒症状、重症な精神疾患症状など、すぐに命に関わるような状態の患者を受け入れるための施設です。そのため、ER の医療者は、命に関わるような重篤な状態の患者を優先的に診察し、治療します。
ER に行く場合
ER に行くような状態であれば、自分で車を運転せず、家族や友人などに ER まで送ってもらうか、救急車や AMR(American Medical Response)などを呼ぶことをおすすめします。その際、アメリカでは救急車や AMR に乗車した場合、保険の割合により料金が発生するので注意が必要です。
ER に着くと、まず、怪我や病状の問診や、どのような保険を持っているかを聞かれます。また、医療者が短時間で患者の文化的背景を把握するために、使用している第一言語を聞かれます。第一言語が英語以外の場合、患者は通訳をつけることができます。
保険がなくても ER で治療を受けることは可能ですが、ER で治療を受けた場合、Primary Care Provider(PCP)や Urgent Care にかかるよりも高額な請求になり、患者の側にはそれを払う責任があります。
ER に行く前に
以上のことを踏まえ、アメリカで怪我をしたり急に体調が悪くなった場合、命に関わる状態でない限りは、まず、PCP や保険会社の電話相談に連絡することをおすすめします。
PCP は、受け持ちの患者が緊急の対応を必要とする時のために、当日診療の時間を設けています。しかし、その日の予約がいっぱいで取れない場合や、PCP の施設に病状を診断するのに必要な機器や技師がいないなどの場合は、Urgent Care をすすめられることがあります。
Urgent Care とは
Urgent Care とは、命に関わるほどではないけれども、急な怪我や症状をその日のうちに診てもらいたいとき、予約をすることなしに診察、治療をしてもらえる施設です。
基本的に ER よりも待ち時間が少なく、料金の面でも ER よりはかかりません。また、Urgent Care は年中無休、夕方や夜間でも対応してくれるところもあるので、いざというときのために近隣の Urgent Care を調べておくといいでしょう。なお、Urgent Care は “Walk-In” と呼ばれることもありますが、同じ施設です。
二回にわたり、Primary Care、Urgent Care、ER についてお話ししました。それぞれの特徴を理解し、状況によってそれらの施設を有効に利用しましょう。それにより、アメリカの医療を自分らしく受けることができるお手伝いになれば、幸いです。
掲載:2014年7月 更新:2019年11月 情報提供:youcocare 看護師 岡本 優子さん
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