「その人らしく生きるのを助けるのが医療」をモットーに、日米の医療のさまざまな違いをわかりやすく解説します。
熱が出たとき、あなたなら、温めますか?それとも冷やしますか?
子供の頃、熱を出すと、母は「汗をかくまで温まりなさい」と言っていました。しかしアメリカに来て子供が熱を出して受診をしたとき、「ぬるめのシャワーを浴びなさい」と、全く反対のことを言われました。
これは一見、矛盾しているように思えますが、実はどちらも正しいのです。それはなぜでしょう。
発熱について
発熱とは、体が身を守るための防御作用(自己免疫)です。個人差がありますが、一般に37.5℃以上の熱を発熱と言います。細菌やウイルスが体に侵入した場合、体温を上げることにより、白血球の増加と働きを助け、また、ウイルスの種類によってはその増殖を弱めることができます。
発熱の始めの熱生産期には、体の内部に熱を蓄えようとするため、また、体が筋肉をふるわせて熱生産を促そうとするため、手足が冷たくなったり、悪寒(さむけ)、戦慄(ふるえ)、関節痛などの症状が出ます。
そのような症状の看護には、まず体を温めて、自己免疫力を上げる助けをしましょう。
発熱のピークを超えると、熱放散期になり、今度は体が熱を放散しようとします。症状としては、顔が紅潮し、手足が温かくなり、発汗し始めます。その時は、薄着にする、体を冷やすなど、熱が放散しやすいようにします。
なお、頭痛がある場合は、頭や首を氷枕、氷嚢、などで冷やすと、頭痛の緩和に役立ちます。
発熱時の看護のポイント
- 温度調節(上記参照)
- 水分補給
熱生産期:少しずつ進める(消化器官が収縮している可能性があり、吐き気を伴うことがあるため)
熱放散期:発汗を伴っているので、この時期に十分な水分補給をする。 - 消化のよい食べ物
熱生産期:無理のない範囲でとる
熱放散期:おかゆ、うどん、チキンスープなど、水分量が多く消化のよいものを少しずつとる - 安静、静養
熱の生産により体力を消耗しやすいので、安静を心がける - 解熱剤
発熱による痛みなどの不快な症状があれば解熱剤を使用する。ただし、解熱剤を使用すると、免疫力を最大に引き出す前に解熱してしまうことがあるので、使用前には医師、薬剤師、医療者のアドバイスを受けることをおすすめする。
各家庭の文化や生活習慣はそれぞれ異なりますが、そこに医学的な知識を組み合わせることで、よりよい家庭看護を行えると思います。熱が出たら、あわてずに落ち着いて、症状をよく観察し、適切な看護を行いましょう。場合によっては、医師、看護師、医療者の助言を受けることも必要です。
掲載:2014年9月 情報提供:youcocare 看護師 岡本 優子さん
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