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アメリカの不動産「新築物件の心得5ヶ条」

新築物件の場合、「大企業だから安心」「小さい会社ではその後のサポートが不安」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、どちらも一長一短なのが現状です。

そこで、主に一戸建てを中心に、新築を買う際の準備と心得をお伝えしたいと思います。

足で稼いでナンボの世界

皆さんがインターネットで目にしている物件情報のほとんどは MLS(Multiple Listing Service)というデータベースから共有されており、不動産業者が普段アクセスしている情報と同じものが大半を占めています。

しかし、実はこの情報、中古物件の9割以上は網羅しているものの、新築物件の情報は意外に漏れていることも多く、MLS に掲載されてからでは既に出遅れ感がある時も。

特に、大手ビルダーなどは前宣伝をする傾向が強く、会員登録をした人にのみイベントを開催し、その後に優先予約を募るなど、水面下で青田刈り的なマーケティングが繰り広げられていることが多々あります。

ですから、更地を見かけたら、開発告知の看板にある問い合わせ先や開発許可を出している市に直接問い合わせて情報を入手し、さらにオーナーに問い合わせて、先行リリースの情報を引き出すという、意外にも地道な情報収集が実を結ばせることも。

また、大規模な開発の場合は、一度に売り出すのではなく、第一期、第二期と、段階別に売り出していくので、現地まで足を運べば、次の段階がどこか、また、契約中の買い手が他の区画に変更したために一度は売却済みとなった物件がまた売り出されているといった、予想外の嬉しい情報が手に入ることもあります。

さらに、現在の段階での売れ行きから、将来リリースされる価格変動(ほとんどの場合は上昇)も予想できることから、狙っているコミュニティがあれば頻繁に足を運びましょう。担当エージェントと繋がりを持てれば吉。中古市場は情報共有が前提ですが、新築市場はまだこういった独自の掟があるので、コツを掴むと、その差は歴然です。

新築神話その1:新築だからバイヤーズ・エージェントは要らない

新築物件のセールスオフィスへ足を運んだ結果、サイト・エージェント(セールスオフィス側のエージェント)と仲良くなった末に、そのまま仲良く契約へ流れるのは、ちょっとお待ちください。

これは中古物件でのオープンハウスでも同様のことですが、所詮、サイト・エージェントは売り主側に雇われた人だということをお忘れなく。彼らはなるべく売り主側の意向に沿うよう契約を進めるのが前提ですので、買い手もエージェント(バイヤーズ・エージェント)をつけると安心です。

バイヤーズ・エージェントを連れてこないよう、浮いたコミッションの一部を提供するという悪徳業者も稀にいますが、ほとんどの新築セールスサイトではこのようなトラブルを避けるため、最初の登録の時点から、バイヤーズ・エージェントの有無、またその名前を告知する欄を設けています。将来のトラブルを避けるためにも、バイヤーズ・エージェントの情報を遠慮せず先方に伝えましょう。

また、バイヤーズ・エージェントの情報を渡し忘れたり、契約直前になって不安になり、途中からバイヤーズ・エージェントを用意した場合、ビルダーによっては最初に訪れた際に告知がなければバイヤーズ・エージェントは中途介入できないというサイトポリシー(Site Policy)があるので、注意が必要です。

前述したように、情報収集は通常、バイヤーズ・エージェントがお客様の代理で行い、他の情報も必要に応じて引き出してくれますので、気になる開発予定地があれば、エージェントに相談したり、情報を共有するのも得策です。

例えば、小さな宅地開発で急にオーナーや市の許可状況が変わり、売り出す予定ではなかったところが売りに出たり、契約中の案件で雲行きが怪しくなると、市場に戻すのが面倒だからとまさに棚ボタになったり、新築物件を取り巻く環境は意外にも日々、変化するのが常。情報の鮮度と判断、その後のスピードが重要になることもあります。

また、完成まで長いプロセスがかかるので、その間にバイヤーの気が変わったり、またコミュニケーションミスでバイヤーとの関係が途中で崩れたりすることも多々あるため、売り主側は実はヒヤヒヤしています。良いビルダーは、スムーズな取引を実現するためにもバイヤーズ・エージェントと友好的な関係を結ぶことが大切なことも理解していますので、新築であっても安心のためにバイヤーズ・エージェントという味方をつけておくのは大切なことかもしれません。

新築神話その2:新築だからインスペクションはいらない

これもお客様からよく質問されます。特に新築はビルダーからの保証が最低でも1年はあるので、「新築にインスペクションだなんて、石橋を叩き過ぎ。わざわざ高い費用を払ってまでインスペクションをしたくない」という気持ちは理解できます。

でも、”Better than new!” といって、「慣らし運転が終わって今が一番いい状態」という宣伝文句があるくらい、こちらの新築事情にもいろいろとあるようです。私自身もこれまでの経験から本が一冊書けるくらいネタがあります(笑)。私のそんな経験談とあわせてインスペクションについてご説明すると、ほとんどのお客さまがその効果を納得してくださり、最終的にはインスペクションを希望されます。

また、新築物件の場合、契約時にインスペクションの条件がつけられないことも多々あります。これを「そもそもインスペクションができない」と誤解してしまい、そのまま購入してしまったケースも少なくありません。

でも、契約書をよく読むと、「インスペクションで出た結果で、契約を破棄することはできない」と謳ってあるだけで、「最終内覧会の前に、買主の責任でインスペクターを雇い、建築基準法に合わなかった場合のみ、修繕要請が可能」と書いてあることが多くあります。

この場合、竣工直後と引き渡しの直前、10日ぐらい前にバイヤーがインスペクターを雇い、やり残している作業や不都合を全て洗い出して「パンチリスト(Punch List)」というレポートを作成し、ビルダー側へ提示して修繕を促すことが可能です。
「一年間の保証期間中にリクエストするのと、引き渡し前とでは何が違うの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、やはり対応してくれるスピードが違います。

ビルダーは基本的に工程をとても重視しているので、一日でも引き渡しが遅れることを嫌がります。また、建築基準法上は問題ないとされている項目でも、納得がいかなければ交渉したり、却下された箇所でも今後の生活へ支障が来たす不安があればセカンドオピニオンを集め、再交渉するなど、引き渡しが終わる前にできるだけ解決してスムーズに引っ越しできることは、バイヤーの負担を軽減するためにも大切なステップとして考えています。

契約書のカラクリとビルダー特約あれこれ

通常、中古物件を買う場合は前述の MLS(Multiple Listing Service)から推奨されている契約書のフォーマットを扱うことが多く、個々の条件以外、各項目の内容が標準化されていて内容もシンプルなのですが、新築物件では必ず「ビルダー特約 Builder’s Addendum」というものがついてきます。

また、大手のビルダーになると、バイヤーズ・エージェントも舌を巻くほどの “特約だらけの契約書” にサインをすることになり、何十ページにも及ぶ契約書を熟読、ビルダー独自のルールをあらかじめインプットします。

新築物件の契約は一度締結されると途中で破棄ができないため、エージェントはお客様が気に入った物件があれば、まずこのビルダー特約に目を通し、事前にお客様と相談してご理解いただいてから、オファーの準備を整えます。

最近は特に、建築許可がおりる前に先走ってリリースし、引き渡しまで10ヵ月から1年近くかかるケースも多くなってきているため、その間にバイヤーの事情が変わってしまわないよう、特約内容は売り手側が優位になるように作られています。

特に注意をしなくてはいけない項目は次の通りです:

1)インスペクション特約
前項でもご説明したとおり、インスペクション特約は少し複雑です。インスペクションで見つかった問題を理由に契約を破棄することができない代わりに、バイヤー個人で雇ったインスペクターを通し、コード(建築法)に沿わない箇所や、生活への支障を記したパンチリストの提出は認められています。でも、リクエストすべてに対応する義務はなく、曖昧な回答が多いため、後日トラブルになるケースも。なるべく引き渡し前に交渉を済ませて修繕を確約させるのが吉。

2)ローン特約
ローンを使って購入する際、竣工までの長い期間、世の中の経済状況や、自身の雇用状況などが変わったりとリスクがあるため、ビルダーが要求してくるローン特約期限は意外にも短いものです。契約から30日を過ぎた後、万が一、ローンのプロセスに問題があっても、ローン特約を使って契約破棄ができなくなるケースがほとんど。やむを得ず破棄する場合は、預けた手付金が返金されないという条件も記載されています。

3)建材やアップグレードの変更期限と条件
建設会社はコストを抑えるために大量の建材を一度に仕入れるため、モデルハウスなどで使われていたものが急に製造中止になり、予告なしに似たようなものと入れ替わることも。また、アップグレードに関して、一見、まだ間に合うかのように見えても、既に工期や建材が割り当てられており、その期限を過ぎた場合、希望のアップグレードができないこともあります。契約によってアップグレードする分を前払いするケースと、価格に組み込めるケースがありますが、前者の場合、頭金以外にも現金が必要になるので注意が必要です。

4)ローン会社
ビルダーと提携しているローン会社を通すとキャッシュバックがあったり、通常より長くレート保証をしてくれたりと特典も多いですが、その分、レートが若干高いことも。また、他のローン会社を通す場合はキャッシュバックが適用されなかったり、引き渡しの日を守らなければ1日毎にペナルティが発生するなど、条件が厳しくなることもあります。

5)保証特約(ビルダー保証)
保証特約の内容を確認すること。1年保証の場合、保証期間中に作業が終わっていることが条件など、まぎらわしい内容もあることから、満期の2~3カ月前に一度、ビルダーへ最終リクエストをし、保証期間中に終わらせるのがベストです。通常、庭の木などが90日以内の保証となっているなど、保証期間が異なるものもあるので注意が必要です。
あらゆる事故やケースを想定した、売り主を守るための偏った契約内容に署名するのを躊躇することもあります。しかし、残念ながらどこの建設会社も似たような内容なので、リスクと特徴をよく理解したうえで署名してください。

ビルダー(工務店)のアラカルト

私たちの業界では、ビルダーの種類をこんな感じで分けています。

1)Nationwide Builder
いわゆる、全米規模で知られているビルダー。シアトル周辺ではToll Brothers(元Camwest)、MainVue Homes(住友林業)、Lennar、DR Hortonなどをよく見かけます。ブランドイメージとサポートが充実している反面、契約内容が全米で統一されているため、特定の地域にはそぐわなかったり、保証サービスが本社管轄のため対応に時差があったりする問題も稀にありますが、大手で資本が強いため、大規模な開発を仕掛ける傾向があり、街づくりに貢献しています。

2)Luxury/Family Local Builder
地元、もしくは州内に本社を構える、ローカルでも大手の部類に入るビルダー。シアトル周辺の新築市場はこのLocal Builderがシェアを占めます。
高級ビルダーとして知られる、Buchan Homes、Burnstead、Conner Homes などは老舗ブランドとして確立していますが、最近では JayMarc Homes や American Classic Homes なども高級ビルダーとして知られるように。その他には、Family Local Builderの代表格として、庶民派からデザイナーズ派へ見事に転身した Tri Pointe Homes(元Quadrant Homes)、クラッシックで飾らない骨太な家を建てる Harbour Homes、長い保証期間(3年)が自慢の Polygon NW(Lyon Homesと資本提携)などもあります。Nationwide にも劣らない大規模開発を仕掛け、街づくりに貢献しています。

3)Small Local Builder
Family Own Builder とも呼ばれ、一軒から小規模で開発するローカルビルダー。稀に、サポートが手薄く、常に人手不足で対応が遅れたり、売り逃げする悪徳ビルダーもいますが、大手ほどのサポート体制がない分、契約に含まれない細かい問題まで見てくれたり、補償期間が過ぎても快く対応してくれたりと、ローカルビルダーならではの人情味あふれるサポートが自慢。また、作業担当者が一定しているため、品質管理も安定するメリットもあります。

新築物件は、何もないところから完成していく様子が我が子の成長と重なったり、好きなアップグレードでオリジナリティを引き出したりと、そのプロセスに魅力がたくさんあります。また、中古物件のようにマルチプルオファーで値段が異常に高騰することも少なく、ゆっくりと本来の家づくりプロセスを楽しめるのも特徴です。そして、売買を同時に実現したい人がそのタイミングを計算することが可能になるので、引っ越しも一度で済むことが多く、売却した資金を移行できれば、まさに一石二鳥。
そんなメリットとリスクを上手に乗り越えられれば、きっといい物件に巡りあえると思います。ご参考になれば嬉しいです。

不動産エージェント 三井まりこ
Mariko Mitsui CRS, ABR
Certified Residential Specialist

ワシントン州での不動産売買に役立つ最新情報をお伝えします。

【電話】 (425) 765-8742
【メール】 mariko@rellaassociates.com
【公式サイト】 rellaassociates.com

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