執筆者:真知子・フォート
2010年にワシントン州立大学のエクステンション・プログラムでマスター・ガーデナーの資格を取得。園芸相談、コミュニティガーデンの世話などボランティア活動を続けています。マスターガーデナーの資格を取得して以来、コミュニティ・ガーデンや園芸相談、コミュニティガーデンの世話などボランティア活動を続けています。また、2021年7月から自宅の庭で生け花教室を開講しています。お問い合わせは machikofa@gmail.com まで。
草月指導者連盟会員、草月シアトル支部ボードメンバー、インターナショナルイケバナシアトル支部ボードメンバー
母の日の週末にI-5でポートランド市(Portland, OR)に向かって行く途中にあるウッドランド市(Woodland, WA)に寄り、ライラック・ガーデン(Hulda Klager Lilac Garden)を拝見しました。一歩足を踏み入れると、正面に昔懐かしいファームハウスがあり、その横と後ろに広がるガーデンには、まだ2歳だった1865年にドイツから家族とともに移住したドイツ系アメリカ人のヒルダ・クラガーさんが品種改良した多種多様のライラックが咲き誇って甘い香りが漂い、あたかも母の日を祝ってくれているようでした!
15年前に購入した際の我が家の庭には、あまり花を咲かせず、茶色に変色した葉がカールしたり、貧弱な紫をしたライラックの小木が2本ありました。ジャングルだった庭のランドスケーピングに多忙で、そんなライラックに費やす時間がなく、汚いからと地面から切り取ってしまいました。そんな私ですから、ライラックにはまったくと言っていいくらいに興味がなかったのですが、この庭のおかげでファンになってしまいました!
今回購入したヒルダさんの 『Krasavitsa Moskvy』(香りの強い白いダブル花弁)の苗についていた説明書をよく読んでみると、我が家のライラックがどうして貧弱だったのかがわかりました!ライラックはアルカリ性(Alkaline)の土を好むのです。一般的に、ここパシフィック・ノースウェストの土は酸性(Acidic)で、2~3年に一度、石灰(Lime:主に牡蠣殻などが原料として使用される)か、木々を燃やした後の灰を土に混ぜてやって、土壌のPH調整してやる必要があるのです。また、少なくとも6時間の日照時間が大切。肥料は、コンポストは窒素(Nitrogen)が多く葉の成長促進が主なので、どんな花でも咲かせるにはリン酸(Phosphate)が多く必要です。オーガニックのボーン・ミール(Bone Meal)はそのリン酸がたくさん含まれているので、必ず混ぜ込むこと!
市販の肥料の箱やバックに、例えば、10-20-10などと書いてありますが、ご覧になっていますか?これは、肥料の三大栄養素、N(Nitrogen:窒素)、P(Phosphate:リン酸)、K(Potash:カリウム)の分量のことです。
- N(Nitrogen:窒素):葉肥(はごえ)で葉の成長を促し、色を濃くする。
- P(Phosphate:リン酸):花肥(はなごえ)または、実肥(みごえ)で、開花、実・種の成長を促進する。
- K(Potash:カリウム):根肥(ねごえ)で、根や葉茎を丈夫にし耐菌性を高める。
例えば、10-10-10や8-8-8のように、同じ数値はバランスは良いですが、「去年のトマトの収穫で葉ばかりで、実が少なかった」とか「実が小さかった」などのの場合は、Nが多い土であるということなので、真ん中のP(リン酸)が高い数値、例えば、10-20-10などが適切になります。どんな肥料でも、安全なオーガニックをお選び下さいね!
あんな古い時代の、しかも田舎町に、こんな素晴らしい女性が存在していたとは、彼女の研究の成果に感動しました!また、目にも留めていなかったライラックという花に熱い思いが溢れてきました!苗から最初の花を咲かせるのは3-5年かかるようですが、素晴らしい白い花を咲かせてみようと心に誓いました。
ライラックのシーズンは毎年4月の中頃から母の日の週末まで。来年はぜひこのヒルダ・クラガー・ライラック・ガーデンをお訪ね下さい。彼女亡き後は、地元のヒルダ・クラガー・ライラック・ソサエティによって保護・維持されています。
Happy Gardening!
掲載:2015年5月