
米国では食料価格の上昇が続いています。米国農務省(USDA)の経済調査サービスによると、2023年に「健康な生活を送るのに必要な食糧へのアクセスが十分にない」(フード・インセキュリティ)状態を経験した世帯は13.5%(1,800万世帯)で、2022年の12.8%(1,700万世帯)から増加しました。
ワシントン州でも食糧不安が深刻化
ワシントン州も例外ではなく、ワシントン大学(UW)とワシントン州立大学(WSU)が実施した最新の調査によると、ワシントン州における食料価格の上昇と、それに伴う食糧不安の問題が大きな懸念となっています。
「ワシントン州フードセキュリティ調査(WAFOOD)」は、UWとWSUの共同プロジェクトで、2020年以降、食糧不安の動向を追跡していますが、2024年8月から10月に実施された調査に回答したワシントン州民5,528人の55%が「食料品の価格上昇に非常に懸念を感じている」と答えており、州全体で依然として高い水準の食糧不安が続いていることが示されました。
その影響で、地元のフードバンクの需要が急増しています。2023年にはワシントン州西部の17郡にある500を超えるフードバンクや食事提供プログラムへの訪問数は800万回でしたが、2024年には1000万回に増加し、25%もの伸びを記録しました。この調査の回答者の55%の世帯も、過去1カ月以内に何らかの形で食料支援を利用したと報告しています。
この記事では、登録せずに利用できるプログラムと、登録して利用するプログラムの両方をご紹介します。
登録不要のフードバンク(food bank)
フードバンクとは、寄付された大量の食品などを大きな倉庫に保管し、食料が必要な人に配給する非営利団体です。場所や日時などは公式サイトで確認できます。中には、ドライブスルー式、移動型になっているところもあります。
- Norhwest Harvest
ワシントン州全域に展開している唯一の非営利フードバンク・ディストリビューター。375のフードバンク、食事プログラム、およびハイ・ニードの学校のネットワークを通じて、毎月約200万食を提供しています。 - Second Harvest
ワシントン州東部とアイダホ州北部の26郡で毎月200万ポンド以上の食料を無料配布している非営利団体。250以上のフードバンクや給食センターとのパートナーシップにより、毎週55,000人に食事を提供しています。 - Feeding America
フードバンク、パントリー、食事プログラムを持つ、米国最大の国内飢餓救済組織。国内のほぼすべての地域、子ども1200万人と高齢者700万人を含む4000万人にサービスを提供しています。
登録不要のフード・パントリー(food pantry)
フード・パントリーとは、フードバンクなどから支給された食料を配給する場所で、フードバンクより小規模です。下記のサイトでも、各地にあるフード・パントリーを探して見つけることができます。
また、主な大学は教職員や学生に無料で食料品を提供するフード・パントリーを運営しています。
登録制の食糧援助プログラム
SNAP Food Benefits 『スナップ』(旧フード・スタンプ)
低所得者用の補助栄養補助プログラム。月々の受給額は、家族構成と月収に応じて決定されます。配給食品の指定もなく、デビットカードのようなカードでもらうことができます。ワシントン州では Basic Food in Washington と呼ばれ、野菜や果物、肉や魚、乳製品やパン、シリアルやドリンクなどの援助を受けることができます。
女性と乳幼児のための特別栄養補助プログラム『ウィック』(WIC Program for Women and Infants)
低所得の妊婦や産後の女性、授乳中の女性、栄養のリスクがある5歳以下の乳幼児を対象としたプログラム。米国農務省(USDA)の食品栄養サービス(FNS)が運営し、全50州、33のインディアン部族組織、アメリカ領サモア、ワシントンD.C.、グアム、北マリアナ諸島連邦、プエルトリコ、及びバージン諸島が含まれます。参加者は毎月の供給金を指定された食品の購入に充てることができます。WIC の申し込み手続きはすべて無料。供給金は所得に含まれません。
学齢期の子どもの支援プログラム
合法移民のための食料配給プログラム 『State Food Assistance Program(FAP)』
SNAP Food Benefits 『スナップ』(旧フード・スタンプ)の受給資格のない合法移民が対象のプログラム。2020年3月からオンライン、または電話で申し込むようになっています。詳細は公式サイト参照。
アメリカにはさまざまな食料援助プログラムがあり、外国人や留学生も、もちろん利用できます。これから仕事や勉強で渡米する人、そのご家族の方々も、「米国では物価が高く、何でも日本の3倍はする」と考えて予算を組むことをおすすめします。