今回は、動物のリハビリテーションで行う運動療法についてお話します。
バランスエクササイズ:どんな症状にも効果はありますが、特に神経疾患の治療には必須です。静的運動も含むので、椎間板ヘルニアの手術後、数日後からでも取り入れることができます。不安定なものの上で、転ばないようバランスをとる訓練です。脚だけでなく、体幹も鍛えられます。疾患の程度により、適度な訓練を選びます。
- スリングやハーネスなどの補助を使い、立つ。
- ベッドやクッションの上に立つ・歩く。
- バランスボード、ヨガボール、ボスボールなどの上に立つ。
- 一本や二本の脚をセラピストが持ち上げ、三本脚や二本脚で立つ。
- 砂や芝の上を歩く。
カバレッティ・レール:5-6本の棒を、等間隔で同じ高さにセットした器具で、ハードルのように上を跨ぐ訓練です。肘、膝の関節の強化はもとより、無意識に歩幅や足をあげる高さを調整しなくてはならないので、神経疾患にも有効です。
SIT-TO-STAND(座り立ち運動):お座りの姿勢から、立ち上がる運動です。股関節や膝関節の強化に有効です。疾患のある脚をかばったり、横座りにならないよう、補助が必要なこともあります。完全に座るのが難しければ、クッションやセラピストの膝上に座らせるなど、工夫をします。
階段・坂道の昇降:後肢の強化のためには上り坂、前肢のためには下り坂が効果的です。
8の字・円周歩行:直線歩行では必要のない、体重移動や方向転換の能力を必要とします。
トレッドミル:床がベルトで可動するので、患者に歩行を強制することができます。陸上のものと水中のものがありますが、水中のものは浮力によって体重が軽減されるので、整形外科、神経外科の手術後、早い段階で取り入れられることが多いです。水は温水なので、筋肉をゆるめ、マッサージする働きもあります。
以上、さまざまな運動療法を簡単にご紹介しました。
家庭でのリハビリも非常に重要なので、動物のリハビリの認定を持つ獣医師やセラピストと相談して、プログラムを決定します。正しい訓練を選ばなければ、逆効果になることもあります。
おやつやおもちゃはモチベーションを上げるのに効果的ですが、何よりも有効なのは家族の応援です。
掲載:2020年6月 文・写真:Masami Seplow, DVM CVA CCRP