執筆者:粥川由美子(かゆかわゆみこ)
北海道出身、画家。2005年よりシアトルに在住。シアトルで初めて飼ったペットは、動物保護施設から引き取ったパピヨン犬のキット。キットとの暮らしの中で、シアトルの動物愛護の精神や、犬にやさしいこの街の一面を知り、ブログ 『キットと歩こ、シアトル "いろいろ" ストリート。』 を開始。
【公式サイト】 sweetyumiko.com
【著書】 『Japanese Wolf』
犬にやさしい街・シアトルといえど、特別なケースでないかぎり、基本的には衛生面の理由から飲食店では犬と同席できないのが一般的です。でも食べ物のサービスがない、または軽食程度のサービスだけのブルワリーやバーなどでは、犬を歓迎してくれる店が実は結構多いのです。家で犬が留守番しているからとソワソワせずに、心置きなく犬と一緒にお酒を楽しんでみませんか?
いろんなスタイルのバー
フィニー・リッジにある 『The Dray』 は、カウンターとテーブルが数席あるだけの小さな店構えですが、ウェブサイトでも公言するだけある「ドッグフレンドリーな店」。ピザやサンドイッチなどの軽食もあり、サッカーの試合をテレビで観戦するために集まる、サッカーファンの店としても人気です。
ウォーリングフォードの 『MiiR』 は、自転車やボトルの販売のほか、コーヒーやお茶、ビールを楽しめるカフェ/バーのスペースがあります。訪れる常連の犬たちは、犬好きの店員さんに声をかけてもらうのが楽しみな様子。店内にも犬を連れて入れますが、お天気の良い日には気持ちのよいパティオ席がおススメ。
『Chuck’s Hop Shop』 は、タップだけでも50種類という品揃えが自慢の "ビール天国"。グリーンウッドとセントラル・ディストリクトに店舗があります。日替わりで店先にやってくるフードトラックで食事を買うことができ、犬を連れたお客さんで賑わう人気店です。
トレンドのブルワリー
かつてブルワリーといえば、レストランがついたパブ形式が主流でしたが、最近のトレンドはレストラン形式ではなく、テイスティング・ルームのある小さな構えのマイクロ・ブルワリー。それぞれ個性があるので、いろいろ行ってみましょう。
フリーモントにある、その名も 『Fremont Brewing』 は、店先の広いビアガーデンと店構えがとても豪華。ビアガーデンには屋根のついた席もありますが、涼しい店内でも犬と過ごせます。食べ物のサービスはありませんが、持ち込みは自由です。
この夏グリーンウッドにオープンしたばかりの 『Flying Bike Cooperative Brewery』 は、犬が大好きなオーナーが経営するアットホームな店。オーナーいわく、「いつでも100%ドッグフレンドリー」だそうで、犬を連れたお客さんでいっぱいです。
クラフトビールのメッカとしてジャングルシティでも紹介された、バラードの "New brewery district" にある 『Stoup Brewing』、『Lucky Envelope Brewing』、『Reuben’s Brews』 は、ぶらぶらとハシゴできるほんの数ブロックの中に点在し、どの店でも犬を歓迎しています。それぞれに気持ちのいいパティオがあり、フードトラックが日替わりでやってくるのもお楽しみのひとつ。食べることが大好きな私にとって、どんなフードトラックがやってくるのかは大事なポイントなので、それぞれの店のウェブサイトでスケジュールをいつもチェックしています。
イベントで飲む
ウディンヴィルの Homeward Pet Adoption Center が主催する Happy Tails Wine Walk のように、犬と一緒にワイン・テイスティングに参加できるチャリティ・イベントもあります。また毎年恒例のフリーモントの Oktoberfest では、週末3日間のうち最終日の日曜日だけは「Dogtoberfest」と称し、犬と一緒に入場することができます。この日は例年 City Dog Magazine のカバーモデルコンテストがあり、参加費は動物保護施設への寄付になります。
犬と楽しく飲むためのひと口メモ
お酒を飲んだりスポーツ観戦を楽しむこのような場所では、盛り上がったお客さんがワーッと大きな歓声をあげることもあります。第2回の「犬と一緒にいただきます」でもご紹介しましたが、まずは犬が店の環境にストレスを感じないよう、少しずつ練習をしながら様子を見てみることをおススメします。
最終回に寄せて
全6回のシリーズでお読みいただいたこのエッセイでは、犬の短い一生に寄り添い、できるだけ一緒の時をすごすということに焦点をあてて、シアトルならではの犬との暮らし方をご紹介してきました。幼少から犬と育った私も、こんなに恵まれた環境で犬と暮らすのは初めてです。「犬を飼うと自由がなくなる」というのがキットを飼うまでに悩んだ理由のひとつですが、飼ってみると思いのほか犬と一緒にできることがたくさんあり、不自由を感じない犬とのライフスタイルを見つけることができました。このエッセイが、犬を飼うことに悩んでいる方の背中を押す手助けとなれば幸いです。
犬と一緒の楽しい生活に乾杯!
注)犬に関するポリシーは、店側の事情で変わることがあります。お出かけ前に各店にご確認ください。
掲載:2015年9月