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シアトルのにぎやかなネイバーフッドの一つ キャピトル・ヒル(Capitol Hill)

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ダウンタウンの東側にある地域、キャピトル・ヒルは、シアトル市内でにぎやかなネイバーフッドの一つ。バーやレストランが並ぶにぎやかな通り、カレッジやライトレールの駅もあるブロードウェイ、そこから少し離れて点在するこじんまりしたカフェ、ボランティア・パークのシアトル・アジア美術館、周辺の閑静な高級住宅地など、さまざまな顔を持っています。かねてから抗議活動の行進の起点となることが多く、新型コロナウイルスのパンデミック中も警察による黒人に対する暴力に抗議する BLM 運動の中心となって、警察との衝突が多く起きたところでもあります。

もくじ

Broadway ブロードウェイ周辺

©︎ Rachael Jones

かつてキャピトル・ヒルの中心地と言われたブロードウェイは、再開発されてすっきりさっぱりしてきたネイバーフッドとは少し異なり、1990年代の垢抜けない、雑然としたシアトルらしさが今も残る通りです。シアトル・セントラル・カレッジの周辺にはカフェやレストランも展開しています。

ライトレール

シアトル・タコマ国際空港やダウンタウン、ワシントン大学を結ぶライトレールの駅、インターナショナル・ディストリクトやパイオニア・スクエアを結ぶストリートカーの駅もでき、便利になりました。

The Elliott Bay Book Company

老舗の書店『The Elliott Bay Book Company』 は、全米の優れた書店リストに含まれることも多く、シアトルでは独立系書店の代表として認識されている書店。もともとエリオット湾に近いパイオニア・スクエアにありましたが、2010年にキャピトル・ヒルに移転しました。一般良書、自然アウトドア、アート、料理、児童書など、シアトル読者の興味を反映するテーマ別に書籍が並び、店内を巡ってお気に入りになりそうな本を発見できるようなレイアウトになっています。本に精通した従業員による推薦コーナーは定評あり。著者朗読会などのイベントも多く、過去には村上春樹や桐野夏生を含む世界各国の著名作家が訪れています。ノースウエストのカレンダーや写真集、絵本、パズル、ギフト小物など、シアトルらしいお土産も。

Little Oddfellows

その『The Elliott Bay Book Company』 の中にあるカフェ 『Little Oddfellows』 は、隣接する人気レストラン 『Oddfellows Cafe + Bar』 が2015年8月にオープンした人気カフェ。販売されているスイーツや軽食はすべて自家製。ラップトップを持ち込んで長居できる、シアトルらしいカフェの一つです。

Ada's Technical Books & Cafe

Ada’s Technical Books & Cafe

このエリアから少し離れていますが、もう一つ、本とカフェを融合させた書店があります。その 『Ada’s Technical Books & Cafe』 があるのは、築100年の建物。Ada というカフェの名前は19世紀にコンピュータ・プログラムの先駆者とも言われたエンジニア、Ada Lovelace(エイダ・ラブレス)にちなんでおり、お店のロゴも彼女がモチーフになっています。

Pike-Pine パイク-パイン

スターバックス

1920年築の建物を最大限に生かした外観。
Photo courtesy Starbucks. Photo: MG PHOTOGRAPHY LLC

パイク・プレース・マーケットの正面玄関の通り、Pike Street を、ダウンタウンを通り、坂の上を目指して行くと、Melrose Avenue と交差するあたりにカフェやレストランが集中している地域があります。

ここにあるのが、シアトルでも指折りの観光名所となっている、スターバックスの高級ブランド『リザーブ』 のロースタリー&テイスティング・ルーム1号店。2014年12月に開店して以来、ダウンタウンから人を呼び込むスポットとなっています。

人気のレストランやかわいらしいショップがまとめて入っている Melrose Market は必見です。

バラエティに富んだ外食シーン

かつては高級住宅地だったキャピトル・ヒル

ボランティア・パークの枝垂れ桜

「Capitol Hill」(キャピトル・ヒル)という名称は、ワシントン州政府が州都を選ぶ際、「シアトルが選ばれるように」と願っていた土地開発業者のジェームズ・ムーア氏がつけたという説があります(結局、州都は南のオリンピアに決定)。もう一つの説は、ムーア氏の妻の故郷コロラド州デンバーにあるキャピトル・ヒルにちなんでつけたというものですが、定かではありません。

1800年代後半から1900年代前半のキャピトル・ヒルは、銀行業や材木業、そしてアラスカのゴールドラッシュで財産を築いた人などが屋敷を構えていた高級住宅地でした。キャピトル・ヒルの丘の頂上、海抜444.5フィート(135.5m)にあるボランティア・パーク周辺は現在も大きな屋敷が並ぶ閑静な住宅地となっています。

ボランティア・パークは、シアトル市の都市計画にたくさんの公園を盛り込んだオルムステッド事務所がシアトルに来る前からある古い市営公園のひとつ。シアトルの建築家・松原博さんによると、オルムステッドが来てからは、その設計にもとづき、1912年までに温室・遊歩道・池・遊戯施設、そして直径50フィート、高さ95フィート、88万3千ガロンの給水量を誇る給水塔が完成したそう。他のシアトルの公園にはない、東海岸やイングリッシュ・ガーデンを思わせる典型的都市型公園の設計手法がとられていることもその特徴と言えます。

手前はキャピトル・ヒルのボランティア・パーク

たくさんの木々に囲まれたボランティア・パークには、イサム・ノグチの彫刻『Black Sun』、広々とした芝生の広場、鯉が泳ぐ池、野外劇場、温室、ダリアの花壇、ウェイディング・プール、遊具のある公園が揃っています。2020年2月にリニューアルオープンしたシアトル・アジア美術館も見逃せません。アメリカでは数少ないアジア美術専門の美術館で、所蔵する美術品は2万4千点以上。日本美術だけでも二河白道図(一幅:絹本著色:13世紀:鎌倉時代)、竹林春秋図(六曲一双屏風:紙本金地著色15世紀:室町時代)、鹿下絵和歌巻(一巻:紙本金銀墨書:1610年代:桃山―江戸時代:本阿弥光悦書・俵屋宗達画)、烏図(六曲一双屏風:紙本金地墨画:17世紀前半:江戸時代)など、日本にあれば重要文化財・国宝級の作品を所蔵しています。

ボランティア・パーク横にあるレイク・ビュー墓地では、ブルース・リーと息子のブランドン・リーのお墓参りをするファンもいます。

種子田

『種子田』

キャピトル・ヒルはレストランやカフェが多いことでも知られています。大企業のチェーンではなく、個人経営のインディペンデント系のレストランやカフェが多いのが、この地域の特徴です。

ラテアートの代表者と言われるデビット・ショマーさんが展開するカフェ 『Espresso Vivace』や、ローカルの店 『Caffe Vita』、『Victorola』『Cherry Street Coffee』、クレープも味わえるカフェ 『Joe Bar』 などの老舗ははずせません

Broadway から数ブロック離れた12th Avenue 周辺にも、シアトルで人気のシェフ、ルネー・エリクソンが経営するレストラン『Bateau』やカフェ、バー、自家製パスタと地元の新鮮食材で人気の『Tavolata』、おしゃれなタイ料理の『SOI』、地元食材を使った創作料理レストラン『Marjorie』、パシフィック・ノースウエスト料理の『Lark』、ベトナム料理の『Ba Bar』、全米で有名なバー 『Canon』、人気のアイスクリーム店などが並んでいます。

日本食では、寿司懐石『種子田』や『Ltd Edition Sushi』は予約がとりづらい人気店。また、串カツの『Taku』、居酒屋の『たまりば』、食事処の『ロンド』、うどん専門店の 『U:Don』 2号店、ラーメン店などがあります。

キャピトル・ヒルとゲイ・コミュニティ

Historylink.org によると、「キャピトル・ヒルがシアトルのゲイ・コミュニティに寛容なエリアとして最初に知られるようになったのは1950年代」とのこと。「1993年にネオナチに爆撃されたことで有名になった」ブロードウェイ初のゲイバー『Elite Tavern』(622 Broadway East)、シアトル初で最も長く存続したレズビアン・バー『Wild Rose Tavern』(1021 East Pike Street)などができ、アメリカで最初のゲイ・コミュニティのためのカウンセリングと雇用支援サービス『Dorian House』が1969年にオープンし、1991年には Association of Gay and Lesbian Youth Advocates が LGBTQ の青少年のためのサポートセンターを開設したトいう歴史があります。

また、1974年にゲイ・コミュニティ・センターが開設されたのと同時に、1969年にニューヨークで起きた有名なストーンウォールの反乱を称え、最初のゲイ・プライド・ウィークが初めて開催されたのもキャピトル・ヒルのブロードウェイでした。3年後の1977年にはシアトルで初めて公式に認められたゲイ・プライド・パレードがダウンタウンで行われ、当時のチャールズ・ロイヤル市長はシアトルでのゲイ・プライド週間を宣言しました。パレードはそれ以来毎年開催されていましたが、1982年にはブロードウェイに移動し、2006年にダウンタウンに戻るまで25年間にわたり開催されました。2018年からはシアトルの LGBT コミュニティが6月下旬に 『Queer Fest』 も開催するようになっています。

シアトル・セントラル・カレッジのすぐ東側にあるカル・アンダーソン・パークは、同性愛者であることを公表していたワシントン州初の議員、カル・アンダーソン(1948-1995)にちなんでいます。Historylink.org によると、アンダーソンはベトナム戦争に従軍し勲章を受けた退役軍人で、ワシントン州の下院議員・上院議員を務め、同性愛者を含めるため州の公民権法を拡大し、低所得者向け住宅と銃規制法の制定にも尽力しました。1995年にエイズで亡くなった後、その功績をたたえるため、2003年4月10日にブロードウェイ・パークからカル・アンダーソン・パークに名前が変更されました。

キャピトル・ヒルは「グランジ発祥の地」!?

1991年にニルヴァーナがリリースしたセカンド・アルバム 『Nevermind』が大ヒットし、同じくシアトル発のパール・ジャムのデビューアルバム 『Ten』、サウンドガーデンのサードアルバム 『Badmotorfinger』 、アリス・イン・チェーンズのデビューアルバム 『Facelift』などがヒットしたことで、シアトルで発祥した「グランジ」が世界の音楽シーンを席巻し、一大ムーブメントとなりました。ブームは1990年代後半まで続き、メジャー級になったパール・ジャムやアリス・イン・チェーンズが活動を続けています。

一般的にキャピトル・ヒルはグランジ発祥の地と考えられていますが、キャピトル・ヒル・シアトルによると、実は当時のキャピトル・ヒルには音楽を演奏できる主な会場がなく、「シアトル・サウンドが生まれたのは、実際はベルタウンやインターナショナル・ディストリクト、パイオニア・スクエアというシアトルの他のネイバーフッドだった」とのこと。バンドメンバーがキャピトル・ヒルで飲んでいたことはあるわけなので、キャピトル・ヒルもグランジの歴史の一部と言ってよさそうです。

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