シアトル・タコマ・ボセルに三つのキャンパスを持つワシントン大学が、学生による ChatGPT やその他のAIベースのツールの使用について、教員向けの対策を発表しました。
この件を最初に報じた GeekWire によると、ワシントン大学で教育コミュニティの発展を支援する Center for Teaching and Learning は、学生たちが作文からコンピュータ・プログラミングまで、幅広いコースの課題をこなすためにこれらのツールを使い始めていること、また、AIベースのツールが常に進化しており、AIを使用した提出物を特定する技術を開発することは非常に困難であることを踏まえ、教員が教え方や提出物の作成を変更することを提案しています。
一般に公開されているこの対策を見てみると、「AIで生成されたテキストに関する決まりを設定し、AIで生成されたテキストを提出したことが確認された場合の対応を明確化すること」「多くの人が人生で一度はキャリア変更をすることから、今目指している進路に関連すると思われる学習だけに集中せず、さまざまな事柄の学習が大切であることを伝えること」「すでに知っていること以外のことを知ることが学習であり、AI ツールを使用してそれを回避すると学習が妨げられるだけであること」「それぞれの課題の評価基準を低くすることで、不正行為に対するモチベーションを下げ、学習プロセスの大切さを示すこと」「AI ベースのツールでは、授業内容・授業での会話・実際の体験を効果的につなげるのは困難であることから、これら3つを結びつけるような課題を作成すること」「AI ベースのツールを教育に利用し、学習に役立てられる方法、デジタルリテラシー、情報の正確さ、効果的な文章を構成する要素についてクリティカルな思考の育成に役立てること」などが含まれ、課題や宿題、試験の方法の変更が必要であることがわかります。
昨年11月に OpenAI がリリースした ChatGPT(チャット・ジーピーティー)は、AI(人工知能)テクノロジーを利用した対話型の自然言語処理チャットボットで、急激にユーザ数を増やしています。
質問を入力すると、自然な文章で瞬時に回答が生成される上、回答するには情報が不足していると判断すれば、追加質問した上で自然な文章で回答することができます。しかし、こうした基本的なことだけでなく、医学試験や MBA レベルの試験に合格する回答を生成することができるなど、基本を超えたレベルであることが Forbes などで報じられています。
実際に使用してみると、現時点ではあらゆることに完璧な回答を生成できるわけではないことがわかりますが、文章が自然なためか、あたかも完璧であるかのような印象を与えます。そのため、AI が生成した内容の正確性を確認する方法をまだ知らない学習者は、自分が知らないことについて質問していれば特に、回答が正確だと思い込む可能性が高いことが想像できます。
また、教育界では、AI が生成した内容の正確性に加え、盗作(plagiarism)の懸念も高まっています。こうしたことから、ワシントン州最大のシアトル公立学区、ロサンゼルス統一学区、ニューヨーク市教育局などが校内のネットワークから ChatGPT をブロックする動きが昨年から報じられてきました。
Business Insider によると、フランスの最難関大学の一つである Sciences Po(パリ政治学院)は先週、ChatGPT やその他の AI ツールの使用を禁止しました。ロイター通信は、「この規則に背いたことが発覚した場合は、退学の可能性もある」「ChatGPT は、不正全般、特に盗用に関して、世界中の教育者や研究者に重要な問題を提起している」という同大学の広報担当者の発言を報じています。Business Insider の記事では、インドのバンガロールの RV 大学が学生の ChatGPT 利用を禁止し、抜き打ちチェックを行い、学生に自力でやり直すよう要求することを決定したという地元メディアの報道が紹介されています。
31日には、ChatGPT を開発した OpenAI が、AI で生成された文章かどうか識別するための無料ツールを発表しました。現時点で、この AI Text Classifier を使っても「AI で生成された文章の26%を "AIで書かれた可能性が高い" と正しく識別し、一方で、人間が書いたテキストを "AI で書かれたもの" と誤って識別することが9%あった」ことから、「主要な識別ツールとしてではなく、文章の出所を見極める他の方法を補完するものとして使用されるべき」としています。
最後に、ChatGPT に「学生が課題や宿題で ChatGPT を使用するとしたら、どのように使用するべきか」と聞いてみたところ、筋の通った回答が返ってきたことをご紹介します。