今年もデイライト・セービング・タイム(Daylight Saving Time)が終了する日が迫ってきました。
日本では導入されていないシステムなので、アメリカに来て初めて体験したという人も多いでしょう。ここでは、このややこしいシステムをわかりやすく解説します。
デイライト・セービング・タイムとは
デイライト・セービング・タイムは、日照時間が長くなる時期に時間をずらすことで自然光の使用率を高め、電力を節約するという理由で、1918年に制定されました。その後、1966年に制定された統一時間法(Uniform Time Act)により、3月の第2日曜日午前2時から、11月の第1日曜日午前2時までがデイライト・セービング・タイムに設定されています。
年 | 開始日時(1時間進める) | 終了日時(1時間戻す) |
2024年 | 3月10日(日)午前2時 | 11月3日(日)午前2時 |
2025年 | 3月9日(日)午前2時 | 11月2日(日)午前2時 |
いつ時間を進めたり戻したりするのかを覚えるフレーズは、“Spring Forward, Fall Back” です。そもそも英語で “spring forward”(前に進む)、”fall back”(後ろに下がる) は決まった言い回しなので、春(spring)と秋(fall)とかけて覚えやすくしてあるのです。
- 電子機器の時刻の設定は自動的に変更されます。
- アナログ時計をお使いの方は、前日の夜寝る前に時計を1時間進めておくことを忘れないようにしてください。
デイライト・セービング・タイムを採用している地域
アメリカ国内のほとんどの地域がデイライト・セービング・タイムを採用しています。
でも、ハワイやサモア、グアム、プエルトリコ、 バージン諸島、そしてアリゾナ州のほとんどの地域(ナバホのインディアン居住区域を除く)は採用せず、一年を通じてスタンダード・タイム(標準時)にしています。
ちなみに、カナダもアメリカと同じデイライト・セービング・タイムを採用しています。
メキシコは一年を通してスタンダード・タイムですが、アメリカとの国境に近い地域はデイライト・セービング・タイムを採用しているとのことです。
日本との時差も変更
日本の国土の約26倍の広大な国土を持つアメリカには、時差があります。下記はデイライト・セービング・タイムを採用している地域のタイムゾーンと、日本時間との時差です。
例えば、シアトル(太平洋標準時)と日本の時差は、標準時では「日本時間-17時間 = シアトル時間」ですが、デイライト・セービング・タイムの間は「日本時間 -16時間 = シアトルの時間」となります。
タイムゾーン | 標準時 | デイライト・セービング・タイム |
---|---|---|
アラスカ標準時 | -18 | -17 |
太平洋標準時 | -17 | -16 |
山岳地帯標準時 | -16 | -15 |
中部標準時 | -15 | -14 |
東部標準時 | -14 | -13 |
デイライト・セービング・タイムは賛否両論
アメリカでは長らく、時刻変更の終了について議論が行われてきました。最近も、一年を通じてデイライト・セービング・タイムを使用することを主張する動きによって、2022年に連邦議会の上院で日照保護法(Sunshine Protection Act)が可決されましたが、連邦下院では審議されず、2023年1月の会期終了とともに廃案となりました。
年間を通じて標準時(Standard Time)にする場合は州議会が決定できますが、年間を通じてデイライト・セービング・タイムにするには、米国議会の承認が必要なのです。
そのため、ワシントン州議会は2019年に「年間を通じてデイライト・セービング・タイムを採用する法案」を可決し、インスリー知事が署名しましたが、米国議会の承認は得られていません。
アメリカ睡眠学会は標準時を支持
睡眠の専門家で構成されるアメリカ睡眠学会(AASM)は、一年を通じてスタンダート・タイム(標準時)を使用することを求めています。
「一年を通じて時間のシステムが固定されていることは、睡眠の健康を優先し、私たちの日常のスケジュールを私たちの体の自然なリズムと一致させるのに役立ちますが、その時間は標準時でなければなりません」と、AASMの会長であるジェームズ・A・ローリー博士は述べています。
「標準時は私たちの体内時計と一致し、定期的に高品質で安定した睡眠を得る良い機会を提供し、私たちの身体的および精神的な幸福を向上させます」
時間の変更に対する対策
わずか1時間でも、体調に変化をきたす人はいます。AASMは、時計を1時間進めることに関連する疲労と眠気を最小限に抑えるために、以下のようなことを推奨しています。
- 時間変更前後の夜に少なくとも7時間の睡眠を確保すること。一貫した睡眠のリズムを維持することが重要です。
- 時間変更の数日前から、就寝時間と起床時間を15〜20分早く設定し、徐々に調整すること。
- 食事の時間や運動スケジュールなど、体が時刻を理解する日課を調整すること。
- 時間を変更する前日の早い時間に時計を1時間進め、通常通りの就寝時間に寝ること。