「物価高のシアトルでリタイアするには、少なくとも100万ドル以上(1月17日時点の為替レート 米1ドル=147.93円で1億4793万円以上)の貯蓄が必要」と言われるようになって久しく、今はそれをはるかに上回るリタイアメント資金が必要と言われています。
昨年8月に金融サービス企業チャールズ・シュワブ社が発表した調査結果で、アメリカ人は「快適なリタイアメントを送るには、180万ドルの貯蓄が必要」と考えていることがわかっていますが、今のライフスタイルを維持したリタイアメントは、十分な資金がある場合に限られることは、ここ数年の急激な物価上昇や株式市場の激しい変動で実感している人も多いでしょう。
アメリカでのリタイアメント
非営利団体ピュー・チャリタブル・トラスト(Pew Charitable Trust)は、「アメリカ人の多くは、経済的な必要性から65歳を過ぎても働くと考え、中にはまったく引退しないことを計画している人もいる。パンデミックはまた、失業や一時帰休で貯蓄を切り崩して生活しなければならなかった人々は特に、将来の展望に疑問を持つ結果となった」と分析しています。(ファイナンス情報サイト GOBankingRates)
でも、「どのぐらいの貯蓄があればいいのか?」という質問に答えるのは、簡単ではありません。アメリカは広く、州単位どころか地域単位で物価が違うので、リタイア後に住む場所によって支出額に大きな違いが出てくるからです。
リタイアメントに必要な貯蓄額が100万ドルを上回る州
ファイナンス情報サイト GOBankingRates によると、リタイアメントに必要な貯蓄額が100万ドルを上回る州は、全米50州のうち16州もあります。シアトルのあるワシントン州は、全米で6番目に高くなっています。
- ハワイ州 264万3757ドル
- マサチューセッツ州 192万2038ドル
- カリフォルニア州 172万0630ドル
- ニューヨーク州 154万8739ドル
- アラスカ州 154万7003ドル
- ワシントン州 136万1221ドル
- ニューハンプシャー州 135万9485ドル
- バーモント州 134万7331ドル
- メリーランド州 134万5595ドル
- オレゴン州 134万3858ドル
- コネチカット州 132万9968ドル
- ロードアイランド州 129万6979ドル
- メイン州 127万4407ドル
- ニュージャージー州 126万7462ドル
- アリゾナ州 126万2253ドル
- コロラド州 120万8429ドル
すべてのデータは2024年1月8日時点のもので、ミズーリ州経済調査情報センター(Missouri Economic & Research Information Center)による食料品、医療費、光熱費、交通費、住居費の生活費指数、労働統計局消費者支出調査から得た、食料品、医療費、光熱費、交通費、住居費の各支出項目における65歳以上の全国平均費用がベースになっています。すべてのデータは2023年12月27日時点のものです。算出方法についての詳細はこちらでご覧ください。
リタイアメント資金の計算方法
リタイアするのに必要な資金を貯めるには、目標を決めて、早く始めるに越したことはありません。Wall Street Journal は、次の3つの計算方法を紹介しています。
- 現在の年収の80%xリタイア後の生活年数を貯蓄:このルールに基づけば、退職前の年収が10万ドルだった場合、退職後の支出を賄うには年間8万ドルが必要ということになる。年収の80%に、予測されるリタイア後の生活年数をかけたものがリタイアメント資金となる。
- 67歳までに「年収x10」のリタイアメント資金を貯蓄:リタイア前の10年間と同じようなライフスタイルを維持するには、25歳から貯蓄を開始し、年収の15%を株式と債券の年齢相応の組み合わせで運用する。
- 4%ルール:年間支出予測額からソーシャル・セキュリティの給付金などを差し引いた金額が、リタイア後の生活に必要な年間支出額となる。4%ルールで、これを0.04で割ると、リタイアメントまでに貯蓄する必要がある金額を算出できる。例えば、年間支出45,000ドルからソーシャル・セキュリティの給付金20,000ドルを差し引くと、25000ドルとなる。これを0.04で割ると、625,000ドルになる。つまり、年間25,000ドル(4%)だけ引き出せば、625,000ドルのリタイアメント貯蓄で30年間もつことになる。また、3.3%ルールとするなら、25,000を0.033で割って757,575がリタイアメント貯蓄となる。
オンラインにはリタイアメント資金の計算ツールがいろいろあります。それこそ、年齢・現在の収入と貯蓄という最小限の情報を入力して単純にリタイアメント資金を計算するプログラムから、もっとさまざまな情報を入力して細かい計算をするプログラム、包括的な計画作りができるプログラム、公認ファイナンシャル・プランナーに相談できるサービスまであり、いったいどれがいいのかわからなくなってくるかもしれません。これから貯蓄を始めるなら、まずは、無料で登録せずに使える計算ツールで、ざっくり見てみてはいかがでしょう。