CDC(疾病予防管理センター)によると、アメリカでは今年に入ってから3月20日までに、ワシントン州を含む18の管轄区域で合計378件のはしか(measles)の感染が確認されています。
アメリカでの感染状況
3月20日時点で、アラスカ州、カリフォルニア州、フロリダ州、ジョージア州、カンザス州、ケンタッキー州、メリーランド州、ニュージャージー州、ニューメキシコ州、ニューヨーク市、ニューヨーク州、オハイオ州、ペンシルバニア州、ロードアイランド州、テキサス州、バーモント州、ワシントン州で感染者が報告されています。
2025年には3件のアウトブレイク(関連する3件以上の症例が報告されたケース)が報告されており、症例の90%(341件中378件)はアウトブレイクに関連しています。2024年全体では16件のアウトブレイクが報告され、症例の69%(285件中198件)がアウトブレイクに関連していました。
ワシントン州では、2月にキング郡で1人、3月18日にスノホミッシュ郡で1人の感染者が確認されています。
2025年の3月13日時点でのアメリカでの麻疹症例は次のとおりです。(CDC 発表)
総症例数
378件
年齢別
- 5歳未満:124件(33%)
- 5〜19歳:159件(42%)
- 20歳以上:86件(23%)
- 年齢不明:9件(2%)
予防接種状況
- 未接種または不明:95%
- 1回のMMR接種:3%
- 2回のMMR接種:2%
入院状況
- 17%(378件中64件が入院)
年齢別入院割合
- 5歳未満:27%(124件中34件)
- 5〜19歳:10%(159件中18件)
- 20歳以上:13%(86件中11件)
- 年齢不明:11%(9件中1件)
死亡者数
- 2名
- 1名の麻疹による確認済みの死亡、1名は現在調査中です。
はしかの予防接種率は地域や国によって異なりますが、アメリカではワクチン接種率が高い地域と低い地域があるため、発生リスクも地域ごとに異なります。接種率が低い一部の地域では、アウトブレイク(集団感染)のリスクが高まっています。
CDCによると、はしかの予防接種は、2回のMMRワクチン接種で約97%の効果があり、接種を受けていない場合、感染リスクが大幅に増加します。予防接種率が高いほど、集団免疫(herd immunity)が強化され、感染の広がりを防ぐことができます。そのため、予防接種を受けることが重要です。
この記事では、バージニア・メイソン・メディカル・センター 感染症科指導医の千原晋吾さんとワシントン大学医学部保健指標評価研究所研究員の千原泉に、はしかの症状や予防方法について解説していただきました。
ウイルスが空気感染で広がる感染症
はしかは、インフルエンザやCOVID-19と比べても感染性が非常に強く、ウイルスの空気感染で簡単に広がり、重症化する可能性がある深刻な感染症です。
はしかに感染した人が部屋からいなくなっても、ウイルスは約2時間にわたり部屋の中に残り、後から部屋に入った人でも感染する可能性があります。
免疫のない人がはしかのウイルスに暴露された場合、ほぼ9割以上の確率で罹患します。一人の麻疹患者が免疫のないグループと接触すると、平均12人から18人に感染させると言われています。
ワクチンが開発される前は、ほぼ全員が子どもの時にはしかに感染していました。しかし、感染すると、幼い子どもは死亡したり合併症を起こして後遺症が残るリスクがあり、ワクチン未接種の妊婦は流産や死産、早産のリスクが高まる病気です。
はしかの一般的な症状
ワシントン州保健局によると、一般的な症状は次のとおりです。
- 発熱(fever)
- 下痢(diarrhea)
- 咳(coughing)
- 鼻水(runny nose)
- 目の充血や目やに(red and watery eyes)
- 疲労感(tiredness)
感染から数日後、発疹(rash)が出始めます。通常は顔から始まり、全身に広がることもあります。はしかは通常、7~10日間続きます。
はしかの合併症
ワクチン未接種の5歳未満の子ども、20歳以上の大人、妊婦、白血病やHIVなどが原因で免疫機能が低下している状態の人、栄養失調の人、慢性疾患を持っている人は重症化し、肺炎や脳炎などの合併症や、失明、難聴、死亡などの深刻な場合もあります。詳細は「️CDC: Measles complications」「ワシントン州保健局:Measles」をご覧ください。
米国ではワクチン未接種の人がはしかにかかると、約5人に1人が入院することがわかっています。
- 子どものはしかによる死因で最も多いのが肺炎で、20人に1人は肺炎にかかるとされています。
- 子ども1,000人に1人の割合で脳炎(脳の腫れ)になり、けいれんを起こしたり、耳が聞こえなくなったり、知的障害が残ることがあります。
- 子ども1,000人に1~3人近くの割合で、呼吸器や神経系の合併症で死亡することがわかっています。
- MMRワクチンを接種していない妊婦が感染すると、早産や低体重児を出産する原因になることがあります。
ワクチンの有効性は95%以上
はしかは、ワクチンで予防可能な感染症であり、感染を予防するには、予防接種が唯一の確実な方法とされています。
はしかのワクチンは95%以上有効です。
でも、これは生ワクチンなので、免疫の低下している人はこのワクチンを受けることができません。
また、子どもの予防接種は生まれてすぐ始まりますが、はしか(Measles)、おたふくかぜ(Mumps)、風疹(Rubella)の3つのウイルス感染を予防するためのMMRワクチンの接種は、生後12〜15ヶ月に1回目の接種をし、4歳から6歳の間に2回目を接種することが推奨されています。
CDC は、米国から外国に旅行する場合、生後6ヶ月からはしかの予防接種を受けることを推奨すると発表しました。また、住んでいる地域全体ではしかが流行している場合、保健所は生後6カ月から11カ月の乳幼児への早期接種を推奨することがあります。かかりつけの小児科医に相談しましょう。

ワシントン州では、子供がデイケアや学校に入学する前に MMR ワクチンの予防接種を受けることを個人的な理由や信条を理由に避けることは認められていません。
アメリカのキンダーガーテンや学校に子供が通園・通学する場合、予防接種の記録を学校に提出する必要があります。基本的に、デイケアやプリスクールでも予防接種が必要とされます。また、大学でもはしかの予防接種証明の提出を義務付けているところもあります。

監修:
千原晋吾 バージニア・メイソン・メディカル・センター 感染症科指導医
千原泉 ワシントン大学医学部保健指標評価研究所研究員