英語辞書を発行するアメリカのメリアム=ウェブスター社は、2022年の「今年の単語」(Word of the Year)を発表しました。
メリアム=ウェブスター社によると、2022年において前年と比べ検索数が最も急上昇したのは、"gaslighting" という単語。検索数が1740%増加し、年間を通じて高い関心を集めたことがわかります。
"gaslighting" の意味は?
メリアム=ウェブスター社によると、"gaslighting" という言葉が20世紀半ばに初めて使われた時は、「被害者が、自分の考えや現実の認識、記憶の正当性を疑い、また、混乱、自信や自尊心の喪失、自分の感情や精神の安定性への不安、加害者への依存を引き起こす、通常、長期間にわたる心理的操作」と定義されていました。
しかし、「ここ数年は、特に個人的な利益を得るために、誰かをひどく惑わす行為や習慣という、もっと単純で広いものを指すこともあるようだ。この意味で、この言葉は、フェイクニュース、ディープフェイク、人工知能など、現代の欺瞞や操作に関連する他の用語と類似している」と指摘しています。
「間違った情報を与えて人を欺く、意図的な陰謀という考えから、"gaslighting" は、より大きな計画の一部である嘘を表現するのに有効だ。個人と個人の間に多い嘘をつく行為や、組織が関与することが多い詐欺とは異なり、"gaslighting" は個人と政治の両方の文脈に適用される。また、口語だけでなく、フォーマルな文章や技術的な文章にも適している」
"gaslighting" の由来は?
"gaslighting" は、1938年の戯曲とそれを基にした映画 『Gaslight(邦題:ガス燈)』 に由来しています。
ストーリーでは、夫に巧みに心理操作され、精神的に不安定になっていく若い女性が描かれます。世界的に有名なオペラ歌手だった叔母がロンドンの自宅で殺害された後、ポーラは叔母のようなオペラ歌手になるべくイタリアに向かいます。そこで出会ったグレゴリーと恋に落ちて結婚したポーラは、叔母が所有していたロンドンのタウンハウスで夫婦生活を始めますが、それから不思議な出来事が起こるようになります。
ポーラは当初は気のせいだと思うようにしますが、グレゴリーの巧みな言動によって、自分がおかしくなっているのではと疑い始め…。