今月12日、シアトルの小さな公園「ピース・パーク」にあった佐々木禎子さんの銅像が、何者かに足首の上で切断され盗まれているのが発見されました。
いったいなぜ?
すぐに思い浮かぶのが、銅の国際価格の高騰です。
シアトルを含むアメリカ各地で、銅を含む電線やEV車の充電ステーションのケーブル、銅像が盗まれる事件が増加し続けています。
シアトル警察が窃盗などの疑いで捜査していますが、この公園の建設に関わった団体は金属買取業者にも連絡したと話してくれました。
平和を願って建設された「ピース・パーク」
「ピース・パーク」は、ワシントン大学のキャンパスからそう遠くないところにある、小さな公園です。
荒れ果てていた土地を、シアトル市民とクエーカー教徒が何年もかけて整備し、広島への原爆投下から45年後の1990年8月6日に完成しました。
その中央に建立されたのは、折り鶴を持った右手を上にあげた女の子の銅像『Sadako and the Thousand Cranes』。
モデルとなったのは、2歳だった1945年8月6日に米国が広島に投下した原子爆弾で被爆し、12歳だった1955年に白血病で亡くなった佐々木禎子さんです。
禎子さんは、広島の広島平和記念公園にある原爆の子の像のモデルにもなった方です。
ワシントン大学の森林学教授で平和活動家であり、広島名誉市民でクエーカー教徒だったフロイド・シュモー博士(Floyd Schmoe:1895-2001)が、1988年に授与された広島平和賞の賞金5000ドルを投じて制作されました。
制作したのは、シアトルのアーティスト、ダリル・スミスさんです。
以来、市民に親しまれ、いつもたくさんの折り鶴が飾られていました。
地元市民「とても悲しく思う」「早く戻されてほしい」
この銅像で平和を祈る催しを行ってきた University Friends Meeting のオフィスマネジャー、コリーン・キムセイラブさんに、電話でお話を聞きました。
「警察への通報や金属買取業者への連絡を終えた今、次に何をするべきか検討しています」
15日に銅像の前で取材していると、自転車で通りかかったダフネ・シェブルさんが、「とても悲しく思う」と話してくれました。
「ほぼ毎日、この公園の前を通って銅像を見ていて、折り鶴を捧げている人々を見てきましたし、禎子さんの生を讃える素晴らしい行為だと思っていました。早く銅像が戻されてほしいです」
禎子さんの銅像は2003年に左腕が切断される破壊行為にあいましたが、寄付金で修復されています。
7月16日:公園と銅像の完成までの経緯を修正し、記事全体を再編集しました。