シアトルのウォーターフロントで進行中の建設工事。その正体は、シアトル水族館の最新アトラクション、『オーシャン・パビリオン』です。2024年8月29日にオープンすることが発表されたこの新施設では、いったいどのような驚きが待っているのでしょうか?
地球上で最も多様な海洋地域への旅
オーシャン・パビリオンは、総工費が1億6千万ドル、敷地面積が約5万平方フィートで、サステナブルな方法で調達された100種類以上の熱帯魚、無脊椎動物、植物が3,500匹も飼育され、「海のアマゾン」(Amazon of the ocean)と呼ばれるほど海洋生物の多様性に富んだコーラル・トライアングルの生態系が再現されています。
このパビリオンの目的は、「最新のデジタルストーリーテリングを通じて、地球がたった一つの海を共有していること、私たち人間はその海と運命を共にしていること、そして、協力すれば海を守るために変化をもたらすことができることについて、理解を深めること」。
「20年以上にわたる構想が実現するのを目の当たりにするのは驚異的です」と、シアトル水族館の社長兼CEOのボブ・デビッドソン氏は16日付けのプレスリリースで述べています。
「このような歴史的な瞬間を迎えることができるのは、長年にわたって数千人の人々の献身と絶え間ない努力のおかげです。彼らが新しいオーシャン・パビリオンを構想から現実にするのを助けてくれました。今、完成を目前に控える段階まで来ました。来館してくださる方々がこの魔法を体験するのが楽しみです」
没入型の展示でサメ、エイ、マングローブの木などと対面
- The Leaf(リーフ): 5つの窓を備えたこの多層のリーフ生態系では、インド太平洋のヒョウザメ(leopard sharks)、マダラトビエイ(spotted eagle rays)、リーフフィッシュなどを見ることができます。水族館のダイバーによる生態系の保存と海洋生物の健康維持についての解説も楽しめるようになっています。
- The Archipelago(群島): 小さなエイや群れをなす魚が木の根のような水槽の中で泳ぐ、明るく緑豊かなマングローブの森に入り込みます。反対側にはサンゴ礁を下から見えるようになっています。中心にはカルスト(岩石)がそびえています。
- At Home in the Ocean(生息海域): 2024年秋オープン予定。クマノミ(clownfish)、タツノオトシゴ(seahorses)、ハダカカメガイ(leaf scorpionfish)などが生息する海を再現しています。コーラルリーフを体験できる通り抜けスペースで、健康なサンゴ礁について学ぶことができるようになっています。
地球の一つの海とのつながりを強調
- One Ocean Hall(ワン・オーシャン・ホール): 光あふれるアトリウムでは、360度のデジタルストーリーとインタラクティブディスプレイが楽しめます。
- アートとストーリー:先住民アーティストによる、人間と海のつながりを表したインスタレーションを見ることができます。海洋保全に取り組むコミュニティの物語のインスタレーションも展示されています。
- パブリック・ルーフ:2024年秋にオープン予定。原生植物、パブリックアート、目の前に広がるエリオット湾、そして南方にワシントン州の最高峰マウント・レーニアを眺められるスペースです。パイク・プレース・マーケットとウォーターフロントを簡単に行き来できるようになります。
豆知識
- 総面積は約50,000平方フィートで、シアトル水族館のキャンパスが約1.5に拡張されます。
- 年間の来館者数は、現在の1.5倍に当たる120万人が予想されています。
- リーフのセクションには幅17.5フィート(幅5.3m)の大きな窓があります。
- リーフの観覧窓は幅30.5フィート(9.3m)、高さ23フィート(7m)です。
- 最大の生息地であるリーフには、約50万ガロンの海水が使われます。
- 建物の効率的なクローズドループシステムにより、96%の海水が建物内にとどまります。
- オーシャン・パビリオンは化石燃料を使用していません。
- オーシャン・パビリオンはLEEDゴールド認証を取得する予定。International Future Living Institute からのゼロカーボン認証も目指しています。
- 水族館の1億6000万ドルの資金調達キャンペーンは88%完了しています。キャンペーンは個人の慈善活動と政府の資金を合わせたもので、シアトル市の総貢献額は3,400万ドル。最終的に、この建物はシアトル市の所有となります。
- 建築は LMN Architects、展示デザインは Thinc Design、建設は Turner Constructionが手掛けました。
シアトル水族館のミッションは海洋環境の保護を促すことで、これからもそれが受け継がれていくには、地球規模で考え、太平洋北西部の海を越えて考える必要があります。
地球の海は繋がっており、それを守るためには、私たち一人ひとりがどのように行動しなくてはならないのか ー このパビリオンを訪れることで、改めて海の大切さについて考え、行動に繋げる機会になるかもしれません。