シアトル水族館の新館『オーシャン・パビリオン』がついにオープンしました!
この新施設は、美しい自然と都市の融合を目的に進められてきたシアトルのウォーターフロント改造プロジェクトの一環として、約20年にわたる構想の末、パンデミック前に着工されました。約5年の工期と総工費約1億6千万ドルをかけて完成したこのパビリオンをひと足さきに見学してきたので、その魅力を簡単にご紹介します。
本館のすぐそばにオープン
新館『オーシャン・パビリオン』は、ウォーターフロントのピア59にあるシアトル水族館の本館のすぐそばに完成しました。
正面入口の頭上には “The Oculus” と呼ばれる巨大なガラス窓があり、インド太平洋のサメやエイが泳いでいるのが見られるようになっています。
扉を開けて入ったところはギフトショップとチケットカウンター(チケットは本館でも購入できます)。この日はまだセットアップの途中でした。
先住民ガラス・アーティストのダン・フライデーによるカラフルなガラスの魚たちが、パビリオンの中心まで続くスロープの天井を彩っています。
コーラル・トライアングルの熱帯水域を再現
シアトル水族館の本館は、シアトルの位置する米国北西部の海洋生物が主役ですが、新館『オーシャン・パビリオン』の主役は、地球上で最も多様な生物が生息しているインドネシア、フィリピン、マレーシア周辺の熱帯水域のカラフルで生命力に満ちた海洋生物です。
オーシャン・パビリオンでは、特に気候変動が世界の海洋生物に与える影響や、その保護の重要性を強調しています。
The Reef の横にある子ども向けのエリアは洞窟のよう。海や生物についてのいろいろな問いが書かれているので、大人も子どもも一緒に考えながら楽しめそうです。
この熱帯水域はコーラル・トライアングル(Coral Triangle)として知られ、「海のアマゾン熱帯雨林」(Amazon rainforest of the ocean)とも呼ばれるそうで、敷地面積約5万平方フィートの館内には、サステナブルな方法で調達された100種類以上の熱帯魚、無脊椎動物、植物が3,500匹が飼育されています。
- The Leef(リーフ): 新館の1階にある最大のエリアで、入口からスロープを歩いていくと最初に見られます。約50万ガロンの水槽には手作りされた1250個もの珊瑚が配置され、インド太平洋の海域でしか見られないヒョウザメ(leopard sharks)、マダラトビエイ(spotted eagle rays)、アカエイ(blue-spotted stingrays)、リーフフィッシュなどを見ることができます。ここでは、水族館のダイバーによる生態系の保存と海洋生物の健康維持についての解説も行われる予定です。
- The Archipelago(群島): 2階のエリア。移植されたばかりのマングローブの木々と大きな岩石が中心にあり、サンゴ礁が下から見えるようになっています。
- At Home in the Ocean(生息海域): 子ども向けのエリアで、クマノミ(clownfish)、タツノオトシゴ(seahorses)、ハダカカメガイ(leaf scorpionfish)などが見られます。コーラルリーフを体験できる通り抜けスペースは、展示が子どもの目の高さに来るようにデザインされています。
地球に一つしかない海との一体感を高めるデザイン
館内の展示のそばには、タッチスクリーン式のディスプレイ、オーディオやビデオを使ったディスプレイが設置され、インタラクティブで没入型の技術が駆使されています。
1階の中心には、『One Ocean Hall』という、円形の吹き抜けスペースがあり、コーラル・リーフの熱帯水域や、ピュージェット湾のケルプフォレスト、またはサリッシュ海でクジラと一緒に泳いでいるかのような感覚に陥るような映像が12台のプロジェクターを使用して周囲の壁360度と床に映し出されることになっています。
この時はまだ最終調整中でしたが、実際に体験してみたいと思わせられました。
2階では、水族館の生物がどのように飼育されているか舞台裏を垣間見ることができるほか、海洋生物について詳しく学べる教室のようなスペースもあります。今後、さまざまなプログラムが企画されています。
豆知識
- 総面積は約50,000平方フィートで、シアトル水族館のキャンパスが約1.5に拡張されます。
- 年間の来館者数は、現在の1.5倍に当たる120万人が予想されています。
- リーフのセクションには幅17.5フィート(幅5.3m)の大きな窓があります。
- リーフの観覧窓は幅30.5フィート(9.3m)、高さ23フィート(7m)です。
- 最大の生息地であるリーフには、約50万ガロンの海水が使われます。
- 建物の効率的なクローズドループシステムにより、96%の海水が建物内にとどまります。
- オーシャン・パビリオンは化石燃料を使用していません。
- オーシャン・パビリオンはLEEDゴールド認証を取得する予定。International Future Living Institute からのゼロカーボン認証も目指しています。
- 水族館の1億6000万ドルの資金調達キャンペーンは88%完了しています。キャンペーンは個人の慈善活動と政府の資金を合わせたもので、シアトル市の総貢献額は3,400万ドル。最終的に、この建物はシアトル市の所有となります。
- 建築は LMN Architects、展示デザインは Thinc Design、建設は Turner Constructionが手掛けました。