春の叙勲で旭日双光章を受賞したシアトルの日本食レストラン経営者で寿司職人の加柴司郎さんに対する伝達式が、2日、在シアトル日本国総領事公邸で行われました。加柴さんは、1966年に25歳で渡米して以来、米国北西部に地産地消を基本とする江戸前寿司を伝え続け、次世代の日本食調理人の育成に貢献してきたパイオニア。式典には加柴さんのご家族、弟子、同僚、友人らが多数出席し、叙勲を祝いました。
1941年に京都に生まれ、高校卒業から約7年にわたり、東京・銀座の一流店『与志乃』で江戸前寿司の修行を積んだ加柴さん。幼い頃から憧れていたアメリカに1966年に移住し、シアトルの和食レストラン『田中』で約4年働いた後、戦前から営業する『まねき』 にてシアトルで最初の寿司カウンターの設置を実現しました。以来、地元の海や山でとれる旬の食材を使うという江戸前寿司の伝統を伝え続けています。
パイオニアとして主要メディアに取り上げられ、ジェームズ・ビアード賞にも3度ノミネートされるなど、全米に知られる存在となったことについて伺ってみると、加柴さんは「四季があり、食材が豊富なシアトルだからこそできたこと」と話してくれました。
今日は、夢にも思わなかったような日になりました。60年近くにわたり私にチャンスを与え続けてくれたシアトルのおかげです。こんなにいい場所で、こんなに長い間、寿司を握ることができるなんて幸せな人生です。日本の食文化では、ローカルで旬のいいものをご提供することが大切ですが、シアトルではそれができます。そして、そうすることで、お客様にもっと喜んでもらうことができます。お店に来てくださるアメリカ人の方は本当によく学ぼうとしてくださる。こちらも寿司を初めて食べるという方によく理解していただけるよう工夫して、またご来店いただきたいと思いながらやっています。こんなにいいところで、こんなチャンスを与えられたことを喜んでいます。
加柴さんは、2019年に農林水産省から日本食普及の親善大使に任命され、2021年には農林水産大臣から第15回日本食海外普及功労者表彰を受賞。2011年に『Shiro: Wit, Wisdom and Recipes from a Sushi Pioneer』を出版しています。