シアトル唯一の日系新聞、北米報知。 今月は編集長の楠瀬明子さんにお話を伺いました。
※この記事は1999年5月に掲載されたものです。
夫の転勤でアメリカへ
楠瀬さんがアメリカへ来られたきっかけはなんですか。
私がアメリカに来たのは、夫がアメリカの大学院で勉強をする事になったからです。まず一足先に、夫が渡米。1人も知人がいなかった大学院のカフェテリアに入った夫は、”Hi. I’m Kazu Kusunose. I’m married.” と自己紹介したのです。この真面目な男性ぶりに、学生達がすぐに好感をいだき、女子学生達のボディガードとなり、学生達が私たち夫婦の生活セットアップを助けてくれました。
幼稚園でのボランティアが土台
それから編集長になられるまでにはどのような経緯があったのでしょうか。
あの頃初めて外国に来た私にとって、すべてが新しい事だらけ。でも、今の私の土台になったのは幼稚園でのボランティアでした。こちらの幼稚園は父兄が担当を持ち、積極的に参加するシステムになっているでしょう?そこで私は初めて 『分担制』 という、アメリカの人を動かすシステムに出会い、感心し、そして全体を見る目を養ったのです。新聞というものは、いろいろ細かな部分を担当している人達が一緒になって、1つの物を作り上げていく作業の結果です。編集長には、それをリードしていく責任があります。そこで全体を見る目が必要になって来ますね。まさに幼稚園での修行が生きています(笑)。だから私の学歴を聞かれたら、『幼稚園は出てるんですけどね・・・』 って答えるんですよ。その幼稚園で通訳をするまでになり、そして今は編集長として、創刊以来の 『日本語を母国語とする人のための、情報・コミュニケーションの場』 という理念を変えることなく、多くの読者に支えられて約半世紀になりました。
最後に、英語を学ぶことについてご意見をお聞かせ下さい。
外国人であることは、アドバンテージだと考えます。というのは、こちらの人達が知らない事を知っているからです。私の経験から言えば、もちろん他の国の事や新しい事を知りたくない人もたくさんいます。でも、心がそういう事に向いている人も、たくさんいるのです。そういう人に出会えたら、笑顔と一言、”Hi!” で始めましょう。私はいつもそうしています。英語が下手でもいい。一生懸命話していれば、10人に1人はあう人が出てくるかも。そうしたらそこから広がっていきます。そして、ボランティアなど、今、自分ができる事からやっていくのです。せっかく自分の意志でアメリカまで来るという大きなジャンプをしたのですから、もう1つ小さなジャンプをしてみましょう。
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北米報知
掲載:1999年5月