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佐々木 富和さん ワシントン大学教授

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ワシントン州最大規模の大学、ユニバーシティ・オブ・ワシントン、通称UW。 今回は、そのUWで有機化学を教えておられる佐々木教授に、勉強とは、そして、日本人がアメリカ留学で成功するには、などについてお話を伺いました。
※この記事は1999年2月に掲載されたものです。

佐々木教授は日本で大学院を卒業された後、こちらに来られたということですが?

そうです。京都大学大学院で博士号を取得してから、アメリカに来ました。日本では、修士号を取得してから会社の研究室などに就職する人が多いのですが、こちらでは博士号を取得し、2~3年博士研究員をしてから、化学会社や製薬会社に就職、または私のように講義をしながら独自の研究を続けたりするようです。

講義と研究を同時に進行されているのですか。

現在、有機化学のクラスを週に3回教えています。それと同時に、医療材料の研究をしています。心臓の弁や人口皮膚といったものは、ある一定の時間を過ぎると、体が拒否反応を起こして離れてしまったりします。この研究では、それをさらに改良していく方法を模索しています。

私は化学は非常に苦手だったので、想像もつきませんが・・・。

うーん、日本では、化学に限らず、最初のルールを覚える時点で、かなり楽しくない教え方をする傾向がありますね。ですから、せっかく才能があっても、嫌いになってしまう可能性が高いです。でも、何事もルールを覚えると、その向こうにある楽しさを満喫できます。

例えば、スポーツがそうですね。ルールを知らないと、野球を見ていてもおもしろくない。醍醐味がわからない。でもルールを覚えると、非常に楽しいものになったりするでしょう?

ルールを理解した後の化学のおもしろさとは、安いもの、いらないものから役立つものを作ることができることでしょうか。昔で言えば錬金術、現代では安い石油から医薬品を使ったプラスチックの製造ですね。小さな分子を組み合わせて、ああでもない、こうでもない、なんて言いながら、新しいものを作り出していくのです。ですから、私は、『化学者』 ではなく、『分子デザイナー』 と呼んでいただきたいと思います(笑)。

アメリカで化学を専攻している日本人学生はどうですか?

この大学は、多数の日本の大学と姉妹校なので、日本人の学生がたくさん勉強しています。僕の見たところ、クラス内でも非常に活発で、いろいろ質問をしてくる日本人学生もいます。

ディスカッションなどのコミュニケーション能力が必須とされる文系と違って、理系は数式や実験を通して、言葉が少なくても通じる部分が多いです。これは、英語に問題があったりする理系専攻者にとってはメリットと言えますね。

やはり言葉が障害になりますか。

この国は個人を尊重する社会ですから、自分を表現する為の言葉は非常に大事です。日本人の場合、やはり言葉が障害になって、どうしても消極的になってしまいがちです。高校を終えた頃ならまだしも、年をとるにつれて、言葉の習得には難しさが増します。発音に関しても、若い頃から来ないとネイティブみたいになるのは難しいでしょう。

でも、発音がネイティブみたいにならなくてもいいのです。要は中身なのです。ですから、発音が下手だと思っても、どんどん話すべきです。リスニングはテレビなどで勉強するのが良いと思いますが、しゃべるスキルはやはり自分で積極的にならないとついてきません。黙っていてはいつまでたってもしゃべれるようになりませんよ。

そのような問題がある日本人学生をサポートする為、クラスではどんな事をされていますか?

私は、グループ・スタディをすすめています。1人で勉強するよりも、みんなで勉強する方がいろいろな考えを聞けておもしろいし、「なるほど」と、物事をまったく違う面から見ることができたりしますね。

こちらでは小さい頃から自分で創造していく力をつける教育をしているところがあります。つまり、自分でプロポーザルを書いたり、ペーパーを書いたり、とにかく自分でクリエイトしていかなければならない。そういう事を苦手とする一般の日本人には、とてもいい刺激になるはずです。白人に慣れることができなければ、同じアジア系の学生と勉強するのもいいでしょう。

とにかく、 こちらの大学は勉強をするところですから、一緒の目的に向かって努力する土壌があります。みんなで一緒にやれば乗り越えられるものですよ。

【関連サイト】
University of Washington
University of Washington Department of Chemistry

掲載:1999年2月

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