アメリカ本土では日本に一番近く、親日的な人が多く、日本とビジネスをしている企業が多いシアトル。また、高校や大学で日本語を習い始め、英語と日本語の両方で仕事ができるまでになった人も少なくありません。いったいどんなふうにしてそんな高い日本語力を身につけたのでしょう?そこで今回は、シアトルで働く社会人4人に、どんなふうに日本語と出会い、学んできたのか、日本語の何が好きなのか、そして日本語の勉強方法について聞いてみました!英語を学ぶ時にも応用できるヒントがありますよ!
ディラン・ローズさん
幼いころから日本のアニメやゲームに親しみ、大学で日本語とコンピューター科学を学ぶ。大学卒業後、JETプログラムに参加し、山梨県の富士吉田市に3年間滞在。東京の目黒にあるスクウェア・エニックス社での5年間の勤務を経て、現在はレドモンド市の任天堂アメリカのプロダクトマネージャー。普段の生活でも日本語を使用することが多く、毎春シアトルで開催される北米最大のアニメコンベンション『サクラコン』 でボランティア通訳も務めている。
普段は日本語をどのように使っていますか?
仕事はレドモンド市にある任天堂社でプロダクトマネージャーを務めています。任天堂本社は日本の京都市にあるので、本社とのコミュニケーション(電話、メール、チャット、テレビ会議など)はほとんど日本語です。
妻は日本人なので、家庭でも日本語で会話しますし、間違いは妻が正してくれます。
日本語との出会いについて教えてください。
こどものころから日本のアニメが好きでしたね。5歳のころにテレビで「科学忍者隊ガッチャマン」(英語タイトル:Battle of the Planets)と、「宇宙戦艦ヤマト」(Space Cruiser Yamato)を見た記憶があります。当時アメリカでは、もちろん英語で放送されていましたし、日本の作品だと全然分からなかったが、ティーネイジャーになってから「風の谷のナウシカ」、「北斗の拳」、「アキラ」などの VHS テープを英語字幕で見るようになり、声優さんの声を真似ていました。1985年に任天堂ファミコンのアメリカ版「Nintendo Entertainment System」を購入し、ゲームにも嵌りました。その時はまさか任天堂の社員になるとは想像していませんでした。
私の高校には日本語の授業は無かったが、大学一年生から日本語の授業を受けました。1995年、二十歳の時に株式会社小松製作所(Komatsu Ltd.)の研修生として初めて日本を訪問して日本語を実用しました。
日本語の何が魅力ですか?
やっぱりその言語の国に対して何かの愛着があるのは大事だと思います。日本はアニメとゲームだけではなく、国の美しさ、長い歴史と伝統、料理のおいしさもすばらしいです。高校ではスペイン語を勉強したが、やっぱり愛する日本の作品を理解できるようになりたかったし、日本の映画、漫画、アニメ、テレビ番組、漫才も理解できるようになったのはすごく嬉しかったです。
ご自分にとって、どのようなチャレンジがあり、また、どのような勉強法が効果的でしたか?
大学での日本語授業は、最初は非常に大変だったが、先生のおかげで何とか能力が成長し、4年間勉強することができました。平日は毎日日本語の授業があり、月・水・金は授業、火・木は練習でした。週末はラボで声を出しながら日本語レッスンを聞いていました。わからないことが山ほどあったが、先生のおかげでたくさんのハードルを乗り越えることができたので、大学の中出先生(Mariko Nakade-Marceau)に心から感謝しています。
コツのようなものはありますか?
勉強中に落ち込んであきらめそうになることがあるので、少しでも成功例があることが重要です。例えば日本人の友達に自分がしゃべった日本語が通じたり、映画の日本語が少し理解できるようなことで、自分も「よし、もう少しがんばろう!」と感じました。
今も日本語をもっとうまくなろうと努力されている場合、どのような勉強法をとっていますか?そのモチベーションはどこから?
日本語能力試験の一級に合格しましたので、最近は勉強というより実用です。日本語を毎日会社で使っているので、「働くのは日本語の勉強になる」感じです。しかし仕事だけだと新しい単語を学ぶチャンスが少ない場合があるので、日本人の友達とよく日本語で会話します。また趣味を兼ねたボランティアで、毎春イースターの週末にシアトルで開催されるアニメ・コンベンションの Sakura-Con で日本人ゲストさん(クリエーター、声優さん、漫画家、アーティストなど)の通訳をしています。
日本語について、今はどのようなことにわくわくしますか?
日本の料理と作品のファンが世界中で増えていること、日本のスポーツ選手の活躍など。2020年の東京オリンピックなど、今後の展開を考えると、本当に「日本語を勉強してよかった」といつも感じています。新しい流行語(「育メン」とか)を学ぶのも好きで、駄洒落や親父ギャグ(「忍者は何人じゃ」)なども大好きですね。友達が結構嫌がりますが。
あなたが(日本語を母国語としない人について)「この人は日本語が上手だ」と思うポイントは?これができるなんてすごい!というポイントは?
しゃべり方を考えると、やっぱり発音が大事ですね。英語では単語の部分的な強調が多いので、アメリカ人が日本語をしゃべるときはその癖が残る場合があります。「この人と電話で日本語で話したら、日本人にしか思えない」と思う人はすごいです。
一方、「十人十色」といいますが、やっぱり人によってさまざまな強みがあります。大学時代、日本語授業で漢字がとても上手い友達がいて、彼は漢字をすべて理解するために日本語だけでなく中国語も勉強していました。私はどちらかというと人と会話することが好きな方でした。
インターネットがある今は、生の日本語に触れる機会が比べものにならないほど増えましたが、あなたなりのそれでも変わらない勉強法、語学に対する考え方はありますか?
大学のころにも今の YouTube がほしかったですね!当時のアメリカは日本語の映像が手に入ると貴重なものでした。でも、今でも日本語を勉強する方法はそんなに変わらないと思います。手で字と作文を書くことも重要ですし、人と会話することも重要です。電子辞書や教育ゲームで面白くなったところもあるが、基本は変わらないと思います。
日本に最近行ったのはいつですか?あなたが「日本に行ったらこれは必ずやる」ということにはどんなことがありますか?
今年は3月と5月に出張で京都の本社を訪問しました。先月は一日だけ自由な日がありましたので、高速バスで京都から徳島まで行って、鳴門海峡や阿波踊りを見て、徳島ラーメンを食べて、とても感動しました。
大学卒業後に日本政府の JET プログラムに参加し、山梨県の富士吉田市に3年間住んでいたので、吉田のうどんが大好きです。最近の出張で、京都に着いた日の夕飯はラーメンを食べますね。京都にある「一蘭」と「五行」というラーメン屋さんはとても美味しいです。とんかつ、お好み焼き、たこ焼きも大好物です。
日本に行く前はカラオケが苦手で緊張しましたが、任天堂社に入社する前、東京の目黒にある(FF やドラクエなどの)スクウェア・エニックス社に務めた5年間、退社後に何回もスクエ二社員達と一緒にカラオケに行っているうちに大好きになりました。日本から帰ってきてもシアトルの Rock Box などへ歌いに行くし、「ガッチャマン」の歌をよく歌いますね。「地球はひとつ」という歌詞が大好きです。
ブライアン・ラックさん
Brak Software, Inc. 経営。高校時代に正式に日本語を学び始め、独自に日本語の教科書を制作するほど日本語にのめりこむ。ロータリーのプログラムで九州の高校に留学し、大学進学後の2006年にマイクロソフトに入社するが、2010年に独立し、現在に至る。主に日本語学習ソフトウェア『Human Japanese』の開発を行い、ウォールストリートジャーナルやロサンゼルスタイムズ、ハフィントンポストなどでも高く評価されている。最近では新しい学習コンテンツ『Satori Reader』を発表し、さまざまな角度から日常で使われている日本語を習得するための豊富なコンテンツを展開している。
【公式サイト】 humanjapanese.com www.satorireader.com
普段は日本語をどのように使っていますか?
外国人に日本語を教えるソフトウェアの開発をしていますので、日本語は毎日使っています。妻も日本人なので、普段は家でも日本語で話しています。
日本語との出会いについて教えてください。
子供の頃から外国について興味がありました。特に自分の周りにあるものとまったく違うものに興味があったので、アジアにとても魅力を感じました。日本語を勉強したいと思っていたときに、たまたま、私が通った高校で日本語のクラスがあったので、日本語を学び始めました。それが日本語との初めての出会いでした。
ちょうど2年ほど日本語を勉強したときに、交換留学のプログラムのことを知り、申し込みました。ロータリークラブの交換留学生として選ばれ、九州に行かせていただきました。これが生きた日本語と日本文化に触れた初めての機会でした。
日本語の何が魅力ですか?例えば、他の言語も勉強してみたけれども日本語を選んだという場合、他の言語と比較してご説明していただけるとありがたいです。
英語と違うところが好きです。文法も、表現も、書き方も、何かも違います。ですから、表面のことを覚えるだけでなく、もっと深く考えなければいけいません。例えば、英語ではaとtheというとても大切な単語がありますが、スペイン語でもほぼ同じ意味の単語がありますので、スペイン語を勉強する場合は、その単語の意味について、深く考える必要がないでしょう。英語と大体同じ使い方で行けばいいからです。
しかし日本語では、100パーセント相当する語がないので、「そもそもaとtheとはどういう意味なんだろう?」などと、自分の言語についても普段考えないことを考えるきっかけになります。その一方で、自分の言語にはない、とても大切な言葉や概念が日本語にはありますので、それらを学ぶためには、また深く考えなければいけません。そうすることによって、日本語と英語だけでなく、言語とは何だろう、と考えるチャンスになります。それが面白いと思います。
ご自分にとって、どのようなチャレンジがあり、また、どのような勉強法が効果的でしたか?コツのようなものはありますか?
学生の頃は、勉強する時間がたくさんありました。でも、今は仕事や家族があるので、継続的に勉強するための時間を取ることが難しくなりました。言語というものは、毎日使わないと衰えていくものです。特に、日本に住んでいないと日本語に触れる機会が減るので、その解決策として、意識的に勉強する時間と機会を作らなければいけないと感じます。
最近私がやっているのは、日本の小説を読むことです。毎日読めるページ数は、たとえ10ページだけでも、一年間で3,600ページ以上になります。大切なのは、毎日、少しずつでも、勉強を続けることです。これをすることによって、普段日本語で会話するときも、スムーズにいろんな言葉や言い回しが出て来るようになりました。
今も日本語をもっとうまくなろうと努力されている場合、どのような勉強法をとっていますか?そのモチベーションはどこから?
小説を声に出して読むようにしています。小説のいいところがいくつかあります。まず、テレビと違って、自分のペースで読むことができます。声に出して読むなら、発音の練習にもなります。また、わからない単語や表現があれば、ゆっくり辞書を使って調べることもできます。
小説は物語ですから、ニュースの短い記事と違って、読めば読むほどストーリーが面白くなって、どんどん次のページに進みたくなることもモチベーションを保つ助けになります。ぜひお勧めします。
また、日本語について、今はどのようなことにわくわくしますか?
適確に物事を描写する新しい表現を学んだときは嬉しいです。
あなたが(日本語を母国語としない人について)「この人は日本語が上手だ」と思うポイントは?これができるなんてすごい!というポイントは?
日本人と、日本語でうまく冗談を交わしている人を見ると、すごいなと思います。
インターネットがある今は、生の日本語に触れる機会が比べものにならないほど増えましたが、あなたなりのそれでも変わらない勉強法、語学に対する考え方はありますか?
確かに、インターネットのおかげで日本語に触れるチャンスが膨大に増えました。でも、その一方で、自分だけの世界に引きこもることが以前よりも可能になりました。たとえば、私が初めて日本に住んでいたときは、インターネットはまだあまり普及していませんでした。アメリカの友達には、手紙を送っていましたが、その返事が戻ってくるのに数週間かかりました。それ以外の毎日は、一日中、日本語を使うしかありませんでした。
でも、今は違います。例えば日本に留学していたり、日本に滞在したりしている人でも、電車に乗ると、みんな自動的に携帯電話を出します。そして、ちょっと疲れていると、英語を母国語とする人は、自然と英語のニュースやメールを読んでしまう傾向があります。つまり、せっかく日本にいるのに、自分だけ英語の世界に入ってしまうことになるのです。これはインターネットのすごく残念なところだなと思います。
やはり、言語は人と人とのコミュニケーションですから、できる限り、誰かと話すのが一番いい勉強法だと思います。それができないときは、本やインターネットでの日本語のテレビ鑑賞やニュースを読むことなどが、とてもいい勉強になると思います。
日本に最近行ったのはいつですか?あなたが「日本に行ったらこれは必ずやる」ということにはどんなことがありますか?
前回日本に行ったのは去年の秋です。妻の両親が茨城に住んでおり、一年に一度は必ず行っています。私が特に好きなことは、日本の田舎で散歩をすることです。セブンイレブンで買ったおにぎりを食べて田んぼを眺めながら歩くのが、この上なく幸せなひと時です。
カレン・ソールさん
高校時代にロータリーの交換留学で九州で1年間ホームステイをし、オレゴン大学で日本語と日本文学を学ぶ。1992年から1994年までJapan Teaching and Exchange(JET)プログラムで国際交流員として大阪府庁に勤務。2003年にスターバックス本社に就職し、現在はグローバル・トレード・リスク部門のコンプライアンス・スペシャリストとして勤務している。
普段は日本語をどのように使っていますか?
ラッキーなことに、職場では日本人の同僚がいて、日本語で日常会話ができます。
それ以外には、シアトルに日本人のお友達がいて、遊びに行くと日本語で会話できる機会はいくつかあります。そして一昨年ぐらいからプライベートでヨガを教え始めて、生徒さんは全員日本人なので、日本語を少し加えて教えています。
日本語との出会いについて教えてください。。
高校時代にロータリー交換留学生として九州で一年間ホームステイをしました。ホームステイは「アシキタ」という町、かなり田舎でした。当時アメリカでは日本の文化などは今ほど知られていませんでした。行く前に日本語をちょっと勉強しましたが、最初は「おはよう」と
「ラジオ」ぐらいしか覚えませんでした。半年ぐらいたったら、やっと日常会話ぐらいで
きるようになりました。
日本語の何が魅力ですか?例えば、他の言語も勉強してみたけれども日本語を選んだという場合、他の言語と比較してご説明していただけるとありがたいです。
人間関係は日本の文化の基本で、言語と礼儀正しさの知識によって、日本の社交文化をよく理解できるのは日本語の勉強を通じてひとつの魅力だと思います。
例えば、やりとりのパターンを通じて、人間関係がすぐわかります。上司・部下、先生・生徒、業者・客、または家族の関係は、その「決まった」やりとりのパターンからすぐわかります。
ご自分にとって、どのようなチャレンジがあり、また、どのような勉強法が効果的でしたか?コツのようなものはありますか?
16歳で日本語と出会って、日本語を話している期間は話していない期間より長いです。「若い」頭の柔軟性のおかげで外国語を覚えるのが早く、ゲームをしているように楽しく覚えられました。しかし、日本で生活をして、日常生活で毎日日本語に触れることができたのは一番効果的だったでしょう。
日本人のお友達と会話をしたり、テレビを見たり、どんなに「普通」なことをしても、勉強になりました。大学での専攻は日本語と日本文学だったので、「フォーマル」な勉強で「正しい」日本語を身につけることができました。また、2008年~2011年は、ワシントン大学のTechnical Japanese Program(TJP)で勉強し、非常に効果的でした。資格を得るため、キャップストーン・プロジェクトが必須で、日本語でのリサーチ、論文、プレゼンテーションをし、それまでに習得した日本語の能力やスキルをさらにレベルアップしました。苦労しましたが、
ハードなトレーニングと同じように、脳に「いい汗」をかきました。
今も日本語をもっとうまくなろうと努力されている場合、どのような勉強法をとっていますか?そのモチベーションはどこから?
セカンド・ランゲージをせっかく身につけても、そのスキルを失ったら大きな損失だと思っています。私にとって、ヨガをするのと同じように、日本語で話すことは生活の一部として考えています。毎日何らかの方法で日本語を自分の生活に加える努力をしています。
そして「もっとうまくなろう」より、「維持する」というようなモチベーションがあります。できる範囲で毎日日本語をすこしでも話したり、聞いたり、または読んだりしようとしています。
また、日本語について、今はどのようなことにわくわくしますか?
日本語の流行語はとっても面白いです。最近 Netflix で 『Terrace House』(テラスハウス)という番組にはまっていて、現代のスラングの勉強になります。「イケメン」、「オタオメ」「自撮り」などがこのごろ覚えた流行語です。二つの単語を一つの新しい流行語にデザインするのは日本だけかもしれません。
インターネットがある今は、生の日本語に触れる機会が比べものにならないほど増えましたが、あなたなりのそれでも変わらない勉強法、語学に対する考え方はありますか?
私が日本語の勉強をし始めた時代はインターネットがなくて、すべての辞書や参考書は印刷物でした。それ以外に、テレビと実際に住むことが効果的な勉強法でした。今はインターネットでの言語リソースは参考になりますが、たまに漢字辞典などを使って勉強をします。
日本に最近行ったのはいつですか?あなたが「日本に行ったらこれは必ずやる」ということにはどんなことがありますか?
去年日本で「一人旅」をしました。一つの目的は大阪でヨガトレーニングを受けることでした。もう一つは日本の文化や生活の再度触れることが目的でした。自分のペースで20年ぶりに大阪の商店街をうろうろし、買い物をしながら、心に響くこてこての大阪弁を聞きたかったのです。また、京都のお寺、庭園へ行き、富士山の近くにある旅館に宿泊し、温泉で体と心を癒し、美しくて美味しい懐石を味わいました。
やはり「私の日本」はまず、伝統的で代表的なところから、ですね。
ブライアン・チュさん
中国系アメリカ人。高校で日本語を学び始め、ワシントン大学入学後、同志社大学に留学。卒業後は三重県で4年間にわたり働き、アメリカへ。現在は Associates in Cultural Exchange でマーケティング部門のディレクター補佐。
普段は日本語をどのように使っていますか?
毎日の生活の中、日本人である妻と娘と接する時に一番多く使います。日本人の友達と会う時、またはオンラインでも(ソーシャルメディアの口コミやテキストなど)結構使います。テレビ番組や映画を見たり、読書したりする時も日本語によく触れます。
日本語の何が魅力ですか?例えば、他の言語も勉強してみたけれども日本語を選んだという場合、他の言語と比較してご説明していただけるとありがたいです。
自分は日本語を話せますが、日本人ではなく中国人であることと、中国人なのに中国語をしゃべれないこと、その二つはやはり昔から非常に辛く感じてきました。中国語をしゃべれないということは中国系アメリカ人では珍しい話ではありません。2世や3世、4世の方は、中国語より英語の方が強いケースが多く、自分の場合は家で広東語で話しかけられても、英語で返事をしていました。本来「2ヶ国語が話せる」人になるはずだったことを大人になって思い出すと恥ずかしく感じます。自分の祖父や祖母と広東語でしっかりした会話を一切したことがなく、人生の後悔と言えるぐらいです。
そんな場合に、中国語ではなく日本語を勉強し始め、上達すると、どんな気持ちになるでしょうか。最初は高校の頃から流行っていたアニメやゲーム、宇多田ヒカルのポップス音楽などにかなり興味がありましたが、大学に入ってしっかり勉強し始めて、何かに気づきました。それは、「私は日本語ができる」ということです。自分の得意項目で成績も良く、とりあえず勉強し続けようと思いましたが、他言語を自由に扱う魅力にますますとりつかれてしまいました。中国語をしゃべれないからことで自分の胸の中にある空間を日本語で埋めるとどうなるか、とりあえずやってみたいと思いました。
そして、日本の京都市にある同志社大学に留学し、卒業後4年間、三重県で仕事をし、長く住めば住むほど日本語を「自分の言語」と言えるようになりました 。最終的に、中国語ではなく日本語でやっと「2ヶ国語が話せる」と言えるようになり、娘にもその機会を与えることを考えると、昔の後悔はなくなります。
ご自分にとって、どのようなチャレンジがあり、また、どのような勉強法が効果的でしたか?コツのようなものはありますか?
現在一番難しいのは、新しいボキャブラリをしっかり覚えて使いこなすことです。流暢さは何年たってもあまり変わりませんが、やはり自由に扱える言葉の数がどんどん減っていきます。古い言葉が死に、新しい言葉が生まれ、最近の留学生と話すと、なおさらきつく感じます。残念ながら面白い勉強法はなく、覚えるしかありませんね(笑)。
今も日本語をもっとうまくなろうと努力されている場合、どのような勉強法をとっていますか?そのモチベーションはどこから?
現在は、仕事しながら妻のことと娘の育児を考えるのが精一杯ですね。しかし、いつもモチベーションはあります。それは自分よりもっとうまく日本語ができる友達のことを思い出すことです。「自分ができる」という自信は昔からあったので、今しっかり勉強していなくても、いずれまた勉強したい、もっと上達したいという気持ちはずっとあります。
また、日本語について、今はどのようなことにわくわくしますか?(例:新しい流行語を知った時、
昔から変わらず、読書する時、または映像を見る時、困らずに日本語をスムーズに聞き取れることにワクワクしますね。「ふ~ん」みたいな相槌がスラスラと自然的に出てくると、母国語とまったくギャップがないと感じ、やはり大変気持ちいいですね。
あなたが(日本語を母国語としない人について)「この人は日本語が上手だ」と思うポイントは?これができるなんてすごい!というポイントは?
自分の意見だけですが、使える言葉の数、または書ける漢字の数みたいなことではなく、スムーズに日本語が話せることとか、相槌や「ね」、「わ」みたいな語尾も正確に使っていること、または無理に「格好いい」日本語を使わず、自分らしく気持ち良くしゃべっていることなど、言語としてもっと根本的な面から判断します 。「数より質」「Quality over quantity」ですね。でも、もしかすると、基準がちょっと曖昧すぎるかもしれませんね(笑)。
インターネットがある今は、生の日本語に触れる機会が比べものにならないほど増えましたが、あなたなりのそれでも変わらない勉強法、語学に対する考え方はありますか?
今のアイフォーンの時代では、辞典や翻訳/通訳アプリなどがいつもそばにあり、例えばある言語をまったくしゃべれない人でもその言語で「会話」ができるようになります。しかし、それは本当に「コミュニケーション」でしょうか。人と人の心をつなぐには、やはり努力がいると思います。他言語を完璧に使いこなせなくても使おうとすることが大事ですね。言語はコミュニケーションのツールであり、相手とうまく接せれば利用方法はいくらでもあります。もちろんテクノロジーを使うべきだと思っていますが、頼りすぎないように注意した方がいいとも思っています。
日本に最近行ったのはいつですか?あなたが「日本に行ったらこれは必ずやる」ということにはどんなことがありますか?
今年は3年ぶりに日本に行きます!まずは妻の故郷である三重県の松坂市を訪ねるつもりです。自分も 三重県の多気町というとても小さな、人口が1万5千人しかいない町で4年間を過ごし、仕事をしたので、その頃の友達や元同僚ともできれば再会したいです。留学していた頃のお茶の先生や、シアトルで出会った日本人の友達など、お会いしたい方が多いです!そしてとりあえず、着いてから食べますね!一番は世界で有名な松坂牛の焼肉、すき焼き、ステーキ、これは見逃せません!後は、名古屋の味噌カツ、広島のお好み焼き、静岡のうなぎ、神戸のスイーツ、大阪の串カツ。いろいろな都道府県の必ず食べたい名物は尽きませんね!
掲載:2017年6月