「挑戦に対して寛容な国」というイメージのあるアメリカ。そんなアメリカでも、何か新しいことを始めるのに年齢は関係あるのでしょうか?インタビューしたのは、約4年前に宇和島屋ベルビュー店そばに開店したフランチャイズクルーズ旅行代理店、Expedia CruiseShipCenters Bellevue。社員の大半が40歳以上の職場です。新たな職場で働く社員たちの、「年齢」「キャリア」「好きなこと」に対する考え方とは?
エルバート・ストックバーガーさん
アメリカの大学を卒業後、複数のアメリカ企業でビジネス・システムのデべロップメント、ソフトウェア開発、プロジェクト・マネジメントなどのポジションでキャリアを積み重ねる。50歳の時に大きなキャリアチェンジをし、Expedia CruiseShipCenters Bellevueのフランチャイズオーナーに。今までに15回ものクルーズ旅行の経験がある、大の旅行好き。
数年前までアメリカの比較的大きい企業でずっと働いていました。仕事はうまく行っていましたし、給料も良かったのですが、プレゼンテーションをしたり、ミーティングを仕切ったりして誰かに何かを証明し続けること、オフィスにこもって仕事をする日々に嫌気がさしてきました。気持ちと情熱がそこにはなかったのですね。
そこで、自分が旅行が大好きなことを思い出しました。26歳の時に初めてヨーロッパを旅行し、異なる文化に触れ、異なる人々と時間を共にすることがとても面白いことだと知ったのです。私が情熱を持っている旅行に携わり、お客さんの旅行をより良くしたり、同僚に新たなキャリアのチャンスを提供したりしたいと思いました。その時、Expedia CruiseShipCenters Bellevueがフランチャイズオーナーを募集していることを知り、これに応募して、50歳の時に経営者として新たな一歩を踏み出しました。
今まで大企業の社員としてそれなりの給料をもらっていたので、それが0になることは避けたいと思いました。そこで、情熱を持ってできる仕事で、かつ収入にも問題のない仕事を探し、それが今の仕事になりました。
大企業の一社員からフランチャイズの経営者になって働くことには本当に難しいと感じています。経営者はすべてやらなくてはなりません。マネージャー、マーケター、リクルーター、アカウンタント、オペレーターといった仕事を私がすべてやりますから、失敗もあります。でも、今までのキャリアで得た経験がすごく生きています。企業に勤めていた時代にさまざまなポジションでさまざまなチームと仕事をしていたことからの学びを今の仕事に生かしています。ゼロからのスタートではないのです
私は以前の会社の同僚に「お前の年齢では、新しいことを学ぶには遅すぎる」と言われました。とても辛く、悲しかったです。まだ48歳だったのに。今はこの同僚の言葉は間違っていると胸を張って言うことができます。何かに情熱を持っていて、それを本当に学びたいと思うなら、年齢は関係ない。年齢を重ねるということは、多くの経験を積み重ねるということ。今までの経験が新たなキャリアでも必ず生きるはずですから、遅すぎてダメなことはありません。
私はまだまだ将来のことも考えています。旅行業界に留まるとしたら、どのようなポジションで働こうか、それとも他の業界に移ろうか、とか。どちらにしても、情熱を注げる仕事をしていくことに変わりありません。
アグニエヅカ・ノワクさん
ポーランド語、ロシア語、英語を流暢に話すマルチリンガル。ウクライナ語とチェコ語も理解する。ロサンゼルスの大学、UCLAで言語学学士号を取得し、語学力とコミュニケーション力を生かしてソーシャルワーカーとして働く。その後、ワシントン大学でソーシャルワーク学修士号を取得し、18年間勤務。2018年からExpedia CruiseShipCenters Bellevueでトラベルコンサルタントとして活躍中。
語学力とコミュニケーション力を生かしてソーシャルワーカーとして働いていました。人と直接関わることが好きなので、その点では合っていましたが、人のトラウマや苦難を間近で見続けることで、気づかないうちに自分が疲れきってしまいました。好きな仕事でしたが、ずっと続けて行くのは難しいと感じたのです。
人と直接関わることは変えずに、もう少し気持ち的に楽な仕事を探した時に、このトラベルコンサルタントの仕事を見つけました。「修士号まで取って、18年間もソーシャルワーカーとして働いてきたのに、なぜ今までの経験や知識を無駄にするの?」と言う人もいましたが、そんなことはありません。これまでの仕事で培った経験や知識、勘は異なった業界でも生かせるのです。例えば、マルチタスキング能力。トラベルコンサルタントとして働いていて、突然お客様から電話がかかってきたり、旅程が変更したり、キャンセルが起きたりして、仕事に影響することがあります。ソーシャルワーカー時代に、いつ何が起きるかわからない状況で臨機応変に仕事を管理してこなす経験を得たことが、そういった場合にものすごく生きています。
一つ目は収入面。キャリアの方向転換をする上で、その変化をして自分や家族を養い続けて行くことができるかを知ること。二つ目は、自分を信じて応援してくれる人を周りに持つこと。最後に自分を信じること。人生の後半でキャリアの方向を変えるには、この3つが大切だと思います。
今の仕事はオフィスでも家でも働くことができて、自分のスケジュールに合わせて働く時間を調整できます。子供が学校に行っている時に仕事ができることも大きいですね。それに加えて、もともと旅行は好きで、人と触れ合うことが好きな私にはぴったりな仕事です。
まず、挑戦や変化に寛容な文化圏もあれば、そうではない文化圏もあります。個人が挑戦するかしないかだけでなく、その社会がそれを許容するかというのは大きな要因だと思います。私の母国のポーランドでは40歳や50歳になってから新たに教育を受けることは本当に難しいように、すべての文化圏の人が挑戦や変化するチャンスを簡単に得られるわけではありません。でも、周りにサポートしてくれる人がいれば、新しいことをすることの助けになると思います。今まで生きてきた経験がある限り、ゼロから何かを始めることなんてないのですから。
クリスティーン・セガトさん
大学を卒業し、医療系の仕事に従事した後、航空会社のフライトアテンダントに。その後、複数のNPO団体で20年以上働く。現在は、教育系の非営利団体に携わりながら、昨年からExpedia CruiseShipCenters Bellevueでトラベルコンサルタントとしても働き始める。
50代になり、子供が大学に入学して自立し始めて時間に余裕が生まれた時に、昔からずっと好きだった旅行業界に携わりたいと思いました。とても柔軟性があるこの職場は、好きなことをしながら仕事をするのにぴったりな環境です。
若い頃と比べて、物を覚えることに時間がかかることがあります。特にテクノロジーには苦戦してます。でも、難しいからといって、諦めることには繋がりません。日々、勉強しています!
この職場のみんなはとてもポジティブで、雰囲気がいいから、快適です。まさに、私が求めていた職場。誰かに嫌われていたり、ハッピーではなかったりする職場はもうこりごり(笑)。
"Go for it!" 人生は短いんだから!私は最近、病院にお世話になることがあって以来、人生を毎日楽しみたいと強く感じています。何かに挑戦したり、何か変化を起こしたい時にただただ考え続けてしまうと、辛く感じてしまうこともあります。でもやってみると、想像しているより意外に簡単だったりするの。"Just do it!"
取材後記:1996年、千葉県四街道市生まれ。文部科学省が展開する留学支援制度である 『トビタテ!留学 JAPAN』 の第8期生としてシアトルに留学。今回はインターンシップ先の Expedia CruiseShipCenters Bellevue で働く方々にインタビューをしました。日々多くの驚き、学びがありましたが、「年齢」「キャリア」「好きなこと」について聞いてみて、「何かを始めるのに、遅すぎることはない」「今までの経験が生きるのだから、まったくのゼロから始めるなんてことはない」「リスク管理が必要」「人生は短い。だから最大限に楽しむべき」‐ このの4つの学びは今後キャリアを積む上で、とても参考になりました。これから働き始める人、新しいことを始めようと考えている人が一歩を踏み出す助けになれば幸いです。Expedia CruiseShipCenters Bellevue は、トラベルコンサルタントを随時募集しています。お気軽にご連絡ください。Thank you Elbert, Aga, Christine!
掲載:2019年4月 取材・執筆:佐藤伸介