大小さまざまな IT 企業が集中するシアトル地域で行われているコンピュータ教育とは? Google で働くエンジニアの今崎憲児さんによる実録エッセイ。
筆者プロフィール:今崎 憲児(いまさき・けんじ)さん(通称:ケンジ先生)
Seattle IT Japanese Professionals (SIJP)スタッフ。現職は Google の Android 部門のテストエンジニア。神戸市生まれ、熊本県育ち。九州大学情報工学科修士課程修了、カールトン大学コンピュータサイエンス PH.D. 卒。シアトルには2004年から在住。その間、Amazon と Google でさまざまな職種を経験。今興味があるのは、子供に対するコンピュータ教育と熊本地震救済活動。公式ブログはこちら。
これまでの活動
シアトルの IT 業界で働く社会人と IT 業界に興味のある方の交流の場を設けるために創られた会 Seattle IT Japanese Professionals (SIJP)で、2016年に子供コンピュータ講座を7回実施しました(2進数2回、画像表現、サーチ、ソート、クラウド、ジャバスクリプト)。2017年はサーチアルゴリズム(レポート)とソートアルゴリズム(レポート)を行いました。
また、2016年12月には、四つ葉学院と共同でコンピュータ講座を始め、最初は2進数、2017年には1月にサーチと2月にロジックの講座を行いました。
四つ葉学院での最初の講座は2進法で、指で2進法を数えることや運動と組み合わせたバイナリーダッシュを行いました。子供達が楽しんでいる様子はこちらのレポートでご覧ください。
2017年2月12日には、カークランド図書館でサーチアルゴリズムを学びました。1月に実施した四つ葉学院の講座での先生と子供達からのフィードバックを生かして改良を加えたものです。(写真)
実際に学んだ子供達の意見はもちろん、教育のプロフェッショナルである先生方からいただいたフィードバックが講座内容の向上につながりました。
コンピュータ講座を始めたキッカケ
約2年前、Bellevue Childen’s Academy の協力により、Scratchを使ったコンピュータ講座を行いました (レポート)。
保護者の方々から「またやってください」というフィードバックをいただきましたが、他でもやっている Scratch ではなく、SIJP ならではの方法を模索していたところ、"CS Unplugged" というウェブサイトを見て、これだと思いました。2進法から始めて、最初はしどろもどろだった講座も、段々と形らしくなってきました。
Computational thinking とは
Computational thinking(CT)という考え方、つまり問題をコンピュータにわかるように定義し、解決するという方法の重要さが認識されるようになりました。
CT とは、コンピュータの仕組みにより近い、また、より速く問題を解くための手法(アルゴリズム)を考えるということです。残念ながら、CT を学べる機会は非常に少ないので、SIJP の講座では主にその部分が中心です。
例えば、SIJP のコンピュータ講座(ソート(整列)アルゴリズム)でも使った次のビデオでは、トランプを用いて、ソートアルゴリズムの一つであるセレクションソートが実際にコンピュータでどのようにを実行されているかを理解することができます。
また、東京の朋友学園理工学部では、バブルソート(整列)をいうアルゴリズムを「人力アルゴリズム 」と称して、次のようなビデオを作っています。
クイックソートとよばれる別のソートアルゴリズムも同じようなビデオがあります。
このようにして楽しく CT を学ぶことは、コンピュータの基礎を学ぶ上でとても有意義だと考えています。SIJP では、これからも子供達が楽しいと思えるコンピュータ講座を開いて行きたいと思っています。
幅広い分野について学ぶ
また、SIJP は、幅広くコンピュータのことを子供達に教えていきたいと考えています。
2016年12月のオープン講座では「クラウド」を取り上げ、Google Docs を使って共同作業をすることを学びました(レポート)。共同で作業をすることは、現代の企業・団体では必須になっています。これらの講座には、あらゆるテクノロジーを利用して作業効率を上げることの大切さを学ぶという趣旨があります。また、2017年4月には Google の UX デザイナーをゲスト講師に迎えて、ユーザーエクスペリエンスを楽しく学ぼうを開催しました。そこでは、子供達が実際に自分の作りたいアプリをデザインしました(レポート、写真)。
その他にも、Microbitという小さなコンピュータを使用して、コンピュータの仕組みから教えられればと考えています。ご期待ください。
SIJP の活動の大きな柱でもある、「IT を通して次世代を担う日本人の子供達を育てる」ということに、少しでも貢献できれば大変嬉しく思います。
次回は、SIJP の講座の内容について詳しくご紹介します。
掲載:2017年5月