「わたしと小鳥とすずと」
わたしが両手をひろげても
お空はちっとも飛べないが
とべる小鳥はわたしのやうに
地面(じべた)を速くは走れない
わらしがからだをゆすっても
きれいな音は出ないけど
あの鳴る鈴はわたしのやうに
たくさんな唄は知らないよ
すずと、小鳥と、それから
みんなちがって、みんないい
小学校3年生の国語の教科書(光村図書)に載っている金子みすゞさんの詩です。
半世紀以上前の日本で発表されたこの詩はすべてのお母様、お父様、そして教育に携わる皆様の心にいつも留めておいていただきたいものです。
一人一人がみんな違って、それが素晴らしいことをすべての子供たちに吹き込んであげてください。できることを認めて褒めてあげることで、子供たちは自信と余裕を持って、いろいろなことに、そして少し苦手なことにもチャレンジしてくれるでしょう。
最近、私は針治療に通うようになりました。痛い所をなんとかするのではなく、腸を整え、体全体の調子をあげ、調子の悪い部分を自分の力で治していく治療です。
痛み止めを飲むのとは違って時間はかかりますが、その効果ははっきりと自覚できます。普段の睡眠や体温にも変化が見られ、体全体がいい方向に向かっているのです。人間の体の自然治癒力を再認識しました。同じように、一人一人の子供に与えられた生きる力を信じ、上手に正しくそれを引き出していけば、限りない可能性が見えてくると思います。
2月はじめの学校現場は、平日の学校も土曜日の学校も入学審査の季節です。私たちの学校に入学したい、やる気のある子供たちをすべて受け入れてあげたい気持ちです。今という刹那においてある能力だけを見て合否を判断したり、一部の技能だけを見て出来るか出来ないかを判断して合格基準にしていくことに、いつも胸が痛みます。
私たち大人もこの2年間の世界の激動の中、たくさんの忘れていた大切なことを見直すことができました。
リーダーシップのあり方、多様性の受け入れ方、インクルーシブであることの大切さ、自分の心を保つことの大切さ、いろいろな角度から物事を見て、感じとり、気が付くこと、そして過去から学んだ知識の量よりも未来へ向けて解決していく能力の大切さです。
「みんなちがってみんないい」
この大切な基本をまず家庭で、学校で、社会の中で認識することが求められているように思えます。
上は学校で行われる統一テストや評価設定を皮肉ったイラストです。
私はこれを毎年8月に新年度を迎える先生方のオリエーテーションで使用しています。一人一人を大切にしてほしい、出来るか出来ないかの基準は大人たちが創り出しているだけで、それが子供の能力を決める基準ではないことを、ベテランの先生にも希望に胸膨らます新しい先生にも考えてもらっています。
「みんなちがって、みんないい」
簡単なことですが、そこにはまず、自分にとって一人の相手である、”あなた” を大好きになって受け入れること、理解する優しい気持ちが根底にあります。
子供にとって最初の “あなた” になるのは、お母様であり、お父様であると思います。
コロナ禍の社会情勢のなか、家族で過ごす時間がたくさんある今こそ、もう一度この基本原点を見つめることができます。もしかしたらこのコロナは、どこかにいらっしゃる神様が私たちにもたらした自然治癒の時間かもしれません。
一人一人の子供たちがこの困難な状況の中、逆境に立ち向かって自分のできることに自信を持ち、自分を信じて力強く生きていってくれることを切に願います。
執筆:清水楡華(しみず・ゆか)
2000年に生徒十数人でスタートした私立校 Bellevue Children’s Academy、Willows Preparatory School は、Pre-K から10年生まで730人が通う学校になりました。土曜日本語学校には400人近くが通っています。子供達にとって何が一番大切かを考え、総勢1100人の子供達と180人のスタッフとその家族の安全を保護し、健康を守りながら、指揮をとる仕事に就いています。
・Bellevue Children’s Academy
・ベルビュー・チルドレンズ・アカデミー土曜学校
・Willows Preparatory School