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第3回 パンデミックがもたらしたもの 執筆:清水楡華さん

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アメリカでは、昨年12月に新型コロナウイルス感染症ワクチンの緊急使用が承認されてすぐ、高齢者、医療従事者、学校関係者の順で接種が始まり、CDC のデータによると、現時点で全人口の40%近くの人が接種を完了しています。

ワクチン集団接種会場

大きな会社や野球場を開放して何百人ものボランティアの人を配備した接種はスムーズで、あっという間にすみました。ほとんどの人がオンラインで予約を入れるシステムで、数カ月のうちに混乱もなくなり、接種が進んでいます。今月12日には12~15歳のワクチンの接種が承認され、中学生の子供たちが接種を受け始めました。

4月から5月にかけての1カ月間、変異株による感染が急速に広がる日本に滞在しました。その間に高齢者への接種が始まりましたが、日本での接種予約はほとんどが電話のため、回線が繋がらず、どこもパンク状態になっているのを目の当たりにしました。いくつかの自治体が選んで使用したオンラインシステムはなんとアメリカの会社によるもので、インターネットやコンピュータが家庭にないところでは、スマートフォンを使用して予約を取るのに、高齢者をはじめたくさんの方が大変な思いをしていました。

また、接種を受ける順番やシステムが各自治体に委ねられたままで、ワクチンがあるのに十分な準備が出来ていませんでした。毎日流れるニュースでは、市長が先にワクチン接種をしたことや政府が緊急事態宣言を急に変更して出したことなどの話題ばかりが報道され、日本でのワクチン接種の拡大はまだまだ先のように思えました。

このパンデミックでは、アメリカの学校はすべてオンラインに切り替えて感染拡大を防ぎましたが、日本ではオンライン授業と対面授業の混ざった体制がとられていました。また、非常事態宣言中に、大阪の小学校では、子供たちは午前中に自宅でオンライン授業を受け、給食時間に登校し、午後からの対面授業では午前中の教材をもとにプリント学習をしていました。今年せっかく子供一人一人に配られたタブレットを利用した授業は進んでおらず、とても残念な気がします。

それでも、子供たちの目は新しいおもちゃをもらったようにキラキラ輝き、ワクワクしながら自分たちでタブレットを使っていました。願わくば、そのキラキラとワクワクが先生方にもあってほしいと思います。パンデミックが終わればこれがなくなるのではなく、この機会にタブレットに馴染み、さらに上級のキーボード打ち込みへと続いてほしいです。先生が教え込む必要はなく、学習は子供主体のものであり、先生が発問し、子供と一緒に発見し、習得していく取り組みができると思われます。ただ、いつも使っていないとすぐに忘れてしまうので 毎日少しずつでもいいので子供と一緒に使ってその素晴らしさを発見していってほしいものです。

タブレットがあると、先生からリモートで授業を受けたり、教材を受け取ったりすることはできますが、キーボードがあって初めて自分の学習したものを使って何かを創り出すことができます。簡単な画面操作を覚えたら、次はキーボードの入力練習です。いろいろな練習用のアプリがあると思いますが、日本語入力は難しく、練習して慣れていかないといけません。むしろ最初に英語の入力を覚えてから日本語の入力に入るほうが簡単なのではと思いました。

アメリカの教室でのキーボード入力

アメリカの教室でのキーボード入力は、これといった決まりはなく、小学校でも教えるクラスはありません。BCA では、4歳のプリスクールから入力の練習をします。

アメリカで生まれ育つ子供も、日本で生まれ育つ子供と同じように、学校に入学する時点で言葉は話せても書いたり読んだりはできず、学校で習得します。ちょうと日本人がひらがなを学ぶのと同じように、英語の持つ一つ一つの音を理解し、音を繋げて単語を読み始めます

これはフォニックス指導と呼ばれ、文章の指導と同時に行います。さらに、この初期のフォニックス指導を利用してキーボードを使い、文字の位置と音を覚えて、タイピングの練習をするのです。最初は AT AT AT IN IN IN と指の場所を覚え、さらに MAT NAT SAT PIN TIN BIN などとタイプの練習をしていきます。

日本では英語教育を小学3年生で始めるようになりました。タブレットも一人一人の子供に与えられました。この勢いに乗って、日本の小学英語の教育が中学英語の先取りでもなく、またタブレット利用が後戻りすることのないように、先生方の手で大切に立ち上げ、続けていただくよう、切に願います。

アメリカの地でビジネスをして20年。日本人の考え方、仕事に対する努力、仲間と創り上げる姿勢は十分に世界で戦っていけるものです。コミュニケーションの手段である英語さえしっかりすれば、日本の未来はもっと確かにグローバルになり、豊かになると信じます。また、同じようにアメリカの子供たちにも日本の教育のいい所をどんどん紹介していきたく思っています。

パンデミックは、教室にいろいろな課題とその回答、未来へのチャレンジを与えてくれています。それを真摯に受け止め、発展へと繋げていくことこそが、たくさんの犠牲を払っているこのパンデミックが、私たち教育に携わる者に託した大事な使命であるような気がするのです。

パンデミックの中で経験したこと、未知のものに対してのタイムリーな対応の仕方、いろいろな場面にあわせての周到な準備、みんなで協力していくことの大切さなどが、毎日マスクを着用し、手洗いをしてきたこの世代の子供たちにどのように影響をもたらし、彼らがどのような未来を切り開いてくれるのかが楽しみです。

執筆:清水楡華(しみず・ゆか)
2000年に生徒十数人でスタートした私立校 Bellevue Children’s Academy、Willows Preparatory School は、Pre-K から10年生まで730人が通う学校になりました。土曜日本語学校には400人近くが通っています。子供達にとって何が一番大切かを考え、総勢1100人の子供達と180人のスタッフとその家族の安全を保護し、健康を守りながら、指揮をとる仕事に就いています。
Bellevue Children’s Academy
ベルビュー・チルドレンズ・アカデミー土曜学校
Willows Preparatory School

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