2020年も残すところ一ヶ月となりました。コロナに始まり、世界中がコロナに翻弄されながら幕をおろす未曾有の一年です。
私は、医療現場の次に欠くことのできない、教育現場にいます。2000年に生徒十数人でスタートした私立校 Bellevue Children’s Academy、Willows Preparatory School は、Pre-K から10年生まで730人が通う学校になりました。土曜日本語学校には400人近くが通っています。コロナや政治に振り回されず、子供達にとって何が一番大切かを考え、総勢1100人の子供達と180人のスタッフとその家族の安全を保護し、健康を守りながら、指揮をとる仕事に就いています。
ワシントン州でコロナによる死亡者が出始めた直後の3月上旬に、BCA/WPSは、全米のどこよりも早く学校を閉鎖し、全面リモート学習に切り替えました。当時はまだまだコロナについての科学的な情報がなく、安全対策での閉校でした。幸いにもすべての家庭にインターネットとコンピューターがあったので、先生方のトレーニングを1日で終了し、2日後からは誰もが初めてのリモート学習が始まりました。夏が過ぎ、ワシントン州の教育庁もそれぞれの学区のリーダーも9月の新学年に学校を再開することで一致していましたが、先生方の同意を得ることが難しく、十分なソーシャルディスタンスをとるスペースの確保も困難で、公立校の全面再開は延期となっています。おそらく2021年の夏までリモート学習の継続を余儀なくされることでしょう。
私立校である私たちは、安全対策を徹底し、9月にどこの学校よりも早く対面学習を再開しました。コロナが人間の知恵と努力で十分に管理できるものであること、学校という保護された環境であること、子供達の学習面と精神面、社会面への影響を考えた上での決断です。
学習の形態は、リモート授業、ハイブリッド授業、対面授業の大きく3つに分かれます。平日の学校では、それぞれがお互いの安全と健康を一番に考え、協力し、信頼し合って、対面学習とリモート学習の選択を提供しています。9月から既に12週間となりますが、全員の団結と協力でコロナ感染者が出ない状態を保っています。
リモート授業:ライブのものとビデオによるものがあります。
ハイブリッド授業:リモート授業と対面従業を交互に行うものと、対面を中心にリモートに同時配信するシンクロナス授業があります。土曜学校ではシンクロナス授業の形態をとっています。クラスでの対面授業とその授業をライブストリームし、家庭からリモートで参加する子供達を繋ぎます。対面学習の子供達とリモート学習の子供達をカメラを通して繋ぐので、意見交換もでき、少しでも普通のクラスの臨場感を味わってもらうよう工夫しています。
対面授業:安全対策が徹底されており、マスクを着け机を離し、バリアを作り感染を防ぎます。
今回特に驚いたのが、子供たちの新しい環境への適応力です。自分で自分の命を守るという基本的な行動がきちんと取れているのです。 たくさんの制限のある休憩時間でも文句ひとつ言わず、めげずに新しい遊びを創造し、楽しんでいます。適応できないのは、大人である私たち親であったり先生であったりします。また、リモートで学習している子供達の中にも驚くべき適応力を見せて、大学のセミナーを受けるかのようにコンピュータを使いこなし、その上、自分が使っているプラットフォームで新しいものを設定し創造して、先生方を驚かせてくれます。
もちろん、中にはリモートでは十分に学習できない子供達も多くいます。学習過程において、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)を使いこなすのはとても大切です。子どもたちの見る、聞く、声を出す、手を動かす作業などにより感動がうまれ、学習が定着していきます。この五感を使いこなすのは、リモート学習ではなかなか難しいものです。
そこで、リモート学習を楽しく効果的にするための案をいくつかご紹介します。
- 時間割を前もって把握し、自分のスケジュールを決めておく。やり遂げる気持ちを高めておく。
- その授業で使う本や教材等に前もって目を通し、わからない部分をハイライトしておく。
- 授業を受けながら 習った学習ポイントを三つ程度書きだしておく。
- なるべく大きな声で読み、返答をする。
- 一番難しかったこと、新しい発見、楽しいことをふりかえる。
私自身、打ちのめされそうになった時、子供達のたくましさに何度も励まされました。たくましく生きることを子供達が大人に教えてくれています。過去のことにとらわれず、未来を恐れることなく、今という時間を精一杯懸命にひたすらに生きていくこと、そんな大切なことを子供たちがいとも簡単にやってのけているのです。Gautama Buddhaの言葉にこんなものがありました。茶道の一期一会にも通じます。
“The secret of health for both mind and body is not to mourn for the past, nor to worry about the future, but to live the present moment wisely and earnestly.”
シアトルの冬は長く、午後5時には東の空に大きな満月が昇り、西の空では太陽が空を茜色にそめて沈んでいきます。自然が作り出す神秘的な時間です。広大な宇宙の中、小さな小さな地球で起こっているコロナの大騒動。人類が試されている時なのか、これがどこへ向かって流れていくのか、今は誰にもわかりませんが、二度と戻ってこない今という瞬間をしっかり足を踏ん張って進んでいけば、きっと出口に到達するはずです。出来ることならば、そんな切迫した困難な状況の中でも、誰かを支え、誰かのためになる人生であればと思っています。
執筆:清水楡華(しみず・ゆか)
2000年に生徒十数人でスタートした私立校 Bellevue Children’s Academy、Willows Preparatory School。子供達にとって何が一番大切かを考え、総勢1100人の子供達と180人のスタッフとその家族の安全を保護し、健康を守りながら、指揮をとる仕事に就いています。
・Bellevue Children’s Academy
・ベルビュー・チルドレンズ・アカデミー土曜学校
・Willows Preparatory School