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「お客さまの喜ぶ顔を想像しながら作るのが私の喜び」 Fumie’s Cakes パティシエ 熊谷ふみえさん

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Fumie's Cakes

Fumie’s Cakes
熊谷ふみえさん 略歴
北海道小樽生まれ。幼いころから食に興味があり、短大卒業後に商社での勤務を経て、ワーキングホリデーでオーストラリアへ。シドニーのル・コルドン・ブルーでベーキングを修了して渡米し、結婚を機にシアトルへ。2009年にベルビュー市で起業し、ケーキの小売を始める。注文を受けて作るケーキのビジネスが増加したことから、2019年に注文販売のみ受け付けるビジネスに切り替え、カークランド市に移転。公式サイトはこちら

母親の食へのこだわりが、食に対する感度を高めてくれた

私は母が手作りした何品もの料理が食卓に並ぶ家庭で育ちました。とにかく、「食は命」。母は食にとても興味があり、合成着色料や化学調味料などの添加物を使わない食事が普通で、私も幼い頃にそういったトピックの講演に母と一緒に行ったのを覚えています。

もちろん、母は漬物、パン、ヨーグルトなど、いろいろなものを手作りしていました。そちらのほうが安かったというのもあると思いますが、北海道小樽の新鮮な食材を使って、興味にまかせて実験をしていたような感じです。

でもすごく美味しいものばかりをというわけではなく、卵の殻を粉にしたものとか、胡麻を生の蜂蜜とまぜて団子にしたものとか、「体にいいから」という理由で食べさせられたことも(苦笑)。でも、今から思うと、そうやって食べ物に注意を向けてくれたこと、私が食べたいというものは好きなだけ食べさせてくれたこと、食べ物で家族が喧嘩をしないようにたくさん食べさせてくれたこと、それが母の愛の形だったのだと思います。

幼い頃からの夢がかない、次のわくわくを求めて海外へ

Fumie's Cakes

食に対する興味はずっと持ち続けていたので、中学生の時はカロリー計算に夢中になり、家でしょっちゅう料理をしていました。高校生の時はベーキングが好きになり、クッキーなどを頻繁に焼いて、学校の友達にあげていました。でも、幼いころからずっとなりたかったのは、スキーの先生。20歳でスキーの準インストラクターになり、短大を出て農業商材を扱う商社に就職してからもずっとスキーを続け、23歳でスキーの正指導員になるという夢を実現しました。

でも、そうすると、わくわくするものがなくなってしまったんですね。そして、「オフィスで働くのはあまり自分に向いていない」と思ったので退職し、1年間のワーキングホリデーでオーストラリアに行ったのです。

一人旅であちこちまわっていろいろな人に会ううちに、「いろんな生き方がある」ということがわかりました。そして、自分が相変わらず食に興味があることも実感し、半年ほど旅行した後、シドニーの回転寿司で働き始めました。高校時代にアイスクリーム屋さんでバイトをしたことを思い出したりしてすごく楽しかったです。

「英語で学んで、英語で話ができるようになりたい」

そんな時、とても親切な日本人の方から、「ベーキングが好きなら、シドニーのル・コルドン・ブルーに行ったらいいよ」と教えられました。でも、英語のテストを受けたところ、少し点数が足らなかったので、一度日本に帰って英語を勉強することに。

朝はベーカリー、夜は居酒屋で働きながら、英語の点数を上げて、またシドニーに戻りました。英語で学んで、英語で話ができるようになりたかったので、日本で学ぶことは考えませんでした。

シドニーでは、レストランで働きながら、ベーキングを学ぶ毎日で、本当に楽しかった。オーストラリアは本当に食材が良くて、美味しいものをたくさん食べることで学ぶこともできました。

アメリカに来たのは、学校を卒業したとき、「まだアメリカに行ってないな」と思ったからです。せっかく英語で学んだので、とにかくとことん働いてみたかった。私は本当に働くのが好きなので。そこで、オハイオ州コロンバスにあるベーカリーに採用していただいたのですが、当時はまわりにあまりにも何もなく、結婚を機にシアトルへ引っ越してきました。そして、偶然リースに出ていたベルビューのダウンタウン・パークのそばの店舗でケーキ屋を開店したのです。

自分の好きなことを見つけて、世界に羽ばたいてほしい

Fumie's Cakes

起業して今年で10年になります。当初の目標は、ピースのケーキを作ることと、美味しいケーキを作ること。でも、次第に「お客さんの要望を聞いて、もっと喜ばせたい」という思いが強くなり、10年目で注文販売のビジネスに切り替えました。

ケーキを作ることには変わりありませんが、今作るものの大半はバースデーケーキです。メニューはいちおうありますが、日本のショートケーキから、アメリカンなものまで、いろいろ作ります。インスタグラムを見ていただければ、いろいろなタイプを作っていることがおわかりいただけると思います。できるだけ良い材料を使いたい。どうしてもと頼まれれば着色料も使いますが、できるだけ良い代案をお伝えします。よほど不可能でない限り、できませんとは言いませんし、言いたくない。「どうしたらご要望をかなえられるか?」と考えます。

今のお客さまは、本当に私のケーキが好きな方、素材にこだわる方、スモールビジネスを支援したい方ばかりで、ほとんどが日本人以外の方。幸せな日のケーキを作らせてもらえること、お客さまの喜ぶ顔を想像しながら作ることが、私の喜びなのです。お客さまもフィードバックをくれますし、写真を送ってくれたりして、受け取りに来るとおしゃべりが弾む。そうしたことが私に元気をくれます。私がこの仕事に対してそういうふうに感じていることは、子供にも伝わっていると思います。

家庭でも出来合いのものは使わず、すべて一から作り。それは自分が好きで、そうしたいから。母と似ているかもしれませんね。でも、だからといって、「子供にもケーキを焼いてほしい」とか、「ケーキ作りを教えたい」とか、そういう気持ちはまったくありません。本人がやりたいならやればいいですが、自分の好きなことを見つけて、世界に羽ばたいてほしい。

いつも頭に置いているのは、「この仕事では自分の健康状態をいい状態に保っておく必要がある」ということです。人が食べるものを作り、幸せな日の食べものを提供しているということを忘れずに、ストレスフルなことはできるだけ避け、いつもハッピーにしていたい。「今日も美味しいものを提供したい」という気持ちを保てるところに自分を置いておく。これはどんな仕事においても言えることだと思うので、私が仕事をする姿を通して、それを娘たちに伝えることができていれば嬉しいです。

掲載:2019年5月 写真:Fumie’s Cakes



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