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シーラ・T さん シアトル・レイン & サウンダーズ アスレチック・トレーナー

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シアトル・レイン FC の選手・監督と。中央前列がシーラさん。
左からキム・リトル(#8 スコットランド代表アーセナル出身)、
ジェシカ・フィッシュロック(#10 ウェールズ代表)、ローラ・ハーヴィー監督

ハワイで生まれ育ち、幼い頃から男の子に混じって野球をする活発な女の子だったというシーラさん。ふと目についたサッカーに、「これだ!」というものを感じたのは小学校に入った時だった。そもそも幼い頃から男の子に混じって野球をしていたので、男の子とサッカーをすることにも抵抗はなかった。朝から晩までサッカーというそののめり込みようは自分にとっては自然なことで、「将来はサッカー選手」という目標を打ち立てた。

もくじ

「すべてはサッカーのため」

日本語補習校に通い、小学校から中学校時代は埼玉県で過ごしました。ハワイでも日本でももちろんサッカーを続け、高校からカリフォルニア州に引っ越したのは、もちろんサッカー選手になるためのステップでした。すべてはサッカーのためだったんですよ(笑)。

それからセミプロやインドアでプレーするまでになったのですが、そこで怪我をしてしまったのです。選手としてはもうやっていけない。でも、私のサッカーに対する情熱は、選手としてサッカーをプレーすることだけでなく、サッカーそのものに対するものなのです。選手として表舞台に立つことはなくなっても、サッカーに関わっていられれば幸せ。そこでインディアナの大学でアスレチック・トレーナー、スポーツ・バイオメカニックス、エクササイズ・フィジオロジーを専攻し、日々研究に明け暮れました。

就職先はプロ・チーム

卒業してすぐヘッド・アスレチック・トレーナーとしてプロのサッカー・チームに就職。そして、どんどん世界が開けていった。

サッカー界は世界規模ながらとても狭く、短期間でいろいろな方々と交流する機会をいただきました。この最初の仕事がきっかけとなって、米国各地はもちろん、イギリスのストークシティやマンチェスター・ユナイテッドなどとお仕事をすることもできました。それも、ワシントン DC のチームと仕事をしていた時、たまたま米国訪問中だったマンチェスター・ユナイテッドの練習会場とチームの DC 観光ツアーをコーディネートしてくれないかと電話がかかってきて、関わったのがきっかけです。私がアスレチック・トレーナーであることを知ったチーム・ドクターがイギリスに招いてくださり、本場イギリスのやり方を直接学ぶことができました。

アメリカのトップ・リーグでプレーするシアトル・サウンダーズでも昨シーズンの前に仕事をさせていただいたのですが、昨シーズンはシアトル・レインと同じ NWSL 所属のポートランド・ソーンズ専属アスレチック・トレーナーとして勤務しました。

サッカーを通じたコミュニティ作りに情熱

そんなシーラさんがシアトル・レインで働くことを選んだのは、昨シーズンは7チーム中6位に終わったシアトルのチームと女子プロ・サッカー・リーグの成長に貢献したいという強い思いがあった。

シアトルに来る前はポートランド・ソーンズと女子サッカーのコミュニティ作りをし、試合のたびに毎試合に約2万人の観客が来るまでに発展しました。幸せなことに、サポーターも応援かや応援旗などを作って積極的に応援活動をしてくれました。ファンが練習まで見に来てくださったこともたくさんあり、サインや写真を求めてくれるようになりました。その強力なコミュニティの支えもあってポートランド・ソーンズは昨シーズンに優勝し、ファンの皆さんへ感謝の気持ちを表せたことは本当に幸せでした。

シアトル・レインにはホープ・ソロ、ステファニー・コックス、シドニー・ラルー、メーガン・ラピノーというアメリカ代表選手がいるのに、まだそんな応援をしてくれるコミュニティができていない。アメリカの女子リーグ自体、過去に3回解体されて、これが4度目。そんな状況ですから、シアトルでの女子サッカーのコミュニティ作りが、私の次の一番大切な仕事ではないかと思ったのです。男子サッカーはやはりヨーロッパが一番ですが、女子サッカーの一番はアメリカ。そんな世界レベルの選手のプレーを間近に見ながら、選手と交流する機会も作って、ファンを増やしたい。実際、アメリカのサッカー人口は世界最多で、シアトルでもたくさんの子供たちがサッカーをしていますから、下地はあるはずです。

シアトル・レイン FC にレンタル移籍した直後の川澄奈穂美選手とシアトル観光

バイリンガルであることをいかし、交流プログラムも

日本語も英語も流暢に操ることから、トレーナー以外にも通訳やエージェントとしての仕事も喜んでやっているというシーラさん。これまでにも日本と世界をサッカーを通してつなぐ交流プログラムを多数手がけている。

昨年、シアトル・レインはプレシーズン・キャンプを日本で行いましたが、その時の交流試合のおかげもあって、サッカー日本女子代表(なでしこジャパン)の主力でミッドフィールダーの川澄奈穂美選手が、今シーズンに期限付き移籍という形でシアトルに来てくれることになりました。INAC神戸で川澄選手のチームメートでもあるベブ(ビバリー・ゴーベル)選手も一緒です。

川澄選手にはヨーロッパのチームからもオファーがあったそうですが、「世界の頂点を目指す」という目標のある川澄選手は女子サッカー世界ランキング一位のアメリカを選びました。彼女がシアトル・レインとして試合に出るのは、4月半ばかと思います。このすばらしいチャンスをいかして、今シーズンが終わる8月まで、私ができることを全力ですべてやっていきたいと思います。

情熱の原点

サッカーに対するこれほどに強い情熱の原点について聞いてみたところ、「両親が大好きな仕事に打ち込んでいる姿を見て育ったから」という答えが返ってきた。

特にファッション・スタイリストの母は自分の仕事が大好きで、純粋な情熱を持って打ち込んでいる人。おかげで母にかまってもらえなかったこともあれば、仕事場に連れて行かれたこともよくありましたが、今考えると、そんな母に大きなインパクトを受けていたんですね。母を通じて、その世界の頂点でいろいろな仕事をしている素晴らしい人たちに会わせてもらえたことも、とてもラッキーでした。だから常に、「自分の好きなことは何だろう」と考えるようになり、こうして大好きなサッカーに関わる仕事をしています。

対等に意見を言う親子で父とも母とも親友のような近い存在でしたが、今では感謝と尊敬の気持ちでいっぱいです。トレーナーの仕事は、選手の健康管理を手伝い、怪我をせずに常にベストの状態でプレーできるよう、全力を尽くすこと。まだまだこれからですが、こんな形でサッカーに一生関わっていければ本望です。

写真:シーラさん提供

シーラ・T / ハワイ生まれ。日本人の血を引く両親を持ち、小学校に入った時からサッカー一筋。一時的に日本に住んでいた間もサッカーを続け、高校からカリフォルニア州へ。セミプロやインドアでプレーするようになるが、ケガをきっかけに選手生活からの引退を余儀なくされる。その後、インディアナの大学でアスレチック・トレーナー、スポーツ・バイオメカニックス、エクササイズ・フィジオロジーを専攻し、卒業後すぐにプロ・チームでアスレチック・トレーナーとして勤務を開始。ポートランド・ソーンを経て、2014年シーズンからシアトル・レインとシアトル・サウンダーズのアスレチック・トレーナーとして勤務している。
【チーム公式サイト】 www.reignfc.com

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