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スティーブ・コリンズさん 夫婦二人三脚でペットフード・ビジネス展開中(K9ナチュラルジャパン CEO)

スティーブ・コリンズさん

国際ビジネス専攻をきっかけに日本に興味

東京都内でペットフード輸入・販売会社を経営するスティーブ・コリンズさん。自然界での犬・猫本来の食性に基づいて作られた製品は、愛犬・愛猫家から高い評価を得ている。来日したての頃は「1、2年で帰ろう」と思っていたが、気がつけばもう四半世紀。愛妻・美由記さんはビジネス上でも重要なパートナーだ。

日本に来たばかりの頃友人たちと浴衣姿で記念撮影<br>写真提供コリンズさん

日本に興味を持ったのは、ワシントン州立大学で国際ビジネスを専攻したのがきっかけです。授業で「ジャスト・イン・タイム」(トヨタ自動車の生産方式)をはじめとする、日本のビジネスのやり方について教わりました。1989年に卒業し、故郷のシアトルに戻って日本語を勉強しながら就職を考えていたとき、日本で語学指導を行う JET プログラムに参加した旧友の経験談を聞き、日本に対する興味がさらに高まったのです。

日本語の学習に取り組むうちに、日本で英会話学校の講師を募集していると耳にした。「日本の文化を学んで、1、2年でシアトルに戻りビジネスを始めよう」。当初はこんな気持ちで面接を受けて合格、日本行きの飛行機に乗り込んだ。

もちろん、長年日本に住んでいると、楽しいことばかりではありません。勤務していた英会話学校が、事情を知らされないまま突然閉校になり、給料が未払いとなった経験もあります。日本語は、英語講師時代に集中的に勉強しましたが、金融機関に移った後は業務上あまり必要とならず、忙しさも相まってなかなか学ぶ時間がとれませんでした。日本人の友人を作る機会も限られていました。それでも仕事には恵まれていましたし、何より妻の存在が私の大きな支えとなったのです。

自分が描いた人生を自分の力で切り開いていく

2006年、起業するために退職を決意した。最初は、仕事の経験を生かしたオンライン金融事業の立ち上げ、そこから現職のペットフード輸入・販売業に、どのようにたどり着いたのか。

会社員時代から「いつかは起業しよう」と考えていました。退職後、友人と共にオンライン事業を始めようと出資を募り、金融事業者としての登録も済ませてスタートしたものの、徐々に市場が不安定になっていきました。2008年9月に起きた「リーマンショック」の前触れだったのです。幸いにも私たちは市場の動きを察知して、事業を拡大する前の同年7月に売却できたので、最悪の事態は免れることができました。

その後、知人の誘いでコンサルティング会社に入社し、1年ほど勤務しましたが、その間も起業の夢は捨てず、ビジネスを通してできた友人たちと月に1度集まり、情報交換会を開いていました。あるとき、ひとりが「知り合いのニュージーランドの投資家が、日本での事業パートナーを探している」との情報を持ってきました。ニュージーランドのペットフード会社が、日本で製品を販売したがっているというのです。興味を持った私はその人物を紹介してもらい、実際に会って話をしたうえで、1年間の契約でしたが日本で輸入・販売するため株式会社を設立しました。

当初、会社を辞めて再び起業に身を投じることに、妻はすぐには首を縦に振りませんでした。「またリスクを取るの?」というのです。不安になるのは理解できました。しかし、たとえ会社勤務を続けたとしても業績次第で解雇されるかもしれず、一生安定した暮らしが保障されているわけではありません。起業は確かにリスクが伴いますが、自分が描いた人生を自分の力で切り開いていくチャンスを手にできます。なによりも、私が今手掛けている「K9ナチュラル」のドッグフード・キャットフードの素晴らしさにほれ込み、自分の手で日本での販売を拡大したいという強い思いがありました。

将来は夏にシアトル、残りは日本で過ごしたい

覚悟を決めたスティーブさんの説明に納得した妻・美由記さん。
以後は私生活だけでなくビジネスでも最大の理解者となり、二人三脚で事業拡大に邁進していく。

昔を振り返ると、人間はペットの餌として「食べ残し」を与えていました。犬は本来肉食ですが、今日でも穀物を混ぜて製造されているドッグフードがどれほど多いことか。10歳を超えた犬の50%がガンを患っているという報告もあり、食事が影響している可能性は否定できません。「K9ナチュラル」は、原材料の85%は人間食用の肉類、残りはニュージーランドの厳しい品質検査を通過した新鮮な野菜や果物、卵、緑イ貝を使っており、最高級と自負しています。

2010年、私と妻の2人だけで事業を始め、最初の2年間はほぼ休みなしでした。平日は商品を取り扱ってもらうためにペットショップなどへ営業に赴き、加えて商品の受発注や発送、経理も我々だけで行わねばなりませんでした。週末には小売店でのサンプル提供、ペットのイベントやセミナーへの参加、新規取扱店の開拓と多忙を極めました。努力が実を結び、高品質の商品に対する理解が進んだおかげで販路が広がり、今では店舗販売やオンライン販売、卸向け、動物病院と4チャンネルを確保して順調に売り上げを伸ばしています。

2014年からはフルタイム従業員3人、パート1人で運営しています。現在は私がニュージーランドからの商品の仕入れや販売マーケティングを、妻は顧客サービスや商品のブランド戦略、さらに法務や人事を担当しています。日本の消費者の目はとても肥えていますから、ブランド力アップはとても重要。品質には自信がありますから、パッケージに使う素材から写真、説明の記述や印刷の仕上がりまで厳しくチェックしています。こうした点は、日本の商慣習を知る妻に助けられています。

25年前、シアトルで私に日本行きを促してくれた友人とは小学生の時から仲が良く、家族ぐるみの付き合いを続けています。彼をはじめ、ビジネスで知り合った人たちや現在の仕事仲間には恵まれています。そしてもちろん、公私にわたりベスト・パートナーである妻の存在なくして、今の私はありません。

事業は軌道に乗り、すっかり日本に根を下ろしています。しかし、シアトルが私の故郷であることに変わりはありません。家族や親友にもたまには会いたい。今も1年に1度は里帰りしていますが、ゆくゆくは夏の過ごしやすい時期はシアトルで、残りは日本で過ごすようなライフスタイルを追求できればと願っています。

シアトルのお気に入りスポット

日本での生活が25年に及ぶスティーブさんは、シアトルに帰省した際に「ふるさとの味」を求めて必ず立ち寄る店がある。ひとつは、ステーキハウスの Metropolitan Grill、もうひとつは、Chandler’s Crabhouse だ。とくに Chandler’s では、一時帰国から日本に戻る前の最後の日に、両親や家族と一緒に訪れてシアトル名物「ダンジネス・クラブ」に舌鼓を打つのが恒例だそう。以前は横浜にも店舗があったがすでに閉鎖しており、残念がっていた。

取材・文・一部写真:船橋ヒトシ

すてぃーぶ・こりんず/シアトル生まれ。ワシントン州立大学卒業後、1990年に英会話学校講師として来日。1993年に外資系金融機関に転職、1996年に妻の美由記さんと出会う。退職後、オンライン金融業の起業などを経て2010年、ニュージーランドのペットフード製造・販売「K9 ナチュラルフード」の日本販売代理店「株式会社 K9 ナチュラルジャパン」(東京・港)を設立、最高経営責任者(CEO)に就任。
【公式サイト】 K9 ナチュラル

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