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「いつか第九を超える名曲を」 作曲家・菅野祐悟さん

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『昼顔』 『軍師官兵衛』 の音楽に込めた想い

菅野祐悟さん

軽妙な恋愛ドラマに、重厚な歴史物、近未来SFアニメーション。菅野さんの手がける作品のジャンルは、実に多岐に渡る。

曲自体は、ピアノの前に座れば、何かしらできるものなんです。ただ、自分の中で進むべきゴールが見えていないうちに、やみくもにピアノに触ることはしません。例えば、テレビドラマなら、放映時間帯やキャスト、視聴者層といった基本的な条件がありますよね。そのほかに、「王道の演出で高視聴率を狙いにいく」のか、「抑えた演出で新しい層を取り込もうとする」のかというような、作品の目指す方向性もあります。ピアノに触る前に、考えるべきことが山ほどあるわけです。

2014年には、『昼顔』 というドラマの音楽を手がけました。上戸彩さんと斎藤工さん演じる男女が、互いに既婚者でありながらひかれ合う、いわゆる「不倫物」です。ただし、昼ドラではなく夜の時間帯のドラマですから、ドロドロの不倫劇ではなく、ある程度のおしゃれさが求められます。禁断の恋という、ものすごく高い壁をぶち破って恋愛関係に進んでしまう2人は、いわば、感情が暴走している状態。そこで、音楽でも「抑えきれない欲望が暴走する感じ」を表現したいと思いました。そうした要素をすべて考慮した上で作り上げたのが、メインテーマである 『Never Again』 という曲です。

一方、『昼顔』とは対照的な作品が、同じ年に手がけたNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』だ。

まず、舞台は戦国時代であり、時代劇です。長年続いてきた「大河ドラマ」というブランドがあり、その音楽にも様式美がある。ただし、様式美は時代と共に少しずつ変化するものでもありますから、僕としては、2014年を象徴するような新しい大河を見せたいという気持ちもありました。そして、昔から大河を見ているおじいちゃん、おばあちゃんたちの期待を裏切らないようにしたい一方で、若い世代の心にもスッと入るような音楽にしたいと考えました。

主役である官兵衛は、人は殺さずに生かし、戦わずして頭脳で勝つというタイプの戦略家です。また、部下を大切にし、生涯、一人の妻だけを愛し続けました。そうした愛情深い面を表現したい一方で、戦国時代の激しさや、逃れられない辛い運命も表現したかったのです。官兵衛の目玉となるオープニングテーマは、こうしたすべての想いを詰め込んで生まれました。作品全体では、7-8か月をかけて、130曲を書きました。大河ドラマは、大げさに言えば、後世に語り継がれる作品であり、自分の評価を決める作品でもあります。曲作りを進める中で、「本当にこれでいいのか」と自問自答する場面は何度もありましたね。

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