
カナダのケベックを拠点とするエンターテインメント集団 シルク・ドゥ・ソレイユ(Cirque du Soleil) による公演『KOOZA(クーザ)』が、3月16日までレドモンドで上演されています。シルクにとって原点回帰ともいえる本作は、無垢な主人公がさまざまなキャラクターと出会いながら成長していく姿を、エネルギッシュなアクロバットとダイナミックなパフォーマンスとともに描いています。
その中でも観客の目を引くのが、エアリアル・アーティストの品川瑞木(しながわ・みずき)さんです。17歳でカナダ・モントリオールの国立サーカス学校(École Nationale de Cirque)に入学し、卒業翌年にフランス・パリで開催された国際サーカスコンペティション「Mondial du Cirque de Demain」で銅メダルを獲得しました。その後、フリーランスのアーティストとしてキャリアを築き、ここ2年半は『KOOZA』の一員として世界各国を巡っています。
今回は、長期ツアーに参加することでの挑戦や、今後の目標について品川さんにお話を伺いました。
-シルクの舞台に出演し始めたのはいつからですか。
シルクとは2018年から仕事をしています。コロナ禍の前までは単発のイベントや短期のショーに出演していました。長期で毎日開催されるショーに出演するのは、この『KOOZA』が初めてです。もう二年半になります。
-ではレドモンドに来られたのは今回が初めてなのですね。どのような印象ですか。
私のアメリカンドリームはラスベガスでショーをすることでしたが、この『KOOZA』でアメリカ各地を回ってみて、レドモンドで本当に安全で快適に過ごすことができて、一番お気に入りの街になりました。子ども達が街を歩いていて、のどかで素敵です。安心して過ごせるっていいですね。私は落ち着いたエリアの方が好きなのかもしれません。休日は、シアトルに行ったり、この周辺で食べたりと、本当にのんびりしています。
長期ツアーのショーは、パフォーマンスを変更することはほぼありません。特に私のエアリアル・アクトに関しては、ものすごい数の人たちが関わっているので、何も変えてはいけないんです。

-休みの日以外は毎日ショーに出演するために、どんなことに気を付けていますか。
最初の一年半は慣れなくて、とても疲れていました。演技が体に染み込んでいなくて、毎日がストレスと緊張でした。でも、ここ一年ぐらいは慣れてきました。いい意味での慣れですね。毎日同じルーティンで安心感はありますが、頭の中は「ちゃんとやらなくてはならない」というプレッシャーでいっぱいです。
バレエやフィギュアスケートなどでトップを目指す人も同じだと思うのですが、これだけ毎日パフォーマンスをするとなると、健康維持が何よりも大切ですね。食べることも寝ることも。以前はそこまで意識していなかったのですが、最近は違います。特に私のアクトは体重が増加するとものすごく大変なので、食べることにはとても気を付けるようになりました。また、街から街への移動で体が痛くなるのが怖いので、常に体を動かしています。でも、スキーやロッククライミングなどの危ないアクティビティはできません。ショーに関わっているテクニカルの人たちは休みの日こそ体を動かしていて、私も誘ってくれるのですが、日々のショーで疲れているのでできないのが残念です。
-2019年当時のテレビ番組『グッと!地球便』をネットで拝見しました。あの頃と今と違いがあるとすれば、それはなんでしょう。
あの頃は21歳で、まだ子どもでした!今の自分が尊敬するワイルドさを持っていました(笑)。夢だけに集中していて、何も知らないで、何も怖くなくて、「あれになりたい」という思いだけで突っ込んでいったというか。今は落ち着いたと言えるかもしれません。でも、あのワイルドさを今でも見習いたいと思うんです。世界のことを知っているのもすごくいいですが、知りすぎているから逆に手を引くというのもある。でも、またもっとあんなパワーを出していかなくては。今は忙しくはしていますが、その部分はお休み期間だったなと思います。
-これからやりたいことは。
『KOOZA』のキャラクターも好きですが、シルクの他のショーにも出演して、大きな舞台をやっていきたいです。ミュージシャンとのコラボレーションも、ずっとやりたいなと思っています。NFL スーパーボウルのハーフタイムショーなどやれたらと夢見ていますが、有名なミュージシャンとのコラボはアメリカの今の情勢を見ていると、ビザやマネジメントなどが難しそうですね。
あと、パフォーマンスも大好きですが、ディレクションも大好きです。日本で自分が創設したパフォーミング・カンパニーで日本国内でショーをやっていますが、先日、福岡で開催したショーは教え子たちも含めた6〜7人のメンバーをキャスティングして、大成功でした。私は音楽と照明が好きなので、「音楽と照明とパフォーマンスをすべて合わせたらどうなるんだろう」と想像して、それが現実になるのが本当に楽しいです。

-まだ『KOOZA』を観ていない方へのメッセージをお願いします。
シルクは、性別も性的指向も関係なく、能力によって選ばれた人たちが、「自分たちのアクトが一番だ」と、プライドを持ってやっているプロ集団です。その中でも、『KOOZA』は特に、それぞれのアクトにレベルの高い人たちが集まっています。私はずっとそれが普通という環境で仕事をしてきましたし、それが本当の平等ではないかと思うので、これからもシルクにはその点はそのままでいてほしいです。そんな『KOOZA』は、他のショーと比べても特に強いエネルギーを感じられると思いますので、ぜひ刺激を受けに観に来てください。
-ありがとうございました。
品川瑞木(しながわ・みずき)さん略歴
沖縄生まれ。神戸・東京育ち。17歳でカナダ・モントリオールの国立サーカス学校(École Nationale de Cirque)に入学し、卒業翌年にフランス・パリで開催された国際サーカスコンペティション「Mondial du Cirque de Demain」で銅メダルを獲得。フリーランスとして活動しており、世界各地の大規模なライブイベントやシルク・ドゥ・ソレイユの公演、テレビ、メディア・広告などでのパフォーマンスのほか、ショーのディレクターや振付家としても活躍しています。
【公式サイト】www.mizuki-shinagawa.com
【公式インスタグラム】www.instagram.com/mizukishina
