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第1回「着物を着るならシアトルで!」 佐川明美さん

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佐川明美(さがわ・あけみ)さん
大阪府出身。1994年夏に Windows 95立ち上げのため日本のマイクロソフトから本社に異動し、以来シアトル在住。ソフトウェア会社経営などを経て、現在は日本の伝統文化を紹介する非営利団体を運営し、草月流生花のクラスも開講している。ワシントン州日米協会および生花インターナショナルの理事。

着物を着るならシアトルで!

中学生の時、父が初めて私のために買ってくれた着物。あの頃は、父に感謝するどころか、「着物なんて時代遅れのものになぜこんな大金を使うの?」と悪態をつくばかりだった。

それから30数年後 、夫の会社のニューイヤーパーティーに招かれた。男性はタキシード、女性はカクテルドレスとのお達し。どんなに豪華なドレスを新調したって、背丈や体型ではアメリカ女性にかなうはずもないと、着物で出かけることにした。結果は・・・下手なドレスより、よっぽどパーティー映えするじゃない!みんなから賞賛を浴びてご機嫌の私、「これからは、ドレスにお金を使うくらいなら、着物!」と心に誓った。

そんな時、年に一度、シアトルのアジア系コミュニティが主催するコンサート、Celebrate Asia に誘われた。いそいそとまた着物で出かけたのだが・・・キンキラキンのサリーやパンジャブドレス、ピンクの鮮やかなチマチョゴリ、体にフィットしたチャイナドレスの海の中で、着物姿は私を含めて二人だけ。これではあまりに寂しくない?もっと着物姿が多くてしかるべき!

ちょうどその年くらいから日米協会の役員になったのをきっかけに、翌年の Celebrate Asia には、コンサート開催時間前に「着物ジャック」と称して日米協会主催のレセプションを開くことにした。単に「みなさん、着物姿でコンサートに出かけましょう」と声をかけただけなのだけれど。驚いたことに、30人を超える人たちが、それぞれお気に入りの晴れ着姿で集まった。

シアトルにはこんなにたくさんの着物ファンがいたんだ!

着付けを点検し合ったりした後、グループ写真をパチリ。その後、ベナロヤホールのロビーに繰り出すと、会場が一気に華やかになった感じ。周りの人たちからは「ワンダフル!」と絶賛され、「写真を撮らせて」とのリクエストも。グラマラスな体型でも、過剰に肌を露出する必要もない。この民族衣装のおかげで、みんな何だかモデルかセレブになった気になれる。着物万歳!

これに気を良くして、一度日本に帰った時、着物でお出かけしてみた。ところが・・・地下鉄本町駅で電車を待っていた時、見知らぬ年配の女性が、私の着物姿を頭のてっぺんから足元まで舐めるように眺め倒し、無言で去っていった。まるで品評会の審査員?着付けのあら探しをしていたのだろうか?あからさまな批評にさらされて、正直、めげた。おまけに階段の上り下りなど、草履でやたら歩き回るのはやはり疲れる。途中で雨が降ってきたりしたら大変だ。

その点、シアトルだと車で移動も楽だし、人の目を気にすることもない。少々帯が曲がっていても、みんな「ビューティフル!」と言ってくれるし、「また着物を着たい」という気になる。習うより慣れろで、着る機会が増えれば着付けも上手になる。そんなこんなで、シアトルの方が着物を着るにはよっぽど恵まれていると思う。

もっと着物を着る機会を増やしたいがために、お茶のお稽古にも通い始めた。母のお下がりを着てお稽古に励む姿を写真に撮って送ると、母はそれを自分の友達に見せびらかす。写真を見た母の友人は、「私のも明美ちゃんに着てもらって」と、古い着物を母に持ってくる。私は実家に帰るたびにそれらをシアトルに持ち帰る。こうしていつの間にか手持ちの着物が増えていく。

2018年で10周年を迎える Celebrate Asia は、2月11日にベナロヤ・ホールで開催される。指揮者は中国人、メインの楽器はシタールと、ステージ上では日本の存在は薄いけれど、その分、客席で日本の存在感を示しましょう。

あでやかな着物姿でベナロヤ・ホールを埋めるのは本当に気持ちがいいもの。すでに毎年恒例にしている方も、今回初めての方も、ぜひ着物で。会場でお目にかかれるのを、楽しみにしています!

文・写真:佐川明美

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