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第10回 「着物を装うことは、日本文化の一つ」

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遠山美津子(とおやま・みつこ)さん
大阪府出身。留学でシアトルに来たのは1974年。ポートランド州立大学を卒業後、結婚し、家族で約6年日本に住み、再びシアトルへ。日系企業で30年近く勤務して退職。2014年に非営利団体 Japan Arts Connection Lab(Jaclab)の役員となり、日本文化を紹介するさまざまなイベントを企画運営している。

実家が3代続く呉服屋でしたので、子供の頃から着物がいつも身近にありました。

母が毎日のように着物を着ていましたが、私が50歳をすぎたころに着物に興味を持つようになってから、晩年に入った父が着物の美について、また、その伝統工芸の尊さについて、情熱を持って話してくれました。私の持っている着物はほとんどが父が選んで仕入れた着物ですから、箪笥から着物を出すのは実家を思う時間でもあります。

着物は、洋服のようにジッパーを上げただけでは着れませんが、着れば着る程、着心地が良くなり、帯、帯留め、その他の備品とのコーディネートが楽しくなってくるものです。

装道(そうどう)という言葉があるように、着物を装うことは書道や華道のような日本文化の一つでありますし、他の道と一緒で、繰り返しの練習の賜物です。ですから「今日はきれいに着れた!」という達成感を得た後の外出は嬉しいものです。

私にとっては着物は芸術品であり、実家でもあるので、それを身にまとう機会があるのは貴重です。そんな自己満足にひたるために、特に退職してからは、趣味を兼ね着物を着る機会を増やしてきました。

シアトルには外国の文化を受け入れやすい雰囲気があるので、紹介しやすく、日本の文化にも親しみを持ってくださる方が多いです。雨の日も車移動ですし、夏も乾燥しているので着物が着やすい条件が整っています。

娘・孫と

シアトルの Nichibei Women’s Network という働く女性の団体(NWN)の中にも着物のサブクラブがあり、着物を愛する人たちが情報を交換したり、一緒に着物を着て行くことができるイベントを開催しています。お箏の発表会、お茶(表千家)のお稽古や実演のお手伝いにも着物で出席します。

着物を維持するには、きちんと管理する必要があります。化繊、綿の着物は自宅でお洗濯もできますが、絹の着物は、定期的に日本に持ち帰り、洗い張りをする必要があり費用がかかります。その頻度を少なくするためにも着る前後に風を通すことや、乾燥した場所に保管することはとても大切です。そしてシミを見つけた時は、かなり慎重にシミ取りをする必要があります。

日本の伝統芸術を身近に感じる環境に生まれたので、長期間にわたりアメリカに在住しているにもかかわらず、日本文化を愛し続け、現在は、縮小する傾向にある日本伝統文化芸術の伝承者をシアトルにて後援する非営利団体 Japan Arts Connection Lab(Jaclab)に携わっています。5月31日に5年目にして初のファンドレイジングを目的としたイベントを、日本から協力してくれるアーティストを迎えて開催します。私たちの活動に興味を持ってくださる方はぜひご参加ください。このイベントでも着物で出席してくださる方を募ろうと計画中です。

文・写真:遠山美津子

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