シアトルから北へ車で約25分のところにあるエドモンズ・コミュニティ・カレッジ。その野球部は、地区大会では22回優勝、ノースウエスト大会では8回優勝し、これまで69人をメジャーリーグに輩出してきた実績があることから、野球留学に選ぶ留学生がいます。
野球部員は野球場の隣にある寮に住み、練習に励みます。NFL のシアトル・シーホークスと契約を結んで野球部員が試合の警備を担当することで野球用品などにかかる費用を賄っているため、特別な費用もかかりません。実績がある選手はスポーツ奨学金を受けてエドモンズ・コミュニティ・カレッジから4年制大学に編入します。
今回はそんなエドモンズ・コミュニティ・カレッジ(以下、EdCC)に野球留学をしている、濱川裕吾さんと江藤拓也さんに、同カレッジの留学生サービスのクローチ貴子さんが、お話を伺いました。
濱川裕吾さん 「高いレベルでの野球を経験。将来は日本でプロになりたい」
出身 | 東京都 |
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専攻 | スポーツマネジメント |
経歴 | 2017年3月に EdCC に入学。 |
– 野球を始めたきっかけ、留学をしようと思ったきっかけは?
小さい時から父親とキャッチボールをしていて野球が好きだったので、小学2年生の時に野球チームに入りました。高校2年生の秋大会でベスト4入りし、スポーツ留学関係者から留学のオファーをいただいたのですが、テレビではメジャーリーグの試合を観戦していたものの、正直、アメリカで野球ができるとは思ってもみませんでした。高校卒業後は人と違う道を進んでみたかったので、「これだ!」と思い、留学を決意しました。昔から六大学野球を観ることが好きでそのレベルもわかっていたからこそ、「あの選手たちと違う手段を使わなければ勝てない」と思ったのも留学を決めた理由のひとつです。アメリカでは勉強して成績が良くないと試合に出られないので、なんとしてでも勉強する環境も気に入っています。
日本の大学で野球をする場合、怪我などをすると野球ができなくなり、その先が見えなくなってしまいがちです。けれど、アメリカの大学で野球をする場合は、もし怪我をして野球ができなくなっても、英語を身につけることができます。野球の他にも身につけられるものがあるということも、アメリカで野球留学をしようと思ったもうひとつの理由です。
– 野球留学の流れ、学校選びは?
トライアウトのために高校3年生の9月に1週間渡米し、EdCCを含む全米各地の5校ほどでトライアウトをし、全校から合格をもらいました。EdCC で合格をもらったのは8人中2人です。僕がその中から EdCC を選んだのは、強いチームだから。寮がグラウンドの隣にあることや人工芝のグラウンドだったことも理由の一つになりました。また、大学によって金属バットか木製バットか異なりますが、僕は木製バットを使用する大学を希望していたので、EdCC が木製バットを使っていることももう一つの理由です。EdCC のスカウト・デーにはメジャーリーグや4年制大学から80名程の関係者が来るのでスカウトされやすいということも大きなポイントでした。
– ここに来て良かったことは?
高いレベルでの野球を経験できていることです。特に昨年は地区大会で優勝し、ノースウエスト大会(ワシントン州、オレゴン州、アイダホ州、カナダのブリティッシュ・コロンビア州)で3位になることができました。個人的にはそのチームで1年間、チームの3番打者を任され、ノースウエスト大会で内野手優秀賞もいただくことができ、いい経験になりました。
– チャレンジはありましたか?それを克服した方法は?
兎にも角にも英語!まったく英語を話せない状態でアメリカに来たので最初はどうなるかと思っていました。それでも野球部のチームメート達が一つ一つ丁寧に教えてくれたり、話す機会をたくさん作ってくれたりしました。変なプライドもなかったので、わからないことがあればすぐにチームメートに聞いたりしていました。今でもそうですが、野球部の仲間と一緒にいることが何より英語力の向上につながっていると思います。
– 将来の目標は?
Division 1の4年制大学に編入を考えています。今のところ8校から奨学金のオファーをいただいていますが、これからまたシーズンが始まってスカウトが来るので、どんどんオファーをもらって、その中から良い4年制大学を編入先として選びたいと思います。そして学士号を取得し、卒業したら日本でプロ野球選手になりたい。アメリカの大学から日本のプロ野球選手になった人はごくわずかなので、日本のプロ球団にアメリカで活躍している日本人の存在を示し、ドラフトで指名されることが今の目標です。野球をやっている以上、日々努力すればいつか届くと信じています。
– 留学に興味がある人に向けてのアドバイスを。
アメリカに留学できるチャンスがあるのであれば、ぜひ挑戦するべきだと思います。日本では経験できないことが多いし、自分が「外国人」となることで、外国人の気持ちも理解することができます。そして、留学は両親に負担をかけてしまうことが多いので、日本では当たり前と思ってしまいがちな両親への感謝の気持ちを忘れてはいけないと、留学してからより一層感じています。
工藤拓也さん 「プロの野球選手、トレーナー、または日米の懸け橋になりたい」
出身 | 神奈川県 |
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専攻 | 国際ビジネス |
経歴 | 2018年6月に EdCC に入学。 2019年1月に4年制大学に編入。 |
– 野球を始めたきっかけ、留学をしようと思ったきっかけは?
幼稚園と小学校の合計2年間はインターナショナル・スクールに通っていたので、そこから英語に興味を持ち始めました。小さい頃から両親にテニス、バスケ、サッカー、ゴルフ、体操などいろいろなスポーツを経験させてもらいましたが、小学校6年生の時に友達に誘われて野球もやりはじめました。中学校では2年生からクラブチームに入ったりもしましたが、怪我をして野球が満足にできなくなりました。高校でも最初は怪我に苦しみましたが、高3の夏の大会ではベンチ入りしベスト16に貢献。まだまだ野球をやりたいという気持ちが強く、英語も好きだったこともあり、アメリカで野球をやってみよう、と留学を決意しました。小さい時からメジャーリーグをテレビで見ていたのも、アメリカで野球をしたいと思ったきっかけの一つです。
– 野球留学の流れから学校選びは?
シアトルは治安が良く、自然が豊かなので、シアトル近郊で野球が強いと聞いた EdCC を選びました。でも、野球部に入るには、まず、トライアウトをして入部を許可される必要があります。トライアウトのための渡米はできなかったので、自分の野球ビデオをコーチに送り、入部許可をもらってから留学の手続きを始めました。
– ここに来て良かったことは?
大学の寮に住んでいるのですが、たくさんのイベントに参加して、日本では出会えない国際色豊かな友達がたくさんできたこと。みんなでご飯を食べに友達の家にお邪魔したり、イベントに参加したりして、楽しく過ごしています。そして、自分で何でもしなくてはいけないので、一人で何でもできるようになってきました。
– チャレンジはありましたか?それを克服した方法は?
親元を離れ、誰も知り合いがいないところに飛び込んでいくのには、かなり勇気がいりました。でも友達をたくさん作ることで、寂しさもまぎれましたね。ホームシックになる時もありますが、家族や友達に支えてもらって、 いつでも話せる環境を作っていきました。あとは、レストランでのアメリカ人との会話がきつかったです。彼らの会話のスピードが速いので。海外から来たと言ってもゆっくり話してくれないですからね。なのでわかるまで、何回も聞き返し、最近やっと慣れてきました。
– 将来の目標は?
たくさんやりたいことがあってまだ決めかねているのですが、プロの野球選手、トレーナー、または日米の懸け橋になり、アメリカに興味がある日本人学生の手助けをしていけるような仕事をしていきたいと思っています。あと、犬が好きなので、将来的には犬を助けることもしていきたいと考えています。
– 留学に興味がある人に向けてのアドバイスを。
それなりの覚悟を持って、留学することをおすすめします。覚悟をして留学準備をしないと、後で後悔します!英語を話せることのアドバンテージは大きいので、勉強しておくとどんな分野においても無駄はないと思います。
エドモンズ・コミュニティ・カレッジ 留学生サービスのクローチ貴子さんからの一言:文武両道は簡単なことではありませんが、スポーツ以外での分野でも何かを身につけることは将来役に立つはず。一度日本国外に出てみて異文化を体験し、現地で言語を学んでみると視野が広がります。ますますグローバル化していく日本のこれからを支えていく日本人として、ぜひ活躍してほしいと思います。
写真提供:エドモンズ・コミュニティ・カレッジ 留学生サービス