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ワシントン州における法定相続について:ワシントン州で遺言書がないまま亡くなったら、遺産はどうなる?

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これまでエステートプランの大切さについてお話してきましたが、今回は遺言書がないまま亡くなった場合に遺産がどのように分配されるのか(法定相続)についてお話しします。

法定相続による相続人の順位や割合などは、州によって異なります。今回ご説明するのは、あくまでもワシントン州法による相続ですので、ご注意ください。

目次

純資産とは

まず、故人     の所有する動産・不動産すべてをまとめた「総資産」の中から、家産免除法(homestead exemption)や家族手当て(family support)、その他の法律によって分配の対象とならない資産や、故人の葬儀費用や負債等を引いた残りの資産が純資産(net estate)となります。

遺言がない場合の純資産の分配順位と割合

遺言がない場合の純資産の分配順位と割合は次の通りです。

生存配偶者(またはドメスティック・パートナー)がいる場合

生存配偶者(またはドメスティック・パートナー)がいる場合、夫婦共有財産と特有財産は次のように分配されます。

a. 夫婦共有財産については、故人の持ち分すべてが生存配偶者へ
b. 特有財産については:

  1. 生存している子孫(子どもや孫も含めた直系卑属)がある場合、二分の一が生存配偶者へ
  2. 子孫が生存しておらず、故人の親(父、母、または両方)か親の子孫(故人にとって兄弟)が生存している場合は、四分の三が生存配偶者へ
  3. 子孫、親、または親の子孫が生存していない場合は、特有財産すべてが生存配偶者へ。

生存配偶者(またはドメスティック・パートナー)以外の人に分配する場合、または生存配偶者がいない場合

生存配偶者(またはドメスティック・パートナー)以外の人に分配する場合、または生存配偶者がいない場合の分配は次の通りです。

代襲相続の例
  1. 子孫が生存している場合は、子孫へ。故人の子孫全員が故人と同じ度合いの親族関係にある場合は平等に分割されますが、同等でない場合はより遠い子孫が代襲相続することになります。

    代襲相続とは、相続人となるはずの人が故人より先に亡くなっている場合に、亡くなった相続人の子どもが代わりに相続することです。

    例えば、独身のAさんに子どもが3人いて、Aさんの死亡時に3人全員が生存している場合、Aさんの純資産は3人に平等に分配されます。しかし、子どもの一人がAさんより先に亡くなっている場合、亡くなった子どもの相続分はその子ども(Aさんにとって孫)が代わりに相続します。(図上)
  2. 子孫が生存しておらず、故人の親が生存している場合は生存している親へ。
  3. 生存している子孫も親もない場合は、生存している一方または両方の親の子孫へ。これら子孫が故人と同じ度合いの親族関係にある場合は平等に分配されますが、同等でない場合はより遠い子孫が代襲相続することになります。例えば、独身のAさんが亡くなった時点で、Aさんに子どもも親もおらず、兄弟3人が生存している場合、Aさんの純資産は兄弟に平等に分配されます。しかし、兄弟の一人がAさんより先に亡くなっている場合、亡くなった兄弟の相続分はその子ども(Aさんにとって甥または姪)が代わりに相続します。
  4. 生存している子孫、親、親の子孫がない場合は、故人の祖父母へ。母方と父方の両方の祖父または祖母が生存している場合、母方の祖父または祖母が半分、父方の祖父または祖母が半分を相続します。
  5. 生存している子孫、親、親の子孫、祖父母がない場合、祖父または祖母の子孫(故人にとっておじ・おば)へ。母方の祖父母の子孫を一つのグループ、父方の祖父母の子孫を一つのグループとして、グループに平等に分配されます。一つのグループの中で全員が故人と同じ度合いの親族関係にある場合は平等に分配、同等でない場合はより遠い子孫が代襲相続することになります。

養子の場合

なお、ワシントン州法では、法的に養子となった子どもは、養親から相続する権利を持つので、実親の法定相続人とはみなされません。

また、継子(stepchild)も基本的には法定相続人とはみなされないので、例えば、子どもを連れて再婚する場合、新しい配偶者が子どもを法的に養子としない限り、子どもは親の再婚相手から相続する権利はありません。(ただし、州法上の例外として、継子以外に法定相続人がおらず、遺産がすべて州に没収されてしまうのを回避するために、継子が相続人になるということはあり得ます)     

執行人になれる近親者の順位

遺言がない場合、また遺言書に指名された執行人全員が辞退した場合や亡くなった場合、執行人になれる近親者の順位は次の通りです:

  1. 配偶者(またはドメスティック・パートナー)または、もし配偶者に執行人指名の希望がある場合は、希望された人
  2. 子ども
  3. 父親または母親
  4. 兄弟
  5. 甥または姪

これらの近親者が申し出ない場合は、トラストに指名されたトラスティー、故人の後見人、故人の遺産の受け取り人なども候補に挙がります。しかし、これらの人たちが死亡日から数えて40日以内に裁判所に申し出ない場合は、故人とまったく関係のない執行人が裁判所によって指名されてしまうこともあり得ます。

上記のことを考えると、やはり州の法律に任せるのではなく、万が一のために生前にきちんと遺言書を作成しておくことが、手続きをスムーズに進めるための鍵になると言えます 。

Ako Miyaki-Murphey, J.D.
パーキンズ・クーイ法律事務所(Perkins Coie LLP)
シカゴでパラリーガルとして働きながら2002年にJohn Marshall Law School(現在はUniversity of Illinois Chicago School of Law)でJ.D.を取得。2002年から2006年までハワイ州の弁護士事務所で勤務した後、2006年にワシントン州弁護士資格を取得。シアトルのFoster Garvey弁護士事務所でトラスト・エステート法の経験を積んだ後、2020年から現在のPerkins Coie LLPに勤務。エステートプランの作成だけでなく、ワシントン州のプロベート手続きやトラストの管理、日本在住の遺産受取人代理や、相続税・贈与税申告書の作成も行う。
【公式サイト】www.perkinscoie.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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