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ワシントン州における資産の共同名義 – 夫婦共有財産について

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前回は、ワシントン州法における共同名義の形態についてお話ししました。今回は、その一つ、夫婦の共有財産についてお話しします。

もくじ

Community Property

ワシントン州は夫婦共有財産制の州なので、夫婦が婚姻中に得た資産は、基本的に community property という形で所有されます。

また、両者が18歳以上で、一方が62歳以上のカップルの場合、ワシントン州の必須条件を満たしていれば、州に登録した上で「ドメスティック・パートナー」の資格を得ることができるので、ドメスティック・パートナー同士で共有している財産も、州法上は夫婦共有財産と同様に扱われます。

そのため、ここでは「配偶者」「夫婦」という言葉の中にドメスティック・パートナーも含まれているという前提でご説明します。

Community propertyの基本ルールは、婚姻後(またはドメスティック・パートナーとして登録後)、配偶者の一人、または夫婦が一緒に取得した財産はすべて共有財産であるというものです。しかし、これには例外があります。

特有財産

まず、結婚前に所有していた財産、また、結婚後に夫婦の一方が贈与や相続によって取得した財産、そしてそれらから派生する金銭的な権利は夫婦共有財産ではなく、取得した人の特有財産(separate property)とみなされます。

特有財産とは、それを取得した配偶者のみに帰属するので、その配偶者が単独で管理し、処分する権利を持ちます。代表的な例を挙げると、妻が妻の両親から受けた贈与は妻の特有財産とみなされるので、夫の関与なしに妻が単独で管理し、処分できます。

夫婦共有財産

夫婦共有財産については特有財産と同様で、婚姻後に取得した財産とそこから派生する金銭的権利も含まれます。

例えば、結婚後の夫婦の給与やボーナス等は基本的に夫婦共有財産ですし、それを元手に購入した不動産、またそれを投資することによって得られた利息や配当金や不動産を賃貸することによって得られた家賃収入も夫婦共有財産となります。つまり、形が変わっても、夫婦共有財産を元手に取得した財産は、すべて夫婦共有財産のままということになります。

夫婦の持ち分は平等、つまり半分ずつですが、基本的に夫婦のどちらか一方が夫婦共有財産を管理できます。ただし、自分の持ち分を超える分を遺贈したり、配偶者の許可を得ずに夫婦共有財産を贈与することはできませんし、夫婦共有財産が不動産である場合、それを購入・売却する際には証書に夫婦の署名が必要になります。また、その不動産を担保として使用する場合は関連書類に夫婦の署名が必要になるので、夫婦の一方が勝手に夫婦共有財産の不動産を担保に入れることはできません。

上記が基本のルールですが、この特有財産、夫婦共有財産という特性は夫婦の合意で変更することが可能です。例えば、夫婦共有財産合意書に署名することにより、その時点でお互いが持っている財産や、これから得る財産のすべてを夫婦共有財産にしてしまうことができます。夫婦共有財産合意書はエステートプランにおいて大変重要な書類ですので、必ず専門家にご相談ください。

特有財産と夫婦共有財産を混同した場合

特有財産と夫婦共有財産という特性を維持するには、これらの財産を混同せず、別の口座に入れて管理することが重要です。

これらを混同してしまうことによって、特有財産が夫婦共有財産に変わってしまうこともあるので要注意です。

例えば、先述の例で、妻が妻の両親から受けた贈与は妻の特有財産ですが、これをうっかり夫婦の共有財産口座に入金し、そこに給与が入ったり、そこから夫婦の生活費が支払われたりして、元の贈与額やそれに付いた利息が追跡不可能になると、妻の特有財産が夫婦共有財産に変化してしまうわけです。こういった場合、妻が明確な証拠をもって口座残高のどこまでが特有財産であるかを証明できない限り、すべてが夫婦共有財産とみなされます。

夫婦のどちらかが亡くなった場合

夫婦のどちらかが亡くなった場合、亡くなった配偶者が所有していた特有財産のすべてと夫婦共有財産の半分が、その人の遺言に沿って分配されます。

遺言書がない場合、亡くなった人の財産を受け取る権利が誰にあるのかは、ワシントン州法によって決まります。

特有財産については、子供、両親、兄弟が生存しているかどうかによって配偶者の受け取り分が変わりますが、亡くなった配偶者の持ち分である夫婦共有財産の半分については、残された配偶者がすべて受け取る権利を持ちます。しかし、実際の分配はプロベートを通して行う必要があるので、夫婦共有財産を所有することがプロベートを避けることにはなりません。

Ako Miyaki-Murphey, J.D.
パーキンズ・クーイ法律事務所(Perkins Coie LLP)
シカゴでパラリーガルとして働きながら2002年にJohn Marshall Law School(現在はUniversity of Illinois Chicago School of Law)でJ.D.を取得。2002年から2006年までハワイ州の弁護士事務所で勤務した後、2006年にワシントン州弁護士資格を取得。シアトルのFoster Garvey弁護士事務所でトラスト・エステート法の経験を積んだ後、2020年から現在のPerkins Coie LLPに勤務。エステートプランの作成だけでなく、ワシントン州のプロベート手続きやトラストの管理、日本在住の遺産受取人代理や、相続税・贈与税申告書の作成も行う。
【公式サイト】www.perkinscoie.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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