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第1回 ドメスティック・バイオレンス(DV)とは

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はじめまして。ドメスティック・バイオレンスのアドボケイト(※この意味は後のコラムでご説明します)をしている、ひろこと申します。これから毎月ドメスティック・バイオレンスに関する情報を提供させていただきますので、よろしくお願いします。

ドメスティック・バイオレンス(以下、DV)という言葉は、日本でも新聞やテレビでかなり使われるようになりました。ワシントン州でも昨年、タコマ警察署長が職務用拳銃で別居中の妻を殺害し自殺するという事件があり、その離婚申し立ての理由が DV だったということで、シアトルでもかなり話題になったことから、ご存知の方も多いと思います。しかし、初回となるこのコラムでは、あえてこの言葉の定義からご説明したいと思います。

ドメスティック・バイオレンスとは

"ドメスティック・バイオレンス" という言葉は英語の "Domestic Violence" のカタカナ書きで、日本語に訳すと "家庭内暴力" になります。しかし、日本における "家庭内暴力" という言葉は、「子供から親に対する暴力」という意味で使われて来ました。「家庭内で起こる暴力」という意味ではこの他に 「親から子供に対する暴力」(児童虐待)、「年老いた親に対する暴力」(老人虐待)、「配偶者間の暴力」があります。

ドメスティック・バイオレンス(DV)という言葉は普通、配偶者(その他のパートナーも含む)間の暴力という意味で使われています。配偶者間という意味では、妻から夫に対する暴力もないわけではありませんし、同性愛者間の男性からパートナーの男性、女性からパートナーの女性にたいする暴力もあります。しかし、暴力を振るう側は95%が男性であること、また、これは人種・階級・職種・年齢・宗教に関係のない世界的な現象であることなどから、ここでは主に(元)妻、(元)恋人など親密な関係にある(あった)男性から女性に対する暴力として話を進めたいと思います。

暴力とは

では、この暴力というのは何を指すのでしょうか。最もわかりやすいのが、「殴る」「蹴る」「首を絞める」「髪を引っ張る」などの身体的暴力です。法律的にも身体への直接的な暴力があること、または銃・ナイフなどの武器を使って脅かすことで被害者が命の危険を感じることが重要視されます。しかし、暴力は身体的なものに限りません。専門家によって分類は異なりますが、ここでは4つに分けてみたいと思います。

  1. 身体的暴力(殴る・蹴るなど)
  2. 精神的暴力(脅かす・ののしる・ばかにするなど、主に言葉による暴力)
  3. 性的暴力(嫌な性行為の強要・避妊に非協力的であることなど)
  4. 社会的暴力 (お金を渡さない、外での仕事をさせないなどの経済的暴力、友達 ・親・兄弟などと接触させない、手紙・電話をチェックするなど)

夫婦喧嘩と DV の違い

では、夫婦の DV の場合、いわゆる「犬も食わない」といわれる夫婦喧嘩とどう違うのでしょうか。

夫婦が同等で、日頃からお互いに言いたいことを言い合ってたまに喧嘩になることもあるというのであれば、何の問題もないでしょう。一方、DV は、日頃から片方が一方的に前述のようなような暴力を振るうということです。殴る・蹴るなどの身体的暴力は1週間に1回や月に1回か、もっと稀かもしれません。しかし、言葉や態度で脅かす、悪いことは全部妻のせいにする、「お前は何もできない」「誰もお前など相手にしない」とばかにする・ののしる・人前で恥をかかせる・まるで召使いのように扱う・友達に会わせない・電話をチェックするなどといった行動が日常的にあれば、DV であると考えられます。つまり、DV とは「夫や恋人が言葉やその他の暴力を使って脅かすことで、配偶者や恋人の生活をコントロールする」ということなのです。

DV の特徴

最初は「心配だから」「愛してるから」と言って妻の行動(時間・場所・誰と会う・何をする)をチェックする、ちょっと遅くなると探しに来る、というようなことから始まるかもしれません。

そのうちに友達や妻の家族を批判して会わせないようにする、妻が出かけようとすると頼むから行かないでくれとしつこく言ったり、不機嫌になるので出かけづらい、友達が来ると嫌な顔したり、「何の用だ」と言ったりするので友達が来なくなるというように、妻を他の人から引き離し、孤立させるかもしれません。

そして、そのうちに妻を批判する・馬鹿にする・精神に異常をきたしているかのように扱う(鍵をいつも妻が置く所から隠してしまう、電話番号を変えるなどして妻を混乱させる)というようなことが頻繁になれば、妻も「自分に落ち度があるんじゃないか」「自分がおかしいのではないか」と思うようになるかもしれません。これがコントロールです。

これに身体的暴力が加わると同時に「お前が~をしなかったからだ」と妻のせいにしたり、「~をしないと殴るぞ」と言って脅かされれば、したくないことでも怖いからする、次はもっと夫の言う通りにしようなどと考えるようにようになってしまいます。このように、次第にコントロールがひどくなることが DV の特徴です。

次回は、「DV はなぜ起こるのか」を考えてみたいと思います。

掲載:2004年3月

DV に関する相談所:
API Chaya
P.O. Box 14047, Seattle, WA 98114
【メール】 info@apichaya.org
【無料ヘルプライン】1-877-922-4292
【公式サイト】 www.apichaya.org/japanese

LifeWire(旧称:Eastside Domestic Violence Program)
【クライシス・ライン (24時間受付)】 (425) 746-1940 または (800) 827-8840

※現在、「ひろこさん」に直接連絡できるところはありません。

コラムを通して提供している情報は、一般的、および教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 このコラムから得られる情報に基づいて何らかの行動を起こされる場合は、必ず専門家に相談するようにしてください。

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