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最終回 DV 被害者のために、家族・友人としてできること

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DV の被害者の話を信じる

もし、友達や家族が DV の被害にあっていると言ったら、まず信じることです。

なぜなら、DV の被害者は通常、「これは家の中の問題だから」と思って他人に話さないからです。被害者であっても、自分に責任がある、恥ずかしい、言っても信じてもらえない、まともに取り合ってもらえないなどと思ってなかなか言いません。ですから、被害者が話し出したら、よく聞いてあげることが必要です。

あなたが加害者を知っている場合、加害者は暴力を振るう人とはとても思えないかもしれません。

でも、加害者は外ではとても優しくておとなしいにも関わらず、家では妻や子供に乱暴する、脅かす、怒鳴り散らす、まさに二重人格、というのはとてもよくあることなのです。

外ではその場に応じた役割をきちんとこなす、仕事もできる、周りからも信頼されるということは大切なことであると加害者はちゃんと知っています。ですから、家の中という、他に目撃者がいないところでは、自分の思い道理にしてもいいと思っています。加害者にとって、妻子は自分の所有物か奴隷のようなもの、コントロールの対象でしかありません。

被害者を非難しない

被害者がどんなに加害者を怒らせないように努力しても、加害者は何か問題を見つけて被害者を非難します。被害者に恐怖感を植えつけることでコントロールしようとしているのですから、きりがありません。

もちろん、被害者は完璧ではありません(どこに完璧な人がいるでしょうか)。でも「あなたが何か怒らせるようなことを言ったから、彼つい爆発しちゃったんじゃないの」とか、「馬鹿なふりをしてなんでもはい、はいと言って、彼を喜ばせていればいいのよ」などという助言はますます被害者を苦しめることになるだけです。

DV は被害者のせいではないことを忘れないでください。

噂話にしない

被害者が DV について相談した場合、他人にその内容を話すことはとても注意が必要です。その話が回りまわって加害者の耳に入れば、被害者にとってとても危険な状況になります。加害者は自分が家族に暴力を振るっていることなど誰にも知られたくありません。また、DV は被害者にも非があると思っている周囲の人から被害者が仲間はずれにされるかもしれません。

ですから、被害者とよく相談して信頼できる人を見つけ、その人にだけ話すよう、細心の注意を払う必要があります。

DV について学ぶ

DV とは何か、原因・サイクル・近くの DV の団体などについて、よく勉強することです。できればグループを作って一緒に勉強すれば、被害者を皆でサポートできるようになるでしょう。今は本やインターネットで日本語でもたくさんの情報がありますし、DV の団体でもいろいろパンフレットを備えています。

被害者の安全が一番大切なので、どうしたら被害者が安全でいられるか安全策(Safety Plan)を学んだり話し合うことが必要です。

「子供のために我慢しなさい」と言わない

被害者は当然、子供のためにどうしたらいいか考えています。「子供から父親を取り上げてはいけない」と暴力に耐えています。でもそれは被害者にとってとても危険なことです。また、子供にとっても良いことではありません。

最近特に家庭内暴力の中で育った子供への影響が問題になっています。母親が被害者の場合、子供が直接暴力の被害者になる率が高い(少なくとも50%)、特に女の子は性暴力を受ける率が高いという以外に、"安全で、お互いに支えあうべき" 家庭が、"暴力的で危険、母親や兄弟、自分がいつも父親に殴られ、馬鹿にされ、おどかされている" 家庭に育ったらその子供に与える影響は計り知れないものがあります。ですから、そういう状況にとどまることが子供にいいとは言えないわけです。

「早く別れなさい」と言わない

一緒にいるのは良くないから、「じゃあ別れなさい」と言ったらいいのかというとそうではありません。なぜなら、別れるというのはとても危険なことだからです。加害者は妻子は自分のものと思っていますから、そういう家族がいなくなってしまうのは嫌なのです。

DV による殺人事件は妻が離婚しようとしている時、または離婚直後に起こります。ですから、家を出ようと思ったら細心の注意が必要です。DV の団体に連絡し、アドボケイトとよく話し合ってください。

被害者の決断を尊重する

どうしたら被害者に一番いいのかは、被害者自身が決断することです。これは被害者の人生なのですから。周りができることは、話を聞くこと、信じること、情報をあげること、一緒に是非を考えることなどを通してサポートすることです。

被害者が好きなことを一緒にする

DV は複雑な問題で、時間がかかります。とても疲れます。ですから、被害者が好きなこと、楽しめることを一緒にすることはとても大切です。特に加害者は家族や友達に会わせない、仕事をさせない、被害者が外に出るのを嫌うなどで被害者を孤立させがちです。ですから友達としてつきあい続けることはとても大切です。

自分で被害者を救おうとするのは避ける

被害者をサポートすることはとても大切です。しかし、被害者の問題を全部解決しようとするとあなたがまいってしまいます。なぜなら、問題はとても大きく複雑だからです。あなたの安全についてもよく考えなくてはなりません。

また、被害者のためにと思って、一生懸命助けたのに、被害者は言った通りしなかったとか、被害者が決心を変えたとかで、あなたは落胆し、「もう助けてあげない」ということにもなりかねません。

被害者が加害者と別れることはいろんな理由でとても難しいことです。ですから、躊躇したり、決心を翻したり、というのは良くあることです。そうなっても被害者が孤立しないよう、友達であり続けることがとても大切です。

掲載:2005年1月

家庭内暴力・性暴力被害者のための日系人専門アドボケイト
ひろこさん

名古屋大学教育心理学専攻。埼玉県児童相談所・東京都下の一般病院・精神科病院などでの心理職・カウンセラー歴10年、インディアナ州立大学で心理学修士、ロサンゼルスでインターン後アジア系ドメスティック・バイオレンス被害者用シェルターに勤務。2003年5月から2004年8月までドメスティック・バイオレンス(DV)の被害者のための非営利団体 Asian & Pacific Islander Women & Family Safety Center(アジア・太平洋諸島出身の女性と家族のためのセーフティ・センター、現 API Chaya)でアドボケイトとして勤務。DV・性暴力などの被害者に直接相談に応じる他、DV についてのコミュニティ教育やアウトリーチに力をいれています。

DV に関する相談所:
API Chaya
P.O. Box 14047, Seattle, WA 98114
【メール】 info@apichaya.org
【無料ヘルプライン】1-877-922-4292
【公式サイト】 www.apichaya.org/japanese

LifeWire(旧称:Eastside Domestic Violence Program)
【クライシス・ライン (24時間受付)】 (425) 746-1940 または (800) 827-8840

※現在、「ひろこさん」に直接連絡できるところはありません。

コラムを通して提供している情報は、一般的、および教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 このコラムから得られる情報に基づいて何らかの行動を起こされる場合は、必ず専門家に相談するようにしてください。

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