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第2回「子どもの発達の4段階」

モンテッソーリ教育

モンテッソーリは、科学者として、そして医者として、子どもの観察をくり返しました。

そして、人間の成長に見られる大きな波のようなリズムがあることを発見し、やがて「子どもの発達の4段階(Four Planes of Development)」を提示しました。人間が生まれてから24歳で大人になるとして、この24年間を6年ごとに4つの期間に分けたものです。

0~6歳までの小学校に上がるまでの期間を「幼年期 Infancy」、6~12歳の小学生の時期を「児童期 Childhood」、12~18歳の中学・高校生の時期を「思春期 Adolescence」、18~24歳の大学・大学院生の時期を「青年期 Maturity」と分けています。この発達の4段階は、「我が子は今、どんな成長段階にあるのか」「どんな特徴が見られるものなのか」と知る子育ての大きなヒントになるかと思います。

また、モンテッソーリは、それぞれの段階の変化は6年ごとに変革期と安定期を繰り返し、それはまるで卵から青虫、青虫からサナギ、サナギから蝶へと変化していくように大きく変容すると解説しました。変容期はとても変化が激しい時期なので、親は注意をしなくてはならない時期でもあります。また逆に、安定期は心身共に成長が安定している時期で、親も少し安心して良い時期と言われています。

今回は、一つ一つの時期の特徴を見ていきたいと思います。

幼年期:0~6歳

モンテッソーリ教育の柱となっている時期。モンテッソーリはこの幼年期を「その後の長い人生を生き抜く上で必要な8割の力が備わる人生の最重要期」と表現しました。幼年期は0~3歳の前期と3歳~6歳の後期に分けられ、3歳前後を大きな区切りとして、子どもの成長も大きく変わっていきます。前期の0~3歳は「無意識的記憶」の時期と呼ばれ、モンテッソーリの言うabsorbent mind(無意識的にどんどん取り込む心)で、子どもはとにかく何でもスポンジが水を吸い込むように情報を吸収していきます。この時期には英語や日本語など言語の違いを意識する前であるため、子どもは第2言語、第3言語も、自分が置かれた環境からどんどん吸収していきます。

後期の3~6歳はちょうどプリスクールからキンダーガーテンの時期に相当します。前期の「無意識的記憶」から「意識的記憶」へと移行して、今まで無造作に取り込んでいた情報を、五感を使って整理して取り組むようになっていきます。脳の発達も活発で、膨大な情報を吸収しますが、自分の意思が入ってきます。この時期に大切なことは、五感(触る、見る、聞く、嗅ぐ、味わう)を使った実体験から子ども達の知性の芽生えを応援してあげること。また、順序に敏感な時期でもあり、安定した生活習慣が子どもの心の安心につながる時期でもあります。

児童期:6~12歳

モンテッソーリは、第1期が充実した子どもには、この第2期に tranquil period of learning(平穏な学習期間)が訪れると述べました。知的欲求が高まり、想像力や思考力が豊かになる時期です。「なぜ?」という理由づけをしたがります。

また、友人との関係が大切になってくる時期で、仲間と過ごすようになります。社会性が高まり、仲間と一緒に協力して学ぶことが楽しい時期です。社会のルールを学び、モラルと道徳心が生まれ、正義感が高まり、白黒はっきりする時期とも言えます。

想像力も広がり、抽象的な概念を理解するようになりますが、まだ実体験から学ぶことが多く、文化の習得期でもあるので、実際の体験を通して多種多様な文化に触れることで、子どもの世界が広がります。

思春期:12~18歳

この思春期も前期と後期に分かれます。

特に前期の12~15歳はホルモンが大きく変化し、心身共に大きな変化がある時期です。幼年期と同様に変容期とされ、赤ちゃんのように繊細で、「魔の2歳児」と言われることもある時期のように難しいとされる時期でもあります。また、友人に認められているかどうかが重要で、心の安定を左右します。モンテッソーリは、幼年期のニーズが十分に満たされなかった子どもの多くがこの思春期に何らかの問題行動を起こすことがあるとしており、幼年期と思春期の関連性を指摘しています。

モンテッソーリ教育では、この思春期にたくさんのボランティア活動、コミュニティへの参加、社会貢献の体験をすることが大切と説きました。また、自分たちの手で命を育てて、命の循環の大切さを学べる農業体験を勧めています。

青年期:18~24歳

経済的にも精神的にも自立した大人へと成長する時期。幼年期から児童期、思春期の発達をたどった若者は、地球人としての意識が芽生え、自分の好きな分野で社会に貢献していけるように成長していきます。そして、自立してさらなる知識を高めたりスキルを磨いたりしながら、自分の人生を歩んでいきます。

親になった自分もかつてはこの「子どもの発達の4段階」を歩んできたわけですが、子育てをしていると、「自分はどんな子どもだっただろう」「親はどんな気持ちで子育てをしていたのだろう」などと振り返る機会がたくさんあります。

こんなダイナミックな人間の成長のお手伝いができると考えると、本当に子育ては奥が深いと感じます。

このモンテッソーリの考え出した「子どもの発達の4段階」を、子育ての一つの指標として参考にしていただけたら幸いです。

次回は、子どもの環境について触れてみたいと思います。

掲載:2021年2月

文・写真:斉藤カルコーヴァン智美
慶應義塾大学文学部、シャミナード大学院幼児教育学科卒。ワシントン州ベルビュー市にある日本語と英語のバイリンガル幼稚園、ピカケスクール園長。日本では株式会社オリエンタルランドが経営するチャイルドセンターの立ち上げに携わり、プログラム・マネージャーを務めた。渡米後はモンテッソーリの教員として、ハワイとシアトルで約14年間勤務。2017年夏にベルビュー市でピカケスクールを創立。

Pikake School
www.pikakeschool.com

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