サイトアイコン junglecity.com

高校生の息子が差別を受けました。どんなふうに指導すればよいでしょうか?

pro_family_takada

Studio Mene and Counseling Services
高田 Dill 峰子さん

Mineko Takada-Dill, MA, LMHC, ATR
カウンセリング:
Rockwood Office Park
1409 140th Place NE, Bellevue, WA 98007

アート・セラピー・スタジオ:
7048 27th Avenue NW, Seattle, WA 98117
【電話】 (206) 276-4915
【メール】 info@studiomene.com
【公式サイト】 jp.studiomene.com
詳細プロフィールはこちら

高田さんへのご質問はこちらからお送り下さい。

Q:高校生の息子が、「バスに乗っていたら、何もしていないのに "J*P" と呼ばれた」と言ってきました。私たち夫婦は日本人ですが、息子はアメリカ育ちで、本人は自分は日系アメリカ人だと思っているようです。今まで差別を受けた経験はなかったので、とてもショックです。どんな風に指導すればよいでしょうか?

A:シアトル近辺、特にベルビュー地区などはアジア系が多く、アメリカの他の地域に比べて人種問題が表面化する機会は少ないかもしれませんが、最近台湾系のジェレミー・リンというバスケットボール選手が NBA で大活躍し始めてから、彼の所属するニューヨーク・ニックスが連勝していることに対し、メディアがさまざまな差別的な表現を使ったことが大きな問題になっています。一番ひどかったのは、大手スポーツ局が "Chink In The Armor" という見出しをリン選手の写真の上に掲げたことです。"Chink" は中国系を辱視する、アフリカ系アメリカ人に対する差別用語 "N Word" に当たる言葉で、アジア人全般に使われたりします。"Chink" という言葉がアジア系にとって屈辱的な意味があるといった理解がなく、"Chink In The Armor" という表現自体は「よろいの裂け目」といった意味もあることから、面白おかしく言葉を引っ掛けて笑わそうと思ったのかもしれませんが、大騒ぎになったため、見出しを作った人は解雇になりました。

その後、アジア系アメリカ人ジャーナリスト協会が、どんな報道の仕方が妥当であり何が非適切なのかを発表しています

ここで書かれていることはリン選手のみに限らず、報道陣の無責任な記事の書き方の問題でもなく、毎日アメリカのどこかでアジア人やアジア系アメリカ人が多かれ少なかれ経験することです。さすがに直接的な蔑視の言葉を頻繁に使うことはないにしろ、ご相談にある "J*P" などの直接的な蔑視の言葉を投げつける、アジア人の訛りのある英語を真似る、アジア人は運転ができないとからかう、目の形や体型にコメントするなど、アジア系に対する無理解・無知から来る「なんとなくイヤだなと思うけど、見逃してしまっていること」はかなりあったりします。

あなたの息子さんがこれからアメリカで日系アメリカ人として生きていくとしたら、とても大切なことは、「自分は日本の文化を受けついだアメリカ国民」という意識を持つことだと思います。パシフィック・ノースウエストは第2次世界大戦時に日系アメリカ人が強制収容所に入れられ、戦後アメリカ人としての権利を取り戻した場所でもあります。1960年代までは白人しか住めない地域が指定されていたのをご存知でしょうか?今私たちがあまり差別を感じずに生活できるのは、有色人種のアメリカ人の同等な権利を求める闘いの歴史の結果でもあります。ですから、今後も私たち一人一人が異文化間の理解を深めるとともに、偏見や差別をなくすための努力を続けていく必要があると思います。

息子さんが独り立ちして、アジア人の少ない場所に住むとしたら、他の人種の人たちは、「よそ者は誰か」を探ってきます。「日本人だ」というと、ブルース・リーの真似をされたり、「英語が上手ね」と言われるなど、無理解・無知から来る数知れない誤解や偏見を経験するかもしれません。息子さんがまわりの人たちに自分のことを理解してもらい、たくましく生きていくには、息子さん自身が自分の文化を知り、アジア系アメリカ人の歴史を知ることです。また、自分の文化を知ることが、無知・無理解を受け止め再教育していく力になると思います。

掲載:2012年3月



モバイルバージョンを終了