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相談「日本の両親の老後のことが心配です」

ワシントン州認定ソーシャルワーカー
角谷 紀誉子さん

2019年3月15日付で、コンサルティングのサービスは終了しました。
【公式サイト】 www.successabroadcounseling.com

私の両親・兄・妹は日本にいるのですが、両親もそろそろ60歳代半ばに入り、老後の生活のことを考えるようになってきました。私はこのままアメリカにいると思いますが、両親が自分たちで生活できなくなった場合は介護を頼む、または兄と妹が世話をするという暗黙の了解のようなものがあります。両親も私がわざわざ日本に戻ることはないと心から言いますし、自分たちのために日本に帰るなんてことはせず、兄・妹・私がそれぞれの人生を歩み、自分たちの介護は他人に頼む方が気が楽だと言います。若いころはこれに同意していましたが、やはり実際に両親が年を取るにつれて、自分の中に罪悪感が出てきました。とは言え、私の仕事も夫も子供もこちらが基盤となっていますので、日本に移住するということは考えられない状況です。私がたびたび日本に帰ればいいのかもしれませんが、そのようにたくさんお金があるわけでもなく、でも罪悪感を持ち続けていくことにも疑問があり、どうしたらいいかよくわかりません。

回答:アメリカで暮らしている日本人にとって辛いことの1つが、日本で年老いていく親の世話をどうするかということです。きっとあなたは、「よい娘がするべきことは、日本に帰って親が死ぬまで世話をしてあげること」だと思っているでしょう。祖父母の時代は地元で育って生活し、年老いていく人がほとんどで、父母の時代は転勤族として地元を離れて生活し、年老いていく人が増え、そしてあなたの世代は日本人が世界各地で生活しているというように、日本人の生き方は多様化しています。人の生き方が多様化すれば、親孝行の形も多様化するはずですが、親の老いの問題になるとなぜか古風な価値観が出てきて、古風な親孝行ができないことで罪悪感を抱く人は多いと思います。

あなたにできるオプションは次のことがあります。

  1. 日本に家族で引き上げ、親の世話をする。
  2. あなたが一時帰国して世話をする。
  3. 送金や電話やメールで親や兄妹と連絡しサポートする。
  4. 世話をしてくれる兄や妹をねぎらう。

1の場合は、どうでしょうか?あなたの親のために家族と帰国して親孝行はできたとしても、「自分のために、夫と子供の人生を振り回した」という第2の問題を抱えることになります。

2に関して、どうもあなたの文章からは「自分の親のために帰国したり、日本に滞在するためにお金を使うこと」を躊躇している気がします。それはなぜでしょうか?仕事もしていて、子供も立派に育てているあなたなら、一時帰国やいくらかの送金はできると思いますが、なぜ、たくさんお金がないからできないと考えるのでしょう?もし、夫の趣味や子供の教育にはお金を使えるけれど、自分のこととなると使えないというのなら、それは問題です。「私はアメリカで立派に生活し、働き、家庭も持っている人間だ、だから自分の家族のためにもお金を使える」と、自分に自信を持ってください。

3 と4は、実家孝行にはいろいろな種類があるのだということをあなたに考えていただくためのオプションです。親と同居して介護することだけが孝行ではありません。あなたにできないことをしてくれる人達に優しくしてあげることも大切です。例えば、兄や妹の家族をアメリカに招待してあげる、兄や妹の子供たちにアメリカを見せてあげるなどといったことも、あなたにできることだと思います。

最後に、「自分たちのために日本に帰るなんてことはせず、兄・妹・私がそれぞれの人生を歩み、自分たちの介護は他人に頼む方が気が楽だ」というあなたのご両親の意思は尊重されているでしょうか?あなたが罪悪感からやるべきだと思っていることは、ご両親の意思を無視した行動だとは思いませんか? あなたのご両親は、あなたの生き方を誇りに思われているようです。それなのに、日本に帰ることが彼らが本当に望んでいることだと勝手に解釈するのはおかしいですよね。

確かに、歳をとっていくと気弱になったり淋しくなって、「お前さえここにいてくれたら」と言われるかもしれません。でも、その一言をどうとるかです。アメリカで暮らすあなたも時には「淋しくて辛いから日本に帰りたい」と口に出していうこともあるでしょう。でもそれは実際にアメリカにある家庭や仕事を捨てて日本に帰るという意味ではなく、その時の気持ちが日本に帰りたいほど淋しくて辛いということではないでしょうか。

年老いていくことも辛く淋しいことがあるはずです。あなたの親がどんなに淋しいか、彼らの話を聞いてあげること、理解してあげることは、実際に側にいることよりも大切な場合があります。電話でじっくり話をすることで、「ああ、お前と話せてよかった」といわれるかも知れません。大切なのは、世話される方は世話してくれる人が笑顔で接してくれる方が、疲れて怒りながら世話されるよりずっと幸せであるということです。あなたが笑顔で彼らと接することができる範囲の孝行を、あなたなりに考えて実行してください。

掲載:2004年1月

コラムを通して提供している情報は、一般的、および教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 このコラムから得られる情報に基づいて何らかの行動を起こされる場合は、必ず専門家に相談するようにしてください。



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